きらびやかなイメージの平安時代、でも匂いは……

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平安時代の絵巻などを見ると優雅できらびやかな世界が繰り広げられており、香りを楽しむ文化もあったため、さぞかし芳しい香りに溢れていたのでは?と想像が広がる。その一方で「毎日お風呂に入っていたのかしら?」という疑問もある。そこで実際の平安時代の匂いはどのようなものだったのか、歴史研究者である総合研究大学院大学・国文学研究資料館 准教授 西村慎太郎先生に聞いた。

■平安時代の衛生状況は最悪

西村先生によると「匂いというのは実は文明化するにしたがって『発見』されてきたものであるとフランスの歴史学者アラン・コルバンが指摘していてなかなか難しい問題です」とのこと。当時の匂いは文献のように残らないので推測の域を出ない、また現代人と平安時代人とではものの捉えかたや感性が全く違うので匂いに関する認識もかなり違う可能性があるということだ。

「絵巻や文献から想像するに現代の私たちからすると、平安時代は都でもかなり『クサかった』のでは?と思います。平安京はトイレも未発達で貴族はおまるなどがありましたが、庶民は国宝の絵巻物『餓鬼草紙』にも描かれているように、外で用を足していたようです。また運搬用の牛馬の糞をはじめ人の死体も転がっていたと考えられます。衛生状況は最悪です。また当時の建物も通気性のある構造ですから匂いも相当入ってきていたかもしれません」(西村先生)

平安時代というと優雅できらびやかなイメージだが、牛馬糞や死体がゴロゴロ溢れるなどなんとも想像しがたい衛生状況だ。やはり平安時代の人々も臭くて辛かったのだろうか。

「現代人も香水を常につけていると鼻が慣れてついつけすぎてしまうなんてことがあるでしょう。おそらく平安時代の人も鼻が慣れてしまっている可能性があります」(西村先生)

■平安貴族は複雑な香りをまとっていた?

平安貴族というとお香を薫きしめ良い香りをさせていたイメージだが、実際はどうだろうか。
「お香の香りだけならば良いでしょうが、当時毎日入浴する習慣はなかったですし、お風呂も今のようなタイプではなく蒸し風呂です。お風呂に入る頻度も平安貴族の日記に五日おきに入るようにと子孫に言い含めているので、五日風呂に入らなくてもセーフだったとも考えられます。また女性は長い髪に油をつけて梳かし、貴族は男女ともに白粉でお化粧をしていたと考えると、服からのお香の香りに白粉、鬢付け油の香り、そこに本人の体臭が混ざった複雑な香りだったのではないでしょうか」

なかなか現代人には想像の及ばない香りだったのかもしれない。着物に薫きしめていたお香の香りはどのようなものだったのか。

「様々なお香があり香りもブレンドして楽しんでいたようですが、人気があった香木が東南アジア産のものが少なくなかったことから考えると、現代のアジア雑貨店で焚かれている甘く濃い香りだったのかもしれません」

なかなかエキゾチックな香りだったのかもしれない。

「教えて!goo」では、「あなたにとって今までで最も臭かったものは?」「ということで皆さんの回答を募集中だ。

●専門家プロフィール:西村 慎太郎
総合研究大学院大学・国文学研究資料館 准教授。NPO法人歴史資料継承機構代表理事。専門は、日本近世史。朝廷に仕えた地下官人についての研究。また近世の公家家職、内侍所についての研究。近年では地域にのこる歴史資料の保全から地域貢献のあり方を考えている。教えて!goo スタッフ(Oshiete Staff)