「ふて寝」は健康の秘訣!? 悩んだときは眠るが勝ち

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仕事やプライベートで思うように物事が進まず、イライラしたりモヤモヤしたり…。そんなとき、「もういいや」、と「ふて寝」をしたことはありませんか? 実は、この「ふて寝」はメンタルケアに効果的なのです。今回は「ふて寝」による「感情リセット」の効果について紹介します。

目次

ふて寝の効果ふて寝しないとどうなる?ふて寝の質を高めるコツふて寝でアイデアが生まれる?ふて寝の注意点

 

ふて寝の効果

「ふて寝」とは、自分の思うように物事が進まないときに、ふてくされて寝てしまうこと。これは単なる「現実逃避」ではなく、問題の解決に向けたよい行動ともいえます。

「ふて寝」でストレス解消

「ふて寝」をすると、心身の疲労回復などのプラスの効果が見込めます。

(1)頭がすっきりする

モヤモヤしたり、イライラしたりするのは、脳が疲れている可能性があります。脳が疲れてくると、眠気を引き起こす睡眠物質「アデノシン」が生成され、眠気を感じます。モヤモヤしているときに眠気を感じた場合は、「脳が疲れているな」と気持ちを切り替えて、思い切って「ふて寝」してしまいましょう。眠ると脳の疲労が回復するため、目が覚めたあとに頭がすっきりとし、イライラが解消されます。

(2)感情をリセットできる

脳のなかでも知覚や思考、推理、記憶など、高次機能をつかさどる大脳皮質は、睡眠によってクールダウンされ、休息モードに入る特徴があります。「ふて寝」により大脳皮質がリフレッシュすることで、脳がすっきりした状態になり、ふて寝前のフラストレーションやモヤモヤした感情は、整理されるのです。
 
また、ふて寝をすると、大脳皮質とともに感情のコントロールをしている「扁桃体(へんとうたい)」の機能が回復します。扁桃体には、恐怖やストレス反応、不安、好き嫌いなどの情動反応を処理する役割があります。睡眠不足の状態だと過剰に反応しやすく、不安・抑うつ傾向が強まるという特徴も。この「扁桃体」の機能回復により、不安だと感じていたことも、目が覚めたらすっきりと解消されることがあるので、思い切ってふて寝をしてしまいましょう。

(3)ホルモンバランスの乱れを整える

モヤモヤやイライラといった感情を抱える人は、感情の動きに作用する脳内物質「ノルアドレナリン」や「アドレナリン」、「コルチゾール」といったホルモンの分泌量が、過剰になっている傾向があります。睡眠不足の状態だと、これらの脳内物質のバランスを整える「セロトニン」の分泌量が減るため、精神的に不安定になりやすくなります。眠ると体内時計がリセットされ、脳内からセロトニンが分泌されるので、ホルモンバランスの乱れを整えられます。

ふて寝しないとどうなる?

ふて寝にはさまざまなメリットがあります。ふて寝をしなかったり、また考え事をし続けて眠れない状態が続いたりすると、心身に影響がおよぶ可能性があります。

心身の病気の可能性

眠りで感情をリセットしないままでいたり、モヤモヤしたまま眠れなかったりする日が続くと、ストレスがたまり、心身に負担がかかります。ストレスがたまった状態が続くと、身体の不調につながる可能性があります。たとえば、不整脈、耳鳴り、自律神経失調症などがあり、この不調が悪化すると重大な疾患につながる可能性があります。ストレスをためないように、十分な睡眠をとりましょう。

ふて寝の質を高めるコツ

ストレス解消のためには眠りの質を上げることが大切です。イライラしたり、不満を抱えたりしたまま「ふて寝」をする前に、次の方法をとり入れましょう。ストレスが解消しやすくなるため、眠りの質が上がり、「ふて寝」をした後に、よりすっきりとした気分で目覚められるでしょう。

ストレス日記をつける

自分がその日に感じたことや思ったことを、日記に書きとめましょう。主観的に、感情や思いを書きなぐるだけでOKです。続けるうちに、少しずつ客観的に自分を見つめ直せるようになり、心の整理ができるようになります。

自分の感情や思いを人に話す

書くだけでは気持ちが収まらないという人は、実際に家族や友人などに、その悩みを話してみましょう。このとき、相手に悩みの解決法を求めず、相手に自分の気持ちを共有してもらう、ということを意識してください。自分の気持ちを人に伝えることで悩みが整理され、同時に相手から共感を得ることでストレスの軽減につながります。

マインドフルネス

ストレスを軽減させるためのプログラムとして、1979年にマサチューセッツ大学医学部に導入されたのがマインドフルネスです。おもに「瞑想(めいそう)」を行い、呼吸に伴うあらゆる身体感覚を意識します。その中で自然に浮かび上がる雑念に気づき、それが心の中で変化していくのを見届け、雑念への意識をなくしていく方法です。これを習得することにより、気持ちが安定し、ストレスへの耐性が高くなります。

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ふて寝でアイデアが生まれる?

ふて寝には感情リセットや、感情の起伏の調整などさまざまな効果があります。さらに記憶の整理ができ、新しいアイデアが生まれる「レミニセンス(追想法)」という現象が起こるメリットがあります。

レミニセンスのメカニズム

人間の脳は、レム睡眠のあいだ、パソコンでいう「最適化」のような働きをしています。情報を処理し、記憶の定着作業を行っているのです。ただし、起きて活動しているあいだに取り込んだ情報のすべてを記憶として定着するのではなく、大量の情報の中から、必要なものだけを選んで行っています。
 
このとき、古い記憶が整理され、新しい記憶と結びつくことで、日中目が覚めているときに思いつかなかったような新しいアイデアが浮かぶことがあります。これが「レミニセンス」という現象です。
 
ちなみに、脳の情報の最適化の機能は、大きな悩みがあるほど強く働くという特徴があります。

ふて寝の注意点

「ふて寝」にはさまざまなよい面があるので、夜に「今日はもう何もしたくない!」と眠ってしまうのは問題ありません。しかし、昼間に長時間の「ふて寝」をしてしまうと、体内時計のリズムが崩れて夜に眠れなくなってしまうことがあります。もし「ふて寝」によって体内時計のリズムが崩れてしまったら、次のことを実践し、リズムを調整しましょう。

ふて寝をした翌朝に朝日を浴びる

ふて寝をしてしまい、夜によく眠れなかったら、翌朝に起きたあと、1時間以内に朝日を浴びましょう。太陽の光には、神経伝達物質の「セロトニン」を生成させる作用があります。「セロトニン」が朝に生成されると、これが夜に「メラトニン」という睡眠ホルモンに変わります。メラトニンが生成されると、夜に眠くなるので、乱れた体内時計が整います。

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「ふて寝」には、脳をクールダウンして働きやすくしたり、嫌な感情をコントロールしたり、さまざまな効果が期待できます。「なまけている」などのネガティブな印象を持たず、「行き詰まったらとりあえず寝てしまおう」という、リラックスした気持ちで過ごしましょう。
 
監修:坪田聡(雨晴クリニック副院長)
 
<参照>
『ぐっすり眠れる5つの習慣』坪田聡(三笠書房)
『パワーナップ仮眠法』坪田聡(フォレスト出版)
『一瞬で眠りにつく方法』坪田聡(宝島社)
『睡眠メソッド100』三橋美穂(かんき出版)

photo:Getty Images

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