今夜「CRISIS」公安は警察はどうする、平成維新軍ってなんだ。小栗旬、西島秀俊が攻めてて凄い

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「CRISIS公安機動捜査隊特捜班」(フジテレビ 火曜よる9時〜)
原案・脚本:金城一紀 演出:鈴木浩介 白木啓一郎 制作:カンテレ
出演:小栗旬 西島秀俊 田中哲司 野間口徹 新木優子ほか


感情の転移がやばい 


「CRISIS公安機動捜査隊特捜班」が、いろいろな意味で、やばい。

まずは、視聴率が10%切るか切らないか、ギリギリのところに来ていて、やばい。
6話までの平均視聴率は11.0%、1回だけ8%台に落ちたが、あとは10%以上をなんとかキープして いる。7話で踏ん張れるか、正念場であろう。

悪いドラマではない。いや、かなりがんばっている。

はじまる前に、フジテレビのサイトで、主演の小栗旬が「今のゴールデンタイムではなかなか題材として描きづらい作品に手を挙げてくださった関西テレビに感謝しています」と、西島秀俊が「映像化するのは不可能なんじゃないかって思っていた」と、チーフプロデューサー笠置高弘(カンテレ)が「日本では見たことのない、とんでもないアクションエンターテインメントをお楽しみに!」と異色感を強調していたが、確かに、攻めているドラマだ。

1話の冒頭、新幹線の中でのアクション、それからの陸橋から小栗が川に飛び込むまでのスピード感とダイナミズムには並々ならぬ意欲を感じた。5話での、DIYショップでの、テロリストたちとの戦いも、面白いロケーションで見応えがあった。アクションがすごいだけでなく、そのシーンのロケーションのセンスがいいのだ。

小栗や西島ほか、各方面のエキスパートの所属する公安機動捜査隊特捜班は、テロリスト、新興宗教、軍事スパイ……といった国家を揺るがす“規格外”の事件に立ち向かうチームで、彼らの担当する事件は、かなりやばい。4、5、6・・・と見続けていくと、どんどんやばくなってきた。

5話では、潜入捜査が描かれ、小栗演じる稲見は、別人に扮してヤクザに接近する。かつて潜入捜査を何度か体験している、西島扮する田丸の経験談を聞くと、別人格になって潜入している間に、そっちの人格と本当に人格の境界があいまいになってきてしまう危険性があるという(感情の転移)。優秀な人ほど、なりきってしまうとか。なんかやばそうだ。

6話では、実際に、テロ組織に潜入捜査をしていた公安の刑事(山口馬木也)が、テロリストになってしまった悲劇を描いた。元公安刑事の行動には理由があったが、それまでの経歴をすべて抹消して任務に従事したため、何を言っても誰にも真実はわからない。警察の任務とはそこまで自分を滅しないといけない非情なものなのか、というなんともやりきれない終わり方だった。

謎の組織 平成維新軍とは 神の光教団とは  


勧善懲悪のスッキリ解決感が受けている世の風潮に背を向けるように、「CRISIS」は毎度、毎度、後味が悪い。3話では、「平成維新軍」という国家に反逆を企てる組織に属する少年ふたりが、犯行に失敗して、お互いを撃ち合って死んでしまうとか、犯人がほんとうに悪いのかどうかよくわからなくなってしまうのだ。

正義の頂点のように絶対的に君臨している警察の中にも悪がいて・・・という物語は昔からあったとはいえ、「CRISIS」が踏み込んでいるのは、悪と正義が切り分けられているのではなく、何か巨大な力によって、人間が徐々に変質してしまうというやばさだ。

田丸は、神の光教団に同僚(眞島秀和)を2年もの間、潜入捜査させていて、その妻(石田ゆり子)に生活費を渡しているうちに、お互い心惹かれ合ってしまうという、なにかちょっと由々しき状況にある。田丸は、修行僧のようにストイックなのでなんとか回避しているのだが、結局、これも、任務に忠実なあまり、おかしくなってしまった例である。

潜入捜査で人を騙して情報を入手した稲見は「薄汚い仕組みに加担したんです」と疑問を呈するが、警視庁警備局長・鍛治(長塚京三)は「善も悪もすべて取り込んでしなやかに動け」とにべもない。そもそも、公安機動捜査隊特捜班自体が、鍛治によって、何かの実験のように利用されているのだ。

7話では、またまた平成維新軍が登場し、犯行声明を出す。最終的に、平成維新軍と神の光教団とのどちらか、もしくは両方が、公安機動捜査隊特捜班の最大のターゲットになっていくだろう。眞島秀和はどんなふうに出てくるのか、気になる! やっぱり、人格が変わってしまっているのだろうか。

また、稲見は、この班に入る前、自衛隊にいて、ここでトラウマのような体験をしている(1話の最後に印象的に回想シーンが出て来る)。ここですでに、自分の意思を超えて、人を殺めているようなのだが、それが今後どういうふうに影響してくるのか。それも気になる!

現実世界ではテロ等準備罪法案がやばい


ドラマも後半戦だが、まとめるのが大変そうなほど、要素が複雑に絡まっている。が、そこはヒットドラマ「SP警視庁警備部警護課第四課」や「BORDER警視庁捜査一課殺人犯捜査第4係」などを手掛けた直木賞作家・金城一紀が、原案・脚本を担当しているので、しっかりまとめてくれるだろう。

それにしても、金城一紀。2007年に放送した「SP 〜」も、要人をテロによる攻撃から護る仕事で、今回も、テロ対策のお仕事。2001年、アメリカ同時多発テロ以降、日本人もテロという言葉に敏感になり、「SP」がはじまる2年前、2005年にロンドン同時爆破テロがあった。今回は、テロ等準備罪法案で、日本が揺れている。

ドラマはどうなる? 現実の日本は?

偽りの世界に行きそうになったとき、どうしたらいいか。
ほんとうの人生に帰りたいと思う大切な何か・・・それをドラマでは「光」と呼ぶ。
稲見や田丸は、光に救われるのか。

「CRISIS公安機動捜査隊特捜班」の視聴率は10%台をキープできるのか。
視聴率の鍵(光)を握るのは、高視聴率ドラマ「緊急取締室」(テレビ朝日 木よる9時〜)にも出ている田中哲司ではないのか。

とまあ、いろいろ気になる、やばいドラマであることは間違いない。
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