今年のドバイワールドカップデーを検討するうえで重要なポイントとして、出走各馬の戦績やコンディションのほかに、天候と馬場状態という要素が加わるのは間違いないだろう。というのも、今週に入って、ドバイは冷涼な日が続き、ここが砂漠地帯であることをうっかり忘れそうになるぐらいだからだ。

 その涼しさに加えて、しばしば降るスコールのような雨。今週だけでも火曜日の未明から早朝にかけてと、レース前日の金曜日の早朝から昼にかけて強い雨が降り、レース当日も早朝から昼にかけて雨の予報が出ている。砂漠だけに、陽が出れば馬場が乾くのは早いだろうが、実際のところ、どこまで影響が残るのか未知数というのが正直なところ。特に芝コースで行なわれるドバイターフ、ドバイシーマクラシックは日本馬に相性のいいレースだが、このイメージを根底から変えなくてはいけないかもしれない。

 そのあたりを踏まえて、まずはドバイターフである。

 連覇を狙っていたリアルスティール(牡5歳)は両鼻出血のため、無念の出走取りやめになった。ブックメーカーの前日のオッズでは、ザラック(牡4歳)が1番人気で、差がなくリブチェスター(牡4歳)、ムタケイエフ(せん6歳)までがおおよそ10倍以下となっており、10倍台にデコレーテッドナイト(牡5歳)、ドーヴィル(牡4歳)、モンディアリスト(牡7歳)が続く。日本のヴィブロス(牝4歳)はその次の25〜26倍見当で、各国の競馬メディアでも「どの馬にもチャンスがある、とてもオープンなレース」という評価がなされている。

 ザラックの母は凱旋門賞馬ザルカヴァという超良血。重賞初勝利はドバイに遠征しての前走のGIIIドバイミレニアムだが、フランスダービーでは、その後欧州の2000m路線を席巻するアルマンゾルの2着と好走して、実力の片鱗を見せていた。一方で、血統の良さから人気先行のきらいもあり、昨年の凱旋門賞ウイークに行なわれたGIIドラール賞では、グリグリの1番人気に推されたものの、3着に敗れるなど取りこぼしが多いのも事実。馬場適性と4歳になってからの前進を踏まえても本命にはしづらい。

 そこで本命には、このザラックと対戦成績1勝1敗のエシェム(牡4歳)を推す。ドラール賞ではザラックに先着して2着。しかも、今回の斤量ではザラックが前走比+0.5kgに対して、エシェムは-2kg。エシェムの前走はシャンティイのオールウェザーコースの一般戦で、これまでもドバイワールドカップデーで好走してきたフランスの調教馬たちが多く使ってきたレース。臨戦過程からも好感が持てる。ましてや、人気の盲点にもなりそうで、一攫千金を狙うならこの馬だろう。

 前述のザラックが対抗で、単穴としてはデコレーテッドナイトを指名する。ドバイに乗り込んでの前走、GIジェベルハッタを制してGI初制覇。このときが、超スローペースを中団後ろで待機して、直線では狭い馬群を割って抜け出してくる力強い勝ち方だった。今回も確たる逃げ馬が不在でスローペース必至なだけに、前走の再現を期待できる。

 以下、昨年のGI英インターナショナルSでは不利を受けなければ大金星もあったムタケイエフ、メイダンの1800m路線で実績のあるヴェリースペシャル(牡5歳)、同じ左回りで整地された馬場のベルモントダービーを勝っているドーヴィル(牡4)までを圏内と見る。

 7頭という少頭数ながら、ハイレベルなメンバーが揃ったGIドバイシーマクラシックは、昨年の勝ち馬ポストポンド(牡6歳)と、世界各地でGIを勝っているハイランドリール(牡5歳)の一騎討ちムード。これに一昨年の愛ダービー馬ジャックホブス(牡5歳)とGIヨークシャーオークスで昨年の凱旋門賞馬ファウンドを破ったセブンスヘブン(牝4歳)がどこまで割って入るか、といった様相である。


2強に割って入るか!? ドバイシーマクラシックに出走するセブンスヘブン

 ここの本命は4歳牝馬セブンスヘブンとしたい。もちろん、ポストポンドとハイランドリールが強いのは承知の上。ただし、当日が重い馬場になるようであれば、最も利があるのはこの馬ではないかと見る。というのも、この馬がファウンドを下した時も重い馬場だったことがひとつ。また、同じく重い馬場で行なわれた英インターナショナルSではポストポンド、ハイランドリールのワンツーだったものの、最後はともにフラフラで、3着のムタケイエフに不利を与えるほどだった事実もある。この2頭は欧州調教馬でありながら、整地された良馬場の方が向く印象が強い。ハイランドリールは昨年もゴール前で失速したように、メイダンの馬場が向かないのではないかという懸念もある。

 そうした昨年の結果を踏まえ、対抗にポストポンドとし、単穴をやはり重い馬場への適性からジャックホブスとした。約半年ぶりのレースだったGI英チャンピオンSでは2000mのチャンピオン馬アルマンゾル、凱旋門賞を制したばかりのファウンドに続く3着と力の一端を示した。加えて、鞍上のウィリアム・ビュイック騎手は、メイダン競馬場では昨シーズン、今シーズンともに勝率20%台をたたき出している。この競馬場なら、ライアン・ムーア騎手よりもこちらを推したい。

 そして4番手に日本のサウンズオブアース(牡6歳)。勝利するのは至難であろうが、相手・コースを選ばず、大レースであと一歩の結果を出している。ここでも相手なりに通用するのではないか。

 なお、馬場の乾燥が早かった場合には、ハイランドリールを本命とし、対抗にポストポンド、3番手にセブンスヘヴンとしたい。


ドバイワールドカップ断トツの1番人気、アロゲート。通算成績7戦6勝

 ドバイワールドカップは、アメリカ現役最強馬の呼び声が高いアロゲート(牡4歳)が話題性でも断然の中心的存在となっている。「競馬に絶対はない」と言われるが、どこをどう切り取っても、この馬には死角らしい死角が見つからない。重箱の隅をつつけば、「初ナイター」「初海外遠征」「超ハイペースに巻き込まれて失速」ということが考えられるが、どれもこじつけに終わってしまいそうだ。

 したがって、本命はそのままアロゲート。昨年のGIブリーダーズCクラシックで、昨年のドバイワールドカップの勝ち馬カリフォルニアクロームらを下し、続く今年1月のペガサスワールドカップは後続を突き放す圧勝。スピードがあり、逃げることも可能だし、逆に控える競馬から速い展開を自力で潰しに行く力もある。アメリカで走った馬の大半とは勝負付けが済んでいる。あとは普通に回ってくるだけでいいはずだ。

 対抗には重馬場の超ハイペースを考慮して昨年3着のホッパーチュニティ(牡6歳)。アロゲートと同じボブ・バファート厩舎で、こちらは追い込み馬。昨年のこのレースでも、後方から猛然と追い込んできた。

 3番手にはムブタヒージ(牡5歳)を指名する。このレース自体はリピーター、しかも実績を残している馬が強い。その点、この馬は一昨年UAEダービーを制し、昨年はワールドカップ2着。今シーズン初戦、前走のカーリンハンデは、60kgのトップハンデを背負い、逃げた馬を外から自力で潰しに行ったところを、53kgの軽ハンデ馬に内をすくわれての2着で、まったく悲観する内容ではない。メイダンで強いクリストフ・スミヨン騎手も心強い。

 4番手には人気薄で妙味を感じるフリアクルサーダ(牝5歳)。アルゼンチン競馬における最高峰レースのひとつであるクリアドレス大賞の勝ち馬で、ダートへの適性は高い。そんな経歴ながら、昨年はイギリスで芝牝馬路線の重賞で好走。今年に入ってからはダート路線に戻り、マクトゥームチャレンジR2を勝って、やはり馬場適性が高いことを証明した。

 日本勢の中ではゴールドドリーム(牡4歳)を三連馬券のヒモとして入れたい。距離に一抹の不安があるが、ここは重くなる馬場を味方に克服することを期待する。モレイラ騎手を背にした金曜日の調教では、軽めの運動ながら弾むようなフットワークを見せていただけに、本番のレースでも楽しみだ。