今週は3歳牡馬クラシックの第1弾、皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)が開催される。そこで先週に引き続き、元ジョッキーの安藤勝己氏に、クラシックに挑む3歳牡馬の実力を分析・診断してもらい、独自の「番付」を選定してもらった――。


3戦3勝で皐月賞に挑むレイデオロ ちょうど10年前、2007年の3歳クラシック戦線においては、ウオッカとダイワスカーレットという2頭の強い牝馬がいた。そして、ウオッカが日本ダービーを制したように、この年は牡馬を含めてもこの2頭の強さが突出していたように思う。

 今年は、その2007年と似ているような気がするね。牝馬はかなりレベルが高いけど、牡馬は今ひとつ。「こいつはすごいな」という馬がなかなか出てきていない。

 1頭だけ、レイデオロ(牡3歳)は強いと思う。ただ同馬に関しても、年が明けてからは一度も走っていないので、状態面がどうなのか、気になるところ。力があるのは確かだけど、いきなり本番、という点には若干の不安を感じる。

 では、その次に続く馬はいるのか? といったところで、正直これといった馬の名前が浮かんでこない。珍しいよね、こんな年は。

 そうなると、皐月賞では思い切ってファンディーナ(牝3歳)を本命にしようかと思っているくらい。同馬を牡馬番付に加えるなら、レイデオロと同格の横綱に選定するだろうしね。

 レイデオロの状態を考えると、牡馬は本当に大混戦。皐月賞も、ダービーも、どうなるのかまったく予想がつかない。馬券的には面白いことになりそうだけどね……。



横綱:レイデオロ(牡3歳)
(父キングカメハメハ/戦績:3戦3勝)

 この世代の競馬を昨年から見てきて、「こいつがクラシックを勝つんじゃないか」と思ったのは、この馬だけ。とにかく、レースがうまい。操縦性も高そうだよね。

 前走のホープフルS(2016年12月25日/中山・芝2000m)も、前々走の葉牡丹賞(2016年12月3日/中山・芝2000m)も、この世代のトップクラスと戦って、正攻法のレースをして堂々と勝っている。こういう馬は強いよ。

 自分が現役時代に騎乗していたオヤジ、キングカメハメハにも似ている。ディープインパクト産駒みたいに、キューンと切れるんじゃなくて、追い出してからグングンと迫力たっぷりに伸びてくる。その辺は、本当にオヤジそっくり。

 でも、今年はまだ一度もレースを使っていない。そういう意味では、状態面に不安がある。普通は、本番前にどこかのトライアルを使うものだからね。それなのに使わなかったということは、どこかにまだ心配なところが残っているからなのか……。

 仮にそうだとして、状態が整っていない中で、それでも皐月賞でいい競馬をするようなら、ダービー(5月28日/東京・芝2400m)はこの馬で決まりだろうな。

大関:ペルシアンナイト(牡3歳)
(父ハービンジャー/戦績:5戦3勝、2着1回、3着1回)

 血統やこれまでのレースぶりからして、2400m戦となるダービーは厳しいだろうけど、皐月賞では期待できる。おそらく、2000mまでなら距離は持つんじゃないかな。

 シンザン記念(1月8日/京都・芝1600m)で、1番人気に支持されながら3着に負けたときは、「大したことねぇな」と思ったけど、あのときはどうやら重馬場がこたえたみたいやね。その証拠に、続く良馬場で行なわれたアーリントンC(2月25日/阪神・芝1600m)では、すごく強い競馬で勝利した。

 直線、後方から追い込んで2着に3馬身差。あの、終(しま)いの脚はなかなか見どころがあったし、このレースを見て”皐月賞向き”という感じがした。本番でも、あの脚をうまく引き出せれば、今年のメンバーなら、勝ち負けになってもおかしくない。

 その点、大舞台で強いミルコ・デムーロ騎手が鞍上というのは心強い。馬体的にも、見た目がいい馬で、それなりにインパクトもある。

 あくまでも皐月賞限定になるけど、レイデオロに続くのはこの馬だろうね。

関脇:スワーヴリチャード(牡3歳)
(父ハーツクライ/戦績:4戦2勝、2着2回)

 前走の競馬は強かった。クラシックに関わりが深いと言われる共同通信杯(2月12日/東京・芝1800m)で、それもムーヴザワールド(牡3歳/父ディープインパクト)ら評判馬が何頭かいた中で、2着に2馬身半差をつけての完勝だったからね。あの勝ち方は評価されていいと思う。

 馬体もいい。ゆったりとした作りの馬だよね。こういう馬は、レースを使うごとに、どんどん力をつけてくるタイプが多い。いわゆる「使ってよくなる」というやつ。そういう意味ではこの先、もっとよくなる可能性がある。皐月賞でも、ダービーでも、いいところに絡んでくるんじゃないかな。

 ただ、この馬は負けたときが、意外とだらしない。こういうタイプの馬は往々にして「底力に欠ける」ということがあるんだけど、この馬も案外そうなのかもしれない。もしそうだとしたら、そこが弱点になるだろうね。

小結:カデナ(牡3歳)
(父ディープインパクト/戦績:5戦3勝、2着2回)

 この馬が勝利した弥生賞(3月5日/中山・芝2000m)のレースぶりを見て、「先行有利のスローの流れを、外から見事に差し切ったから強い」と評価している人が結構いるみたいだけど、はたしてそうだろうか。

 自分は、あのレースの流れが、逆にこの馬に向いたんじゃないか、と見ている。つまり”はまった”と。

 もともと、一瞬しか切れないタイプ。展開がはまれば、弥生賞のときのように強い勝ち方を見せるけど、時計が速くなったり、自分から勝ちにいく競馬をしたりしたら、どれだけの脚が使えるのか、未知な部分がある。それに対して、自分は「案外、それほどでもないんじゃないかな」という気がしているわけ。

 馬体も小さくまとまっている感じで、ノビノビしたところがない。ちょっと人気先行のきらいがあって、番付的にはこれぐらいの馬だと思うよ。

前頭筆頭:アダムバローズ(牡3歳)
(父ハーツクライ/戦績7戦4勝、2着1回、着外2回)

 ここまでの番付上位の馬は、末脚に見どころのある馬が多かったけど、この馬は先行して粘るのが得意。前走の若葉S(3月18日/阪神・芝2000m)では、後ろから馬が追いすがってくると、そこからもう1回がんばるというしぶとさを見せた。あれを見て、「この馬、力をつけてきたなぁ」と思ったね。

 皐月賞でも、ダービーでも、他の有力馬と違って、前、前で競馬ができるのは強み。しかも、この馬は折り合いもいい。これも、大きなメリット。

 地味な存在だけど、混戦のときはこういう馬が意外とがんばるもの。有力馬が後方でけん制し合うなど、この馬にとって、恵まれた展開になるシーンも十分に考えられる。一発あっても、おかしくないんじゃないかな。

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 ここに名前を挙げた馬の他にも、有力視されている馬は何頭かいる。例えば、冠名「サトノ」の2頭。サトノアレス(牡3歳/父ディープインパクト)と、サトノアーサー(牡3歳/父ディープインパクト)だ。

 サトノアレスは、暮れのGI朝日杯フューチュリティS(2016年12月18日/阪神・芝1600m)を制した2歳王者。本来であれば、番付の上位候補となるが、レースレベルに疑問符がつく前走スプリングS(3月19日/中山・芝1800m)で、普通の競馬をして普通に負けてしまった。しかも、4着となれば、評価を下げざるを得ない。

 一方、話題の良血馬サトノアーサーもいい馬だと思うけど、まだ力が全然ついてきていない。ゆえに、勝負どころでスッと反応できなくて、取りこぼしてしまう。目標はダービーということだけど、はたしてそれまでによくなるのかどうか。今は休ませて成長をうながしたほうが、将来的にはいいような気がする。

 他の重賞馬、期待の血統馬も3歳牡馬はみんな、現状ではどんぐりの背比べ。抜けた存在はいない。今回の番付にしても、レイデオロ以外は消去法で選んだようなものだから。

 万一、「1強」レイデオロが万全でなかったら、今春のクラシックはふたつとも、牝馬にやられてしまうかもしれないなぁ……。安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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