2017年クラシック候補たち
第9回:アドミラブル

 皐月賞が終わり、いよいよ”競馬の祭典”となるGI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)へ向けて、競馬界の盛り上がりは日に日に増していく。そんななか、まさに「遅れてきた大物」と呼ぶにふさわしい1頭が、ダービー戦線で急浮上している。

 栗東トレセン(滋賀県)の音無秀孝厩舎に所属する、アドミラブル(牡3歳/父ディープインパクト)である。


ノド鳴りの手術を経て、素質が一気に開花したアドミラブル「遅れてきた大物」といっても、デビューが遅かったわけではない。同馬は、昨年9月に初戦を迎えていた。しかし、先頭から2秒2も離された9着に惨敗した。

 思わぬ大敗を喫してレース後に同馬の状態を調べたところ、負けた理由が明らかになった。「ノド鳴り(※)」だったのである。
※「喘鳴症(ぜんめいしょう)」というサラブレッドの疾病。喉頭口が狭くなるために呼吸が苦しくなり、競走馬としては能力を発揮できなくなる。呼吸の際、大きな音を発することから「ノド鳴り」と呼ばれる。

 陣営は、すぐに手術に踏み切った。そして、それが見事に功を奏した。

 今年3月に復帰すると、仕切り直しの一戦となった3歳未勝利(3月5日/阪神・芝1800m)で完勝。ハイペースのなか、1分45秒8の好タイムをマークした。その時計は、なんと当日に行なわれた同条件の古馬オープン戦、大阪城Sより1秒3も速かったのである。

 さらに、続く500万下のアザレア賞(4月1日/阪神・芝2400m)では、一転してスローペースのなかを3馬身差の快勝。上がり33秒5の末脚を繰り出して、余裕たっぷりに後続を突き放した。

 ノド鳴りを乗り越えて、見えてきたダービーへの道筋。管理する音無厩舎も、この馬に大きな期待をかけているという。関西競馬専門紙のトラックマンが語る。

「サラブレッドのノド鳴り手術はよく行なわれますが、実は完治しないことも多いんです。しかしこの馬については、『レースを見れば、完治しているのは明らか』と音無調教師。とにかく先生が驚いたのは初勝利の内容で、『その瞬間にダービーを意識した』とのこと。『能力はもともと評価していたが、それをレースで発揮できるようになった』と話しています」

 前走後、陣営はすぐにGII青葉賞(4月29日/東京・芝2400m)への参戦を表明。ここで権利を獲得して、本番へと向かうプランだ。

 音無厩舎にとって、まだ獲得していないダービーのタイトル。その戴冠へ、アドミラブルは大きな望みをかける存在となるが、「不安点はほとんどない」という。それだけに、同馬へかける期待はますます高まっている。先述のトラックマンが続ける。

「2戦目はハイペース、3戦目はスローペースという展開でしたが、音無調教師は『どちらのペースにも対応できたのはよかった』と話し、さらなる手応えをつかんだようです。特に3戦目は、着差の開きにくいスローからの瞬発力勝負。そこで3馬身差の圧勝ですからね。あの切れ味は3歳牡馬のなかでも最上位でしょうし、今後への希望はさらに膨らんでいると思います」

 ダービートライアルとして長年定着している青葉賞だが、このレースを勝ってダービーを制した馬はまだいない。しかし、ノド鳴り手術を見事に乗り越えて、父ディープインパクトを彷彿とさせる切れ味を発揮できるようになったアドミラブルなら、そうした”ジンクス”を打ち破ってもおかしくない。 その快挙を遂げる前に、まず注目は青葉賞。そこで、強烈なインパクトを与えるレースを見せてくれることを期待したい。

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