お酒のおつまみや、お弁当のおかずとしても重宝する「かまぼこ」。スーパーなどではよく「木の板」にのった状態で販売されていますが、そこには興味深い理由がありました。全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会に聞きました。

板には、すり身を支える役割がある

 同会担当者によると、かまぼこの板に木材を使用するのは、かまぼこを蒸したり焼いたりする際に、すり身が板にのっていても、木材であれば板面からも熱が通るため、均一に加熱されるからだそうです。

 たとえば、木材ではなく樹脂板を使用した場合、板面からの熱の通りが悪くなり、均一な加熱が難しくなるほか、高温で樹脂板が変形するなどの問題があります。

 そもそも、かまぼこを板にのせるのは、粘り気のあるすり身を支えて形を整えやすくしたり、加熱時に「支え」の役割を果たしたりするため。板に木材を使うことで、前述のほかに、「加熱・冷却後にかまぼこが出す水分を吸収して保存性を高める」「木の香りによって魚臭を抑える」などの効果があるといいます。

 担当者によると、かまぼこの板はすでに室町時代後期には登場していますが、当時は、羽子板を縦に真っ二つに割ったような形をした、取っ手付きのものでした。その後、蒸し技術が向上した江戸時代、一度にたくさん並べられるようにと、現在のような取っ手なしの空板に変わったとされています。

最も多く使われているのは「モミ」

 それでは、空板にはどのような種類の木が使われているのでしょうか。

 かまぼこの板には、木地が白く正目が通った、やわらかいものが適していることから、スギやモミ、マツが使用されており、現在、最も多く使われているのはモミだそうです。かつては、スギが多く使われていましたが、値段が高いためモミが使われるようになり、匂いの良いスギは現在、一部の高級品などに限られるそうです。

 ちなみに今から30年以上前、ある樹脂メーカーがプラスチック製の空板を普及させようと試作したことがありましたが、水分をうまく吸わないほか、すり身の“のり”もいま一つであったことから、普及に至りませんでした。

(オトナンサー編集部)