春のGIシリーズが開幕し、いよいよ今週は3歳牝馬クラシックの第1弾、桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)が開催される。今年は「超ハイレベル」と言われる3歳牝馬戦線。どんな戦いが繰り広げられるのか、多くの競馬ファンがその行方に注目している。そんな大一番を前にして、今年も再び元ジョッキーの安藤勝己氏を直撃。クラシックに挑む馬たちの実力を分析・診断してもらい、独自の「3歳牝馬番付」を選定してもらった――。


安藤氏も絶賛するソウルスターリング  今年の3歳牝馬は、世間でも言われているとおり、本当にレベルが高い。なかでも、ソウルスターリングとファンディーナ。この2頭は相当な器だと思うよ。

 ファンディーナは皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)に向かうみたいだけど、牡馬相手でもきっといい勝負をするんじゃないかな。個人的には、桜花賞でこの2頭の対決を見たかったな、という思いはあるけどね。

 これらに続くのは、アドマイヤミヤビだろう。前々走の百日草特別(2016年11月6日/東京・芝2000m)では、弥生賞を勝った牡馬のカデナ(牡3歳)を負かしていて、この馬も”オトコ勝り”。ファンディーナ同様、牡馬路線に行っても、上位争いできるんじゃないかな。もちろん、桜花賞やオークス(5月21日/東京・芝2400m)でも戴冠のチャンスはあると思う。




横綱:ソウルスターリング(牝3歳)
(父フランケル/戦績:4戦4勝)

 レベルが高い3歳牝馬の、まさに代表格やね。

 この馬の一番いいところは、操縦性が高いこと。だから、レースがどんな流れになっても対応できる。ジョッキーにとっては、かなり乗りやすい馬だと思う。

 馬体を見ても、馬格があって、牝馬にありがちなひ弱そうなところが一切ない。前哨戦となるチューリップ賞(3月4日/阪神・芝1600m)では、速い時計の競馬にも対応できたし、桜花賞を勝つ確率は相当高いと思うよ。

 もしファンディーナが出てきたとしても、桜花賞ではこの馬が勝つんじゃないかな。完成度という点では、やはりソウルスターリングのほうが上。それに、ソウルスターリングはこの世代のトップレベルの馬たちとずっと戦ってきて、そこで勝ち続けている。その点は、負かした相手のレベルに「?」マークがつくファンディーナよりも評価できる。

 父親のフランケルは長い距離がいいタイプではないけど、母親のスタセリタは中距離で結果を出してきた馬。しかもソウルスターリング自身、しっかり折り合えるから、それなりに距離はこなせると思う。そういう意味では、距離が延びるオークスでも期待できる。

 まあ、相手も同じ3歳牝馬だからね。桜花賞を楽勝するようなら、オークスもいけるんじゃないかな。

大関:ファンディーナ(牝3歳)
(父ディープインパクト/戦績:3戦3勝)

 フットワークが大きな馬だから、勝つときは豪快に勝つ。豪快さだけなら、ソウルスターリングより上かもしれないね。

 確かにこれまでは、決して強い相手とは戦ってきていない。それでも、ほとんど追わないで、デビュー戦では9馬身、重賞の前走フラワーC(3月20日/中山・芝1800m)でも5馬身、後続をちぎって勝ってきたからね。こんなことは並の馬にできることじゃないよ。

 やはり、この世代ではソウルスターリングに次ぐ素材だろうね。

 ゆえに当然、皐月賞でもいい勝負ができると思う。ただ、ちぎって勝ってきた馬というのは、厳しいレースになると「あれっ?」という感じで、案外だらしなく負けてしまうことが結構ある。牡馬を相手に回し、ハードな流れになって馬群に包まれたりしたときは、ちょっと心配はある。

 そのあとは、オークスになるのか、ダービーになるのかわからないけど、あのゆったりしたフットワークからすれば、距離はこなせるはず。皐月賞でいい競馬をすれば、その勢いで次も、というのは十分にあると思うよ。

関脇:アドマイヤミヤビ(牝3歳)
(父ハーツクライ/戦績:4戦3勝、2着1回)

 クイーンC(2月11日/東京・芝1600m)を勝って3連勝を飾ったあと、桜花賞ではクリストフ・ルメール騎手(※ソウルスターリングに騎乗)からミルコ・デムーロ騎手に乗り替わることが決まった。その後、デムーロ騎手が主戦を務めてきたカラクレナイ(牝3歳/父ローエングリン)がフィリーズレビュー(3月12日/阪神・芝1400m)を快勝したけど、どちらか選べる状況だったとしても、アドマイヤミヤビを選択するんじゃないかな。自分がジョッキーでも、そうすると思う。

 アドマイヤミヤビは、終(しま)いのしっかりした馬で、どんな展開になっても最後は必ず伸びてくる。大崩れしないタイプで、非常に安定感がある。成績的には、上位2頭ほどの派手さはないけれども、弥生賞馬のカデナを負かしているわけだから、間違いなく能力は高い。

 桜花賞でも、最強ソウルスターリングを負かす可能性が少しはあると見ている。自分なら、きっと”チャンス待ち”で乗るだろうね。馬込みでじっと我慢して、前がやり合ってくれるような展開になるのを待つ。その結果、展開が向いてくれれば、最後の末脚にかけるイメージやね。

 ソウルスターリングが断然の人気になるだろうから、気楽に乗れるのも好材料。鞍上も大一番に強いデムーロ騎手だし、チャンスは十分にあるよ。

 また、これまでの競馬を見る限り、距離が延びることのアドバンテージは、この馬が一番ありそう。距離がギリギリな桜花賞より、オークスのほうが勝つチャンスはグッと膨らむだろうね。

小結:ミスパンテール(牝3歳)
(父ダイワメジャー/戦績2戦1勝、2着1回)

 昨年7月の札幌で新馬を勝って、2戦目はおよそ7カ月の休み明けでチューリップ賞に挑んだ。そこで、強敵相手に2着。キャリアが浅いのに、こんなふうに結果を出せるのは、能力がなければできないことだよ。

 思えば、新馬でも強い勝ち方だった。素質馬が休養を挟んで、さらに成長したなって感じがしたね。それにしても、半年以上休んで、最後にあれだけいい脚を使って2着に食い込んできたことは驚きだった。

 今度は、1回使ったことで一段とよくなるかもしれない。この馬には、そういう未知の魅力がある。桜花賞で一番の”伏兵”を挙げるなら、この馬だろうね。

前頭筆頭:リスグラシュー(牝3歳)
(父ハーツクライ/戦績:5戦2勝、2着2回、3着1回)

 昨年末の阪神ジュベナイルフィリーズ(2016年12月11日/阪神・芝1600m)で、ソウルスターリングに迫る2着となったときは「強い馬やなぁ」と思ったけど、前哨戦となるチューリップ賞(3着)の走りを見たときには、ちょっとがっかりした。

 阪神JFのようにペースが遅い展開になると、道中でタメがきいて、最後にいい脚が使えるんだろうけど、前走みたいにペースが速くなると、そのいい脚が使えなくなってしまう。桜花賞のような大きなレースで戦うには、やや力不足という感じがするね。

 上位馬と比べると馬体も小さくて、伸びしろがあるかどうか。とはいえ、馬券圏内には絡んでくる力はあると思う。

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 その他、フィリーズレビュー組の、1着カラクレナイ、2着レーヌミノル(牝3歳/父ダイワメジャー)は、レース自体のレベルが低かったように思う。ソウルスターリングを相手に、勝ち負けを演じるには厳しいのではないか。

 ソウルスターリングと同じフランケルを父に持つミスエルテ(牝3歳)も、人気はするだろうけど、気性がかっているタイプ。やや操縦性に欠け、成長力という点でも疑問が残る。ソウルスターリングを逆転するのはどうか……。安藤勝己(あんどう・かつみ)
1960年3月28日生まれ。愛知県出身。2003年、地方競馬・笠松競馬場から中央競馬(JRA)に移籍。鮮やかな手綱さばきでファンを魅了し、「アンカツ」の愛称で親しまれた。キングカメハメハをはじめ、ダイワメジャー、ダイワスカーレット、ブエナビスタなど、多くの名馬にも騎乗。数々のビッグタイトルを手にした。2013年1月31日、現役を引退。騎手生活通算4464勝、うちJRA通算1111勝(GI=22勝)。現在は競馬評論家として精力的に活動している。

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