マルチに活躍する映像作家・ジェットダイスケ氏

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ジェットダイスケ氏にとって初の写真展「空蝉」が、5月24日(水)から6月3日(土)の間、「EIZOガレリア銀座」にて開催される。

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ビデオブロガー・ビデオグラファー・フォトグラファーとマルチに活躍するジェットダイスケ氏。大阪芸術大学に在学中の1990年代半ばよりビデオアート系の映像作家として活動を開始。1994年東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 コンテスト部門初代グランプリ入賞、2009年にはアルファブロガーアワードを受賞するなど国内外にて受賞歴・上映歴を持つ。また、15年以上のインターネットでの動画配信でもその名を知られている。

写真展「空蝉」では、“蝉の抜け殻=空蝉(うつせみ)にある様々なドラマ”をテーマに撮影した作品の数々を、シネマ4Kモニター「ColorEdge」にてスライドショーとして展示。そして4200万画素という高画素のマクロ撮影をA全判でプリントした。ジェットダイスケ氏の新たな表現方法に触れることができる写真展の開催に際し、ジェットダイスケ氏本人がコメントを寄せた。

■ 華々しさと空虚さ、生に執着する狂気

――写真を始めたきっかけは

「中学生のころ、伯父にもらったおさがりの一眼レフがきっかけです。特撮映画が好きだったので、多重露光や長時間露光ばかりして遊んでいました。デザインの現場に入ってからは、カメラマンに指示を出す側にまわってしまいましたが、動画撮影できるデジタル一眼の購入をきっかけにまた自分で写真撮影することにも興味をもつようになりました」

――今回の写真展のテーマやコンセプトについて

「5年ほど前、石神井公園で蝉の羽化を撮影していたところ、通りかかった同じマンションの住人の方が『蝉はこんなところでも羽化するのか!』と驚いていました。個人的には桜や紅葉と同じように、蝉の羽化にも、季節を迎えて一斉に狂い咲くような印象を抱いています。しかし祭りのような華々しさだけでなく羽化に失敗するものや、雨に打たれてしまうもの、捕食者の餌食になってしまうものなど蝉にとって羽化とは危険と隣り合わせの行為です。それでも避けては通れない、生きるための大きな変化。場合によっては死線を乗り越え、その先で短い夏を謳歌する。これは現生を生きる我々人間の姿にも重ねることができます。蝉の抜け殻=空蝉にはそういった様々なドラマが、そして生きることの空虚さや無常、そして何より生に執着する狂気が含まれていると考えました。住宅街のごく身近な公園で、深夜に人知れず繰り広げられるこの命のドラマを伝えたいと思い撮影に取り組みました。なるべく蝉を驚かせないよう特殊なライティング方法と長時間露光にて撮影。命の営みでありながらもどこか無機質で虚ろな、昆虫ならではの狂気を伴う描写ができたと思います」

■ 動画と写真、そしてこれから

――動画と写真はどうリンクしているのか

「動画でも構図やライティングは基本的に変わらないと思いますが、定常光のみで照明を組むのが決定的な違いかと思っています。自分はライティングが苦手なのもあってここは苦労する面です。写真に真剣に取り組み始めてまだほんの2年ほどですが、カット割りの概念がないことに苦労しました。どうしても引きの画で状況説明、寄って詳細描写という動画ならではの癖が抜けず、“この一枚”の瞬間に込める情報の取捨選択はまだまだ難しく感じています。NHK技研にて8Kの試写を見たときに、まるで印刷物が動いているかのように感じました。これからは動画と写真の垣根がどんどん無くなり、メディアの多様化もあって、両方のスキルを合わせた新しい表現を生み出していく必要性も出てくると思います」

――今後の写真活動について

「今年に入ってからは琵琶湖の近くに移り住んで大好きな琵琶湖の風景を中心に撮影しています。住んでいるからこその気づきを深掘りしていけたらと考えています。WEB制作に携わっていたころ、俳優を起用したフォトストーリーのディレクションをやったことがあります。そういった動画に近いもの、ある種の映画的な作品なども挑戦してみたいです」【ウォーカープラス編集部/国分洋平】