「新しい波」「バクモン」「ウチのガヤ」若手芸人だらけの今期が忙しい

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今期のバラエティは若手芸人に光が当たりまくっている。「中堅芸人がMC+若手芸人がひな壇」のフォーマットが4月から各局で軒並みスタートしているのだ。ひな壇の使い方、MCの裁き方にもそれぞれ特色がある。


50名のひな壇を仕切る全方位MCコンビ


『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ)は、総勢50名を超える若手が「ガヤ」としてひな壇に並ぶ。MCはヒロミ&フットボールアワー後藤。ガヤ芸人たちが技術や経験を駆使して、その日のゲストをもてなすのがコンセプトである。

ガヤの中には無名ながら一芸に秀でた芸人がいる。クックパッドに自作レシピを400品登録している藤井21、毎日テレビを12時間見てゲストを観察するこじらせハスキー・橋爪、スノーボードインストラクターで4社と契約している岩ちゃんなどなど。滝沢カレンに国語教師(シティホテル3号室・押田)が敬語の講義を行ったり、三代目 J Soul Brothers 小林直己の殺陣の相手を元JAC(御茶ノ水男子・しいはしジャスタウェイ)が務めたり、自らのスキルでゲストを盛り立てていく。

スキルはあれどテレビ慣れしていない若手たちには、フット後藤がガンガンつっこみを入れて笑いに変えていく。ヒロミもガヤ芸人全体を把握して「○○だったらあいつは?」とひな壇に振る。年代が話題に出ればその年の主な出来事を言えるザ・ツイスターズ伊野瀬へ、そろそろしっとり締めたいとなれば毎回オリジナルソングを作ってくるみさわ大福へ、という具合だ。

『アメトーーク』のひな壇が「○○芸人」として同じ趣向でくくられているのに対して、『ウチのガヤがすみません!』のひな壇は個性の塊で出来ている。状況に合わせ全方位でガヤ芸人のカードを切っていく手さばきは、さすが関東&関西の雄だ。

太田先生の自由さに翻弄される若手


『ウチのガヤがすみません!』のMC陣が面倒見のいい教師だとすれば、『バクモン学園』(テレビ朝日)を仕切る爆笑問題・太田光の教育方針は「放任」になるだろう。

『バクモン学園』のセットは番組タイトル通り教室がモチーフ。若手芸人18組(5月15日放送では12組)がテーマに沿って1分以内の動画を作成し、太田光が審査。上位の7〜8組のみがO.A.される「動画版ネタバトル」だ。

教師役であり、進行役の太田光はとにかく自由。気に入った若手に執拗に話を振ったり、ネタを振っておいて引っ込めたりと泳ぎ回る。かといって『検索ちゃん』のように誰か止めるわけでもない。相方の田中裕二も学級委員長役で座っているが、フォローやつっこみは最小限。むしろ太田の無茶ぶり(「嫁となに話してるのかやってみてよ」など)の相手になっており、逐一その無茶ぶりに応えてしまう(買い物から帰ってきた山口もえとの会話を再現するなど)。

横槍が入ることなく、太田がニコニコと教室を歩き回る姿からは、若手とのやりとりを楽しんでいることが伝わってくる。動画がメインの番組だが、若手との絡みをもっと見たい。

24年の時を経て岡村先輩がやってきた


教師というより「先輩」の立ち位置なのが、『新しい波24』(フジテレビ)の岡村隆史だ。

『新しい波』(1992年)はナインティナイン、極楽とんぼ、よゐこといった若手をスターに押し上げた番組。以降「お笑い8年周期説」を唱え、『新しい波8』(2000年)、『新しい波16』(2008年)と8年ごとに放送されている。『新しい波24』は2016年の年末に特番が放送され、この4月からレギュラーとなった。メンバーに選ばれた29組はほとんどが「ゆとり世代」という若さだ。ここに「24年先輩」の岡村隆史が毎週ゲスト扱いで共演している。

『新しい波24』では最初に4〜5組のメンバーがネタを見せ、後半はひな壇でのトークになる。番組はフジテレビ7階の「フジサンのヨコ」での公開収録なので、ネタ見せの雰囲気は劇場に近い。『ENGEIグランドスラム』や『ぐるナイ』「おもしろ荘」で見られるように、他の芸人のネタを見る岡村隆史の目は優しい。ひな壇のトークでも「あれ面白かったわぁ」とネタの面白かったところを伝えている。

岡村隆史の他に、同世代の中堅芸人がもう1人ゲストで来るのもポイント。TKO木本はバッドナイス内田(常田じゃないほう)に自らの「じゃないほう芸人」の経験談を伝え、ますだおかだ岡田はバビロンにリカバリーギャグの心得(折れない心!)を伝授した。

初回の『新しい波』から24年経ち、お笑いを取り巻く状況も変わった。売れるためには、ネタでウケるノウハウだけでなく、テレビでウケるノウハウも必要になった。これまで若手中心に作られてきた『新しい波』に比べ、先輩が背中を押してくれる『新しい波24』は「テレビで売れる」ことをより意識している気がする。

BS、ネット配信、ラジオまで


ひな壇ではないが、他にも若手芸人にスポットを当てた番組はまだまだある。『にちようチャップリン』(テレビ東京)内の若手芸人発掘コーナー「これからチャップリン」では3週勝ち抜きのネタバトルがあるし、『冗談手帖』(BSフジ)では毎週1組の若手芸人が放送作家・鈴木おさむと売れるネタをブレストする。地上波以外に目を向ければ『有吉ベース』(フジテレビオンデマンド(FOD))で有吉弘行が太田プロの後輩たちと、『矢作と山崎』(同じくFOD)がおぎやはぎ矢作とアンタッチャブル山崎が人力舎の後輩たちと戯れている。ラジオに耳を傾ければマイナビ ラフターナイト(TBSラジオ)でオンエア争奪ライブが聞ける。

もはや若手発掘のゴールドラッシュ状態である。これだけ若手芸人が露出する機会が増えてきたのは、お笑いの世代がまた一つ繰り上がる前兆なのかもしれない。時代の境目を目撃してるかと思うとワクワクしてしまうのだった。

(井上マサキ)