不服な思いを明かしたポーラ・ラドクリフ【写真:Getty Images】

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野口、渋井らとしのぎ削った女子マラソン世界記録保持者「私たちの意見に耳を傾けて」

 欧州陸上競技連盟は、ドーピング問題への対応の一環として世界記録を抹消し、白紙の状態に戻すという提案を表明。急進的なアイデアにより、世界で賛否両論が沸き起こっているが、もし提案が実行された場合、世界記録保持者の一人は法的手段に訴えることも辞さない姿勢を明らかにしている。英紙「デイリー・メール」が報じた。

 強硬な考えを示したのは、女子マラソンの世界記録保持者、ポーラ・ラドクリフ(英国)だ。記事によれば、国際陸上競技連盟(IAAF)が2005年以前の世界記録を白紙に戻せば、法的措置も辞さないという。2005年というタイミングは、選手の血液と尿のサンプルがドーピング対策のために初めて保存された年であるとも併記している。

 ラドクリフは現役時代、野口みずき、渋井陽子ら日本勢のライバルに君臨。2002年に従来の世界記録を1分以上更新する2時間17分18秒をマーク、翌年にはさらに2分近く更新する2時間15分25秒という驚異的なタイムを記録した。これは14年たった今も更新されておらず、あまりに飛び抜けた記録だったため、ドーピングが噂されたこともあった。

 記事によると、今回の出来事を受け、欧州陸連の措置で影響を受けることになる男子三段跳の世界記録保持者であるジョナサン・エドワーズ(英国)など、ほかのアスリートともこの話題について話をし、世界記録と地位保全のために戦っていくとしている。

エドワーズ不服「記録はいつか破られる。ただ、スポーツ界の関係者によってとは…」

 今回の問題は法廷に持ち込まれるのか尋ねられたラドクリフは「そうはならないことを願ってます。関係する団体が私たちの意見に耳を傾け、仕事をしていくことがクリーンなアスリート達を守ることに繋がります」と語り、エドワーズは「自分の記録はいつの日か破られるものだと思っていた。ただ、それがスポーツ界の関係者たちによってとは考えていなかった」と話したといい、不服な思いを明かしている。

 また、60メートルハードル室内世界記録保持者のコリン・ジャクソン(英国)は「彼らが言っているのは、2005年以前に大多数の選手が残した活躍は信用できないということだ。歴史を消し去るなんてことはできない」と語ったといい、2005年を区切りとして疑念を持たれることに憤りを感じているようだ。

 この問題に取り組む欧州連盟のピアース・オキャラハン氏は、IAAFのセバスチャン・コー会長も取り組みを支援していることを明らかにしたといい、コー会長自身も1000メートルのヨーロッパ記録などを失うことになると、記事では伝えられている。

 オキャラハン氏は「しかし、彼はスポーツ界における『もっと大きな絵』を見ているのです。個人よりもスポーツ界全体を見渡す必要がある。IAAFが手助けをしてくれれば、早ければ今年の終わり頃には実現するでしょう」と語ったといい、自らの記録を失ってでも提案を実現しようとするコー会長とともに年内決着を目指していく。

 世界記録保持者たちに衝撃を与えた「記録白紙化」は、どのような形で決着を迎えるのだろうか。