ストレスによる食欲不振はなぜ? 食事のポイントと改善法

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心配事があると、ご飯が喉を通らない……。こんな経験のある人は、きっと少なくないはずです。でも、ストレスを感じると、なぜ人は食欲がなくなってしまうのでしょうか? 今回は、心理カウンセラーの小日向るり子さんに「ストレスと食欲不振の関係性」や「食欲不振の改善法」について、教えてもらいました。

■ストレスを感じると食欲不振になるのはなぜ?

そもそも、ストレスを感じると途端に食欲がなくなるのはなぜなのでしょうか? まずは、その根本的な原因について探っていきましょう。

◇ストレスと食欲不振の関係性

ストレスと食欲不振の関係性とは? さっそく小日向さんに解説をしてもらいました。

人が満腹だと感じる理由は、食事を取ることで血液中の血糖値が上昇し、この上昇によって満腹中枢に「おなかがいっぱいです」という信号が送られる、というメカニズムが身体にあるからです。しかし、血糖値は大きなストレスを感じることによっても上昇する場合があります。つまり、脳がストレス反応による血糖値の上昇を満腹だと錯覚することによって、食欲が落ちてしまうのです。

そのほか、ストレスによるホルモンバランスの乱れが満腹中枢の誤作動を引き起こすことも食欲不振の原因です。

◇ストレスによって起こる体調不良

ストレスによって引き起こるのは、「食欲不振」だけではないですよね。その他、ストレスが原因として考えられる体調不良にはどんなものが挙げられるのでしょうか?

ストレスの影響が身体に現れる箇所ですが、生まれつき弱い部分が「不快症状」となって出てきます。ですので、ストレスを感じても、個人によって出る症状がさまざまなのです。

たとえば、神経質な気質の方でしたら、少しのストレスでもセロトニン不足になり、不眠症状が出ます。また、ストレスのせいで血液が脳に集中的に送られ、胃腸に送られる血液量が少なるため、もともと胃腸が弱い方は胃腸の不快症状(胃痛、下痢、嘔吐など)が現れます。一方、皮膚が弱い方はストレスで身体の抵抗力が弱まり、帯状疱疹や蕁麻疹という症状を引き起こすことも。代表的な身体のストレス反応としては、睡眠障害、胃腸障害、頭痛が挙げられますが、このようにストレスを感じても、すべての人に同じ症状が現れるわけではないのです。

■ストレスの種類とは?

食欲不振のほか、さまざまな体調不良を引き起こす「ストレス」。これは具体的にどんな種類に分けられるのでしょうか? ここでは、ストレスの種類とその解説を見ていきましょう。

ストレスの種類は以下の3つとなります。

☆(1)身体的ストレス

身体的ストレスとは、頭痛、胃腸不良(胃痛、便秘、下痢、吐き気)、帯状疱疹、神経痛、といった身体の不快症状を指します。ストレスが身体の不快症状となって現れると、ほとんどの方が「何かの病気ではないか」と思って病院に行くのですが、検査をしても身体の機能的には問題がなく、その場合に「原因はストレスです」となるわけです。

身体のストレス反応の中でも特に胃腸の不快症状は食欲不振につながります。胃が痛いと食べ物も受けつけられないですし、食べると下痢になる、といったサイクルが続くと食べること自体が恐怖になり、生理的ストレス(後述)にもつながっていくのです。

☆(2)精神的ストレス

精神的ストレスとは、主に睡眠障害(不眠、眠りが浅い、早朝覚醒)と抑うつ症状(うつうつとして晴れない気分、気持ちの大きな落ち込み)を指します。眠れないことが頭痛を併発するなどの身体症状につながることもありますし、睡眠不足の脳は建設的な思考ができないため、仕事のパフォーマンスが下がることから落ち込み、うつ症状につながることもあります。

☆(3)生理的ストレス

生理的ストレスとは、人間の三大欲求である、食欲、睡眠欲、性欲が満たされないために感じるストレスのこと。ストレスから不眠が続くと「ぐっすり寝てすっきり起きたい」と思う欲求が叶わないですよね。これは、睡眠欲という三大欲求のひとつを満たすことができない状態です。

ストレスを感じることから不眠になり、不眠が生理的欲求を満たすことができずにさらなるストレスとなる……。このようにストレスは連鎖して増大していってしまうのです。

■ストレスによる食欲不振の改善法

では、これらのストレスにより食欲不振に陥ってしまった場合、どのような対処をしていけばいいのでしょうか? 小日向さんに改善方法を教えてもらいました。

◇食欲不振に陥ったらどうすればいい?

食欲不振を感じた場合、まず取るべき行動とは? 医療機関の受診が必要となるケースについて聞いてみました。

カウンセラーとしての個人的見解としては、2週間以上連続して体重の減りがとまらない場合は、医療機関の受診をおすすめします。ただ、日数が経たなくても飲み物さえ受けつけなくなってしまった場合、少量でも吐いてしまう場合、下痢が続く場合は脱水症状になる恐れがありますので、こちらもすぐに医療機関を受診してください。ストレスは病気ではないのだから、と思うのは危険です。

◇食欲不振時の食事のポイント

では、食欲が減退してしまったとき、どんな食事を心がけるとよいのでしょうか。また、そもそも食欲がないのに無理に食べてもいいの? こちらも小日向さんの見解を見ていきましょう。

ストレスからの食欲不振は、精神的に追い込んでも逆効果です。ストレスが食欲不振につながる人というのは、元々胃腸があまり強くないのです。そのような人が「何か食べなきゃ」と強迫的思考に陥って無理やり食べても結局それほど食べられず、その状況にますますストレスを感じてしまうだけ。

栄養価の高いものや消化のいいものを食べるよう意識して、あとは食べられるときに好きなものを食べましょう。特にバナナは栄養価が高く、睡眠の質を高めるトリプトファンが含まれていますので、オススメです。咀嚼が無理な場合はバナナジュースにしてチョコレートを入れたりすると飲みやすくなりますよ。

また、香辛料のたくさん入った料理(カレー、生姜焼きなど)やクエン酸が入った料理(酢の物、レモン)も食欲増進効果があるので量が食べられるという意味ではいいでしょう。

◇簡単にできる2つのストレス解消法

そもそも食欲不振に陥らないためには、ストレスをためないことが必須条件ですよね。では、心理カウンセラーが勧める「ストレス解消法」とは? 2つの方法を紹介してもらいました。

☆(1)外に出て身体を動かす

ストレス解消のために運動してください、と言うと「通勤で毎日歩いているから必要ない」と言う方がいます。しかし、毎日通勤で外に出るのと、オフの日に外へ出て身体を動かすということでは、脳の心構えがまったくちがいます。

通勤のための動きはすべて働くため。したがって、脳は緊張状態です。これではリフレッシュになりません。あくまでも、オフの日に太陽の光を浴びて、癒し物質のセロトニンを脳から出すことが大切です。また、雨の日の外出も意外とリフレッシュできます。オフの日こそ外に出ましょう!

☆(2)日常とまったく異なる空間に身を置く

たとえば、

・ずっとパソコンに向かう仕事の方⇒景色のいい場所で遠くを眺める
・普段が体力仕事の方⇒温泉など身体が休まる場所に行く
・仕事中、ひとりで作業をしている方⇒友人や知り合いなどと会う
・騒がしい場所で仕事をしている方⇒家でDVD鑑賞

など、日常と180度異なる空間に身を置くこと。これにより右脳と左脳のバランスを取ることができ、ストレス解消になります。

■まとめ

ストレスと体調不良は密接な関係にあることがわかりました。なかでも食べることは生きる源。食欲不振は本当に辛い症状ですよね。自己判断で無理をせず、ときには医療機関の力を借りて、ストレスによる食欲不振を適切に対処していきましょう。

(監修:小日向るり子、文:マイナビウーマン編集部)