伝統の長距離GI天皇賞・春がゴールして約2時間後(現地時間同日午後16時35分)、香港シャティン競馬場でGIクイーンエリザベス2世カップ(芝2000m)が行なわれる。今年は日本からの出走はネオリアリズム(牡6歳/父ネオユニヴァース、堀宣行厩舎)の1頭のみで、全体でも8頭立てとやや寂しい頭数となったが、先月のドバイワールドカップミーティングと同じく日本でも馬券が発売され、この日の中央競馬開催が終わってすぐの時間帯とあって、注目必至のレースだ。

 日本調教馬にとって、過去に同じシャティンでの2000mのGIレースでは、昨年末や一昨年の香港カップのモーリスやエイシンヒカリをはじめ6勝を挙げており、好相性のコースとされている。ネオリアリズムはこれに続くことができるか、また、馬券的な妙味はどこにあるのか、掘り下げてみたい。


現地に着いてからも順調のネオリアリズム

 まず、日本から参戦のネオリアリズムは、香港は昨年末のGI香港マイル(2016年12月11日/シャティン・芝1600m)に続く2度目の遠征となる。その前走のGIマイルチャンピオンシップ(2016年11月20日/京都・芝1600m)3着と、このところ競走成績からマイラー志向に見えるが、これまでの全7勝のうち4勝を芝2000mで挙げており、ネオリアリズムにとって最も得意とする距離と言える。昨年のGII札幌記念(2016年8月21日/札幌・芝2000m)では僚馬モーリスを破る金星を挙げたことは記憶に新しい。

 また、全7勝中4勝が今回と同じ、コーナーを4回通過する右回り芝コースで、そのうち3回がシャティン競馬場に近いとされる洋芝の札幌競馬場でのもの。9着だった香港マイルよりも、むしろ適性ではこちら、と考えてよいだろう。

 さらに頼もしいのが、鞍上に迎えられた”マジックマン”ことジョアン・モレイラ騎手の存在だろう。先月行なわれたGIドバイターフでも、神がかり的な手綱さばきでヴィブロスを勝利に導いた。現地の関係者によれば、シャティン競馬場を知り尽くすこの当地リーディングジョッキーを早くから押さえていたとのこと。この辺りからも勝負気配がうかがえてる。

 レースの3日前となる27日木曜日の朝には、そのモレイラ騎手を背に、芝コースで最終追い切りが行われた。あいにくの雨模様となったが、「追い切りの日を今日(木曜日)か明日か決めかねていましたが、ちょうどいいクッション状態だったので」と堀調教師が判断してのもの。一旦、軽めのキャンターで600mほど走り、残り800m付近までダクで移動、そしてここからスピードを上げ、56秒8(800m)-23秒6(400m)でフィニッシュ。モレイラ騎手は終始手綱をがっちりと抑えての馬なりで、引き上げてくるときには「レースに向けて準備はバッチリ!」と馬上から笑顔を見せていた。昨年の香港マイルの時は、馬場入りも遅れ、調整過程があまり順調でないように見えた。そのときと同じ馬だとは思わないほうがいいだろう。

 展開面でもネオリアリズムに有利に働きそうだ。今回出走の8頭の中に、これといった逃げ馬は不在。ネオリアリズムも決して逃げ馬ではないが、昨年の札幌記念は逃げたことでモーリスを完封した。位置取りについてには言及を避けていたが、札幌記念ではモーリスに騎乗していたモレイラ騎手の頭の中にも、その展開はイメージされているだろう。

 これだけの要素が揃っていれば、日本ではネオリアリズムが1番人気になると予想される。だが、ホームである現地の馬を抑えて、GI未連対の6歳馬が1番人気というのは果たして実力に見合うものなのだろうか。実はウィリアムヒル、パディパワーといった海外の主要ブックメーカーもネオリアリズムを1番人気に推しているが、むしろこういった時こそ冷静な判断でオイシイ配当を獲りたいところ。


実績やコース経験を素直に評価するなら、ワーザー(手前)から入る手も ならば、本命に推したいのは、地元香港の大将格で昨年の勝ち馬のワーザー(せん5歳/父タヴィストック、ジョン・ムーア厩舎)だ。ニュージーランド、オーストラリアでGIIを2勝、GI2着2回の実績を引っさげて4歳の昨シーズンに香港に移籍。香港ダービー(シャティン・芝2000m)と昨年のこのレースを連勝し、香港馬王(年度代表馬)の座についた。特に昨年のこのレースは、大雨の影響はあったものの、日本からのラブリーデイ、サトノクラウン、ヌーヴォレコルト、アイルランドのハイランドリールといった実績馬を相手に大楽勝を演じた。

 今シーズンは脚部不安から始動が遅れたが、2戦目のGI香港ゴールドカップ(2月26日/シャティン・芝2000m)では、勝負どころで不利を受けながらもゴール寸前できっちりと差し切って、勝利をものにした。前走のマイル戦(4月9日/シャティン)は4着と敗れているが、これは間隔が空くことを嫌っての叩き台。シャティンの2000mはいずれもビッグレースで3戦3勝。本来なら1番人気でおかしくない馬が2番人気なら、この馬から入るのが定石だろう。

 木曜日には芝コースでサム・クリッパートン騎手を背に2頭併せで追い切られた。1200mからほぼ馬なりで、52秒0(800m)-22秒9(400m)でフィニッシュ。「パーフェクト」と管理するムーア調教師も太鼓判を押す仕上がりだ。レース当日は昨年と同じくヒュー・ボウマン騎手をオーストラリアから鞍上に迎える。

 2番手に昨年の香港カップでモーリスの2着だった香港のシークレットウェポン(せん7歳/父ショワジール、デニス・イップ厩舎)と考えていた。こちらも、今シーズンに限れば、芝2000mは3戦して1勝、2着1回、3着1回と崩れておらず、また、前走の香港ゴールドカップでもゴール前までワーザーを苦しめた。今回はそこからの直行という点に好感を持っていたが、実は中間に頓挫があり、3週間ほど馬場入りを控えられていたのだった。加えて金曜日計量の馬体重が前走比でマイナス21ポンド(≒9.5kg)。昨年の香港カップとの比較でマイナス42ポンド(≒19kg)では食指が動かない。盲点となるなら買いたかったが、今回は無印とした。

 そこで2番手をネオリアリズムとして、3番手にはフランスから遠征してきたディクトン(牡4歳/父ロウマン、ジャンルカ・ビエトリーニ厩舎)を推したい。3歳時はフランス2000ギニー、フランスダービーとともに3着。このフランスダービーの勝ち馬が、秋にはヨーロッパの2000m路線の頂点に君臨するアルマンゾルであることを考えれば、実力は引けを取らない。

 近3走はマイル戦を使われているが、「距離は決して問題ではないし、こちらの方が適性があるとも考えている」とビエトリーニ調教師。香港入りしてから、3頭の海外勢の中でもっとも意欲的に調教が積まれており、連日馬場でしっかりと走る姿に好感が持てる。一説によると、オーナーの地元である香港への移籍も視野に入っているとのこと。また、手綱を取るオリビエ・ペリエ騎手も脅威だ。

 もう1頭の外国招待馬であるザユナイテッドステイツ(牡7歳/父ガリレオ、ロバート・ヒックモット厩舎)はこれが引退レースだという。香港入りしてからほとんど馬場に姿を見せず、レース2日前の金曜日に芝コースで調整が行なわれたのみ。実績は負けていないが、やや強調材料に欠ける。

 それであれば、未知の魅力も込みで香港の4歳馬パキスタンスター(せん4歳/父シャマーダル、アンソニー・クルーズ厩舎)を穴で推したい。前半行き脚がつかず追い込み一辺倒の脚質だが、終いの爆発力は香港でも現役屈指のもの。今回はペースが遅くなることで、追走も楽になることが見込める。4コーナーで馬群に楽に取りつけているようであれば、一気に大仕事をやってのけても不思議ではない。重賞未勝利馬という点はこのレースにおいて有利ではないが、ここをステッピングに飛躍することを期待したい。

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