北朝鮮の金正恩党委員長が、予定されていた地方の現地指導をキャンセルしていたことが明らかになった。どうやら警備がらみの理由からのようだ。

特殊なトイレを使用するなど、常に身の回りのことに気を使ってきた正恩氏だが、情勢の緊迫により、いっそう神経質になっているのかもしれない。

(参考記事:金正恩氏が一般人と同じトイレを使えない訳

粛正の口実に

米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、金正恩氏は18日午後2時から、両江道(リャンガンド)恵山(ヘサン)市の城後洞(ソンフドン)の愛育院(孤児院)の竣工式に参加する予定となっていた。建物は4月に完成していたが、正恩氏の現地指導のタイミングに合わせて式典が延期になっていった。

しかし、直前になって金正恩氏が来ないことが明らかになった。金正恩氏が同日に参加することになっていた白頭山観光鉄道の開通式も、来月4日の普天堡(ポチョンボ)戦闘勝利80周年記念の日に延期となった。

別の情報筋によると、中央は現地指導が決まったかのように、地方政府や住民に金正恩氏を迎える準備を急ぐように催促した。三池淵(サムジヨン)の住民は、公園の造成事業などに大々的に動員された。

また、朝鮮労働党中央の組織指導部や護衛総局の幹部が下見に訪れるなど、準備が着々と進んでいた。中央からの正式な通告は依然としてないものの、地方政府の幹部たちは、現地指導は事実上キャンセルされたものと受け止めている。

幹部たちは、金正恩氏が来ないことを知り、胸をなでおろしている。現地指導中に何か問題が起きれば、粛清される口実を提供しかねないからだ。

一方で、一般住民は現地指導に合わせて何か特別配給にありつけるかもしれないと期待していたが、ぬか喜びとなった。

現地指導がキャンセルされた理由は明らかになっていないが、地方政府の幹部たちは、金正恩氏が、中国から丸見えになる恵山市を訪れるのは安全上の問題があると判断したためだろうと見ている。

愛育院のある恵山市の城後洞は、国境を流れる鴨緑江のすぐそばにあり、白頭山観光鉄道も鴨緑江沿いを走っている。