いま、目黒がアツい。交通の便の良さに加え、若者がいない落ち着いた雰囲気や、リーズナブルな実力派レストランが人気の理由。今回はそんな目黒の美食を二日連続でご紹介。第一弾は目黒の美食レストラン。主に洋の名店を紹介したが、今回は和食中心。全国に名を轟かす名店も多く、食偏差値の高さは特筆すべき!


『鮨 りんだ』の「おまかせ」

鮨屋の粋はそのままに、“トロ重ね”や“ハイブリッド鮨”といった店主・河野勇太氏の感性が光る一軒。至福の握りを体験あれ。



手前右から時計回りに、金目鯛の炙り、車海老、鮑、5枚重ねの大トロ、塩で〆た鯵、雲丹とイカ、芝海老や大和芋のすり身が入った玉子。いずれも2種類の赤酢をブレンドした酢飯とのバランスが秀逸。おまかせ¥15,000〜
目黒に馴染みの鮨屋がある。それが大人の余裕

昼11時、『鮨 りんだ』の店先に、渋い緑色の蒸しかまどが出される。煌々と燃える松炭と2升の米を入れ、待つことおよそ10分。立ち上る湯気の香りが変化したら穴をふさぐ。一気に炊き上げることで、米の粘りが出ずに粒が際立つという。これは、店主の河野勇太氏が、浅草『鮨 一新』の酢飯に惚れ込み採用した。

手を掛けて旨くなるなら妥協はしない。そのこだわりは鮨種においても同様で、口の中で酢飯と同時に溶けることを追求した独自のアプローチが面白い。霜降りの大トロは、薄く5枚に切り重ねてのせる。中トロなら3枚など部位によって変化する爛肇軆鼎〞。鯵や鮑の包丁の入れ方も口溶けを追求しての結果だ。



群馬県産のコシヒカリを、蒸しかまどで炊き上げ、木桶に広げたら、2種の赤酢などで味をととのえる

雲丹をのせたイカや、蟹味噌を忍ばせた車海老といった爛魯ぅ屮螢奪葡〞もちょっとした遊び心かと思うが、口に運べば考え尽くされた組み合わせに、思わず頷いてしまう。

ニューヨークの鮨屋で握っていた経験がそうさせるのか、既存の枠に囚われない独自の感性が、食べ手の感動を生み出していく。おまかせは、つまみと握りを織り交ぜながら供するスタイル。

店主の地元、愛媛から届く銘酒が進む。〆には、みかん農家を営む実家で弟の河野徹氏が生産するジュースが登場するのにも愛を感じる。駅から10分以上かけても足を運ぶ価値のある食体験が待つ一軒。鮨屋らしからぬ和やかさも心地いい。



「バーのような鮨屋でありたい」という河野氏の思いから、カウンターにはあえて白木を使っていない



『川せみ』の「自家製手打ち蕎麦」

和食のなかでも専門的技術を問われる蕎麦。ゆえに、職人技を堪能できる品といえる。10年以上続く名店のこだわりとは?



江戸前の二八をシンプルに味わう「せいろそば」¥799。海老、イカ、茄子、かぼちゃ、舞茸などの天ぷらが付いた「天せいろ」¥1,575 。冷たい蕎麦、温かい蕎麦ともに豊富なメニューが並ぶので、毎日通っても飽きない
目黒随一の蕎麦処銘酒と“二八”を愉しむ

蕎麦屋で一献、という大人の粋。焼き味噌や板わさ、出汁巻き玉子などを肴に、日本酒をたしなむ。その〆に、職人が精魂込めて打った蕎麦が待っている。目黒川を越え、柳通り近くの住宅街に店を構える『川せみ』は、まさにそんな一軒。駅から少々遠いが、わざわざ訪れる価値があり、10年以上にわたり、愛されている。

天ぷらや刺身をはじめとする一品料理が充実しているのもこちらの特徴。蕎麦は、北海道、福井県、茨城県を中心に取り寄せる国産石臼挽粉を使い、練り、延ばし、切りの工程を店内で施す。惚れ惚れする美しさの二八蕎麦は、通常より気持ち太めで食べ応えがある。フワッと広がる蕎麦特有の風味と、程良い歯応え、喉越しの良さは、丁寧な手仕事の成せる業だ。



朝夕、丁寧に仕込む二八蕎麦。使い込まれた蕎麦切り包丁を軽やかに使い、トントントンと心地良い音でテンポよく切っていく

出汁は、本節、亀節、厚削りの3種の鰹を店で削って使用。冷たい蕎麦のつけつゆには、干し椎茸を加え、風味高くととのえている。日本酒は、「七田」「鶴齢」「まんさくの花」など全国の銘酒を約20種類。いずれも控えめな香りで、料理や蕎麦との相性を考慮して選んでいる。

日本酒数杯と、一品料理、〆の蕎麦でひとり4,000円前後が相場とのこと。カウンター席も充実するので、ふらりと立ち寄り、ひとりの時間を楽しむのもいいだろう。行きつけにしたい大人の蕎麦屋といえる。



ゆったりと席が配置された店内。ランチタイムも連日にぎわう人気ぶりだ


全国に名を轟かす、焼鳥の名店も登場!


『鳥しき』の「定番の串」

座右の銘は「一意専心」。当代きっての名店の主として、焼鳥職人の志を常に胸に宿す、その気概を噛み締める。



左より、さび焼き、ちょうちん、野菜(ししとう)、つくね。希少な部位も得意とする『鳥しき』だが、定番の串にこそ「奇を衒わない」実直さが宿るようにも思える。おまかせコースは10〜15本で¥4,000〜(部位により1本¥200〜400と値段が変わる)
目黒どころか、東京NO.1とも!美味なる焼鳥の最高峰

良い焼鳥店の串は、焼く前、つまり生の状態で美味しそうと思える。『鳥しき』も、然り。店を入ってカウンターの左側にあるケースに並ぶ串は、いずれの部位もピカピカで、透明感とハリがある。と、美肌を褒める際に頻出する形容詞を並べてしまったが、要するに、美味なるものは美しい、ということだろう。

そんな美しい串を、ビシッと決まった出で立ちと所作で焼くのは、店主の池川義輝氏。目黒に店を構え、今年めでたく10周年を迎えた。

「本当は違うエリアで開く予定だった」のが、ひょんな経緯で縁もゆかりもなかった目黒駅のすぐそば……といっても人通りの少ない路地の奥で独立することに。それが今では人気と実力を兼ね備え、目黒一どころか東京でもトップと謳われるまでになった。



親子丼¥1,000。「串のコースの後の〆なので、さらりと召し上がれるよう“温かい卵かけごはん”をイメージして作っています」と池川氏。その言葉通りの食感に唸る

仕事は至って、地道だ。生産者から直送される新鮮な伊達鶏を使い、火の入り方を計算して厚みを調整しながら、串を打つ。もし幸運にも『鳥しき』に行けたときは、ぜひ焼鳥を横から見てみてほしい。

串の上端と下端の肉が小さく、中央に厚みがあるはず。それは、焼き台の奥・中央・手前の火加減を加味してのことなのだ。

さて、今回撮影した4本を焼く場合。最初に焼き始めるのは、つくね。いったん焼き台との間に金網をはさむことで高温にし、表面を焼き固めることから始まる。つくねをひっくり返したら、白身に覆われる前の黄身と卵管である「ちょうちん」をタレにくぐらせて焼き台へ。針金を曲げて自作した専用の器具があり、これをサポーターにして柔らかな卵黄を守る工夫も細やかだ。



焼き始めには背中に差してあるうちわで、頃合いを見計らってパタパタと炭を扇ぎ、熱を操る池川氏

その間に、つくねは既に焼き台に直接のせられており、このあたりでうちわが登場。扇いで熱を対流させ、合間にはささみに塩、ししとうに油を施し、焼き台にオン。つくねは2度、3度とタレにくぐらせてこんがりと焼き……と、それぞれの串に異なる仕事をする上、営業中はさらに多い数を客の状況を見つつ焼くのだから、マルチタスク極まりない!

肉に串を打って炭で焼く、と書けば極めてアナログかつ単純だが、その隅々に魂を込める職人池川氏の矜持が、『鳥しき』を名店たらしめている。



全17席のカウンターは、今や焼鳥界きってのプラチナシートだ


目黒で11年!根強い人気店は2週間でメニューが総入れ替え!?


― 目黒の美食 ―
『和創作 太』の「おまかせコース」

メグロード地下にある『和創作 太』は、今年で11年目を迎える。2店ある系列店も目黒駅周辺と、この一帯のグルメ指数を底上げした存在だ。



取材時のコース内容がこちら。自家製のからすみを振りかけた、鰆と空まめの天ぷら
和食なら“太”!目黒のグルメ指数を底上げした名店

人気の理由は、9品で5,500円という価格設定と、何より店主・柴 太一氏の人柄が醸し出す雰囲気ゆえ。「うちは酒飲みのための居酒屋」と、料理内容は2週間ごとに変わるが、旬のものを使い、酒が進む味という軸は強固。

その一方、全体の塩分量を調整して、食後感を軽くするような配慮も忘れない。店主はもともとフレンチ出身。いまや和食のイメージが強いが、海老のビスクが出たり、〆にパスタやチーズが出てきたりと、訪れる度におもちゃ箱のようなワクワク感があり、リピーターが増えるのも納得。



〆はグリンピースごはんと梅風味の浅漬け、味噌汁で。お酒はグラスで一律¥600。おまかせでペアリングも可

お酒メニューを見れば「日本酒、ワイン」程度の記載にとまどうが、それも客とスタッフとのコミュニケーションを生み出す策。

「家庭料理の半歩先の料理で、安心してもらいたい。飲んで、食べて、僕らと喋って、そんなのが好きな人にはこの店が合うと思います」。

目黒の母ならぬ、目黒の狢〞。この心地よさ、一度は体験されたし。



本マグロなかおちのネギトロ



春キャベツとアサリのおひたし。一番出汁とアサリの風味が心地よい



うどとゴボウと牛肉のきんぴら



ねっとりとした食感の自家製ゴマ豆腐。最後に炒りごまをかけて完成



脂の乗った金目鯛の炙りは、皮目の香ばしさが絶妙



大山鶏と筍は異なる食感を楽しんで



ミル貝とワケギとわかめ、生クラゲのぬた和え



毎晩お客の熱気と活気で大賑わい




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騒がしいだけの街は、もう嫌だ!というあなたへ。次なる大人の拠点はココ!


城南地区の山手線の駅でありながら、
知っているようで知らない、最後の未開拓エリア「目黒」。

最新号となる「東京カレンダー2017年7月号」では、この街に数多く存在する、大人が食べたい料理、つい通いたくなるお店の情報を徹底リサーチ!

騒がしいだけの街に別れを告げて、いざ「目黒」へ!

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