クラシック第1弾となる皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)では牝馬のファンディーナが1番人気に推されるなど、「主役不在」と言われてきた3歳牡馬戦線。いまだその座は定まっていないが、週末にはいよいよ頂上決戦となるGI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)を迎える。

 大一番を前にして人気急上昇中なのは、アドミラブル。トライアルのGII青葉賞(4月29日/東京・芝2400m)を好時計で完勝し、一気に「主役」候補に躍り出た。

 だが、そもそもこの世代の「主役」候補だったのは、レイデオロ。2歳戦が終わった時点では、最もダービーに近い存在として名前を挙げられていた。


皐月賞は5着に終わったレイデオロだが... レイデオロは2歳時に3戦3勝と抜群の実績を残してきた。しかも、明らかにクラシックを意識した舞台設定において、いずれのレースでも格の違いを見せつけてきた。

 ダービーを見据えてのデビュー戦は、東京・芝2000m(2016年10月9日)。後続に大差をつけるような派手さはなかったものの、2着以下の馬がどこまでがんばっても逆転するのは難しいと思えるほど、磐石のレースぶりで快勝した。

 2勝目を挙げたのは、皐月賞と同じ舞台の葉牡丹賞(2016年12月3日/中山・芝2000m)。直線、大外から豪快な末脚を見せて強襲し、2分1秒0の好時計をマークして勝利した。2着馬のコマノインパルスは、のちにGIII京成杯(1月15日/中山・芝2000m)を制したように、決して相手に恵まれたわけではなかった。

 そして、3連勝を飾ったのはGIIホープフルS(2016年12月25日/中山・芝2000m)だった。もともとオープン特別だったが、2014年に重賞レースとなったクラシックへの登竜門。過去にも、ウイニングチケットやエアシャカールといったクラシック馬を生み出してきた由緒ある一戦だ。

 ここでも、後方待機から余裕たっぷりの差し切り勝ち。ホープフルSは今年からGIに昇格することになったが、GI昇格のためにはそのレースレベルと、勝ち馬のパフォーマンスがGIに相応しいか、国際的な基準での評価が求められる。つまり、GI昇格がかなったのは、客観的かつ論理的な国際基準の考察において、レイデオロの走りがGI馬に相応しいと評価されたからとも言える。

 圧巻の3連勝を遂げて、順調に3歳春を迎えていれば、レイデオロは「主役」の座を射止めていたかもしれない。だが、ホープフルS後、前哨戦をこなすことなく、クラシック本番を迎えることになった。そこが嫌われて、その評価はガクンと落ちた。人気のうえでも、本番前にひと叩きして結果を残した面々に譲ることになった。

 そして実際、およそ3カ月半の休み明けで挑んだ皐月賞は5着にとどまった。ソエによる調整遅れもあったが、ホープフルSからぶっつけでのGI獲りはやはり容易なことではなかった。

 レース勘という点においても、物足りなさがあった。スタートでやや後手を踏んで、流れにも乗り切れなかった。最後の直線で猛然と追い込んで5着に入ったものの、この馬本来の力は出し切れていなかった。

 とはいえ、ダービーを大目標と考えるのではあれば、決して悲観する内容ではなかった。ひと叩き、という意味では理想的な復帰戦だったとも言える。早くからレイデオロに注目してきた日刊スポーツの木南友輔記者は、そうした点を肯定的に評価する。

「この馬に関しては、2歳時から藤沢(和雄)調教師が言葉少なめというか、評価が辛口だったんですよね。逆にそれが、期待の表れ、と感じていました。皐月賞へ向かうにあたって、ソエがその調整過程で確かに影響したかもしれませんが、そもそも年明けの早い段階から藤沢師は『ダービーが本命』と言っていて、皐月賞への直行プランは既定路線。『春に中山の2000mを(前哨戦と本番と)2回も走らせることもない』とも語って、藤沢師は泰然自若(たいぜんじじゃく)に構えていました。

 ですから、皐月賞に向けては明らかに余裕残し。絶好調の出来にあるとは思えませんでした。それでも(レイデオロの)力は認めざるを得ないので、本命にしようか迷ったほど。結局、結果は後方から差を詰めてきての5着。この5着、(ダービーに向けては)ものすごく価値があると思います」

 レイデオロの素質の高さについては、デビュー当初から一貫して名手クリストフ・ルメール騎手が手綱を取っていることからもわかる。そして、その名手自身、レイデオロについて高く評価している。決してリップサービスではない。

 先日、アドマイヤリードに騎乗してヴィクトリアマイルを制したあと、ルメール騎手に翌週のオークスに挑むソウルスターリングの、追い切り騎乗予定について訪ねた。すると彼は、こう言って満面の笑みを見せた。

「レイデオロにも乗るよ! すっごい楽しみ!」

 こちらの質問を先読みしてのことだろうが、オークスで本命のソウルスターリングより先にレイデオロの名前を発した。同馬への期待の大きさがわかるとともに、「楽しみ」という言葉が本心であることが十分に伝わってきた。

 ダービー1週前、5月17日水曜日の朝。ルメール騎手を背にして、レイデオロは3頭併せでの追い切りを行なった。ウッドチップコースで、僚馬2頭を追いかける形で追走。直線で最内に入って、前の2頭と併入した。鞍上のルメール騎手の手はほとんど動いておらず、レイデオロは自ら前の2頭を捕らえにいくような動きを見せた。

 1週前にして、絶好の追い切りを披露したレイデオロ。同馬の状態のよさについて、前出の木南氏が語る。

「皐月賞はレコード決着だったこともあって、かなりの馬に反動が出ているようです。ファンディーナやコマノインパルスは戦線離脱しましたし、その後、NHKマイルC(5月7日/東京・芝1600m)に出走したプラチナヴォイスやアウトライアーズは、そこでまったく力を発揮できませんでした。しかし、レイデオロにはそんな心配はなさそうです。この日の動きを見れば、それは明らかでしょう。

 皐月賞も目いっぱいの仕上げではありませんでしたし、レースでは実質直線だけの競馬でしたから消耗もありません。人気のアドミラブルは間隔が詰まっていますし、余力という点ではこの馬が一番だと思います。鞍上のルメール騎手も、オークスを勝ったソウルスターリングには距離に対しての慎重さをうかがわせていましたが、レイデオロに関しては『(距離は)問題ない』と太鼓判を押しているほど。同馬への期待はますます膨らみます」

 また、陣営のコメントからも、ダービーに向けての強調材料がふんだんにあるという。木南氏が続ける。

「担当の津曲大祐助手が、『この馬は走るのが大好きなんですよ。だから、ダービーのような大舞台でも問題ないと思いますよ。(皐月賞の)ゴール後の映像を見てください。ゴールしたあともめちゃくちゃ加速していくんですよ』と言っているように、レイデオロは2000mのゴール板を通過してからもどんどん伸びているんです。これは、距離が伸びるダービーで大きな武器になると思いますよ。

 藤沢師も、『(皐月賞は)みんなが終わってから伸びたので、その評価は別もの」としながらも、『”無敗”という肩書きがなくなって、むしろ(気持ちが)楽になった』と話しています。『この馬は、種牡馬にさせたい』と言っていますし、ソウルスターリングの勢いに乗って(藤沢厩舎の)2週連続GI制覇は十分にあり得ますよ」

 父がキングカメハメハで、祖母レディブロンド(父シーキングザゴールド)はディープインパクトの半姉という血統背景。レイデオロが種牡馬となれば、ディープインパクト産駒の牝馬ともサンデーサイレンスのクロスを持たず、名繁殖牝馬ウインドインハーヘアのクロスが配合できる。そんな夢のある子を世に送り出すためにも、日本ダービーは是が非でも欲しいタイトルだ。

 もちろん、それは藤沢調教師にとっても同様だ。過去にゼンノロブロイ、シンボリクリスエスと2着は2回あるものの、いまだダービーの勲章は手にしていない。 はたして今年、ついにその悲願を達成できるのか。同時に、同年のオークス&ダービー制覇という大記録もかかっている、週末の”競馬の祭典”に注目である。

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