砂漠を舞台にしたカーニバルで、今年も国際競馬の幕が開く。5つのサラブレッドの国際GI競走を含む9つの国際競走開催であるドバイワールドカップ(以下、ドバイWC)カーニバルが、現地時間3月26日(土)、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイにあるメイダン競馬場で行なわれる。昨年から日本国内で開始された海外競馬馬券の発売は、メイン競走であるGIドバイWC(ダート2000m)のほか、GIドバイシーマクラシック(芝2410m)、GIドバイターフ(芝1800m)の3競走のみだが、このほかGIドバイゴールデンシャヒーン(ダート1200m)、GII UAEダービー(ダート1900m)、GIIゴドルフィンマイル(ダート1600m)も含めて、10頭の日本調教馬がスタンバイしている。



ドバイワールドカップに出走するゴールドドリーム。調整は順調
 今年のドバイワールドカップウイークは、例年と比較してあまり気温が上がらず、むしろ陽が上ったあとも吐く息が白く、肌寒さが収まらないほど。21日火曜日の午前中は雨に見舞われ、とても砂漠の国とは思えない。当日に向けて徐々に気温も上がる見込みだが、それでもレース当日は30度を超えるかどうかとの予報になっている。日本調教馬にとっては、懸念材料のひとつとされる気候の変化が最小限にとどめられているのは、追い風となるはず。


 しかし、プラス材料ばかりではない。まず、ドバイWCに出走予定のアポロケンタッキー(牡5歳)がザ石のため、火曜日まで馬場入りを見送られていた。水曜日にようやく馬場に入ったが、その日は軽い運動のみ。本格的なコースでの調教はレースの2日前、木曜日になってからだ。救いとしては、ドバイ出発前に強い調教で仕上げており、そもそもドバイ到着後は軽めの調整というプランだったこと。リスクヘッジが功を奏した形だが、若干の狂いがあったことは否めないだろう。

 さらに残念な報せは続いた。

 現地時間火曜日の夕方に、連覇を狙うリアルスティールが両鼻出血でドバイターフの出走を見送ったと、主催者からリリースされた。当日朝の調教後に発症したとのことで、すぐに内視鏡で確認すると、肺由来のものではなく、出走しようと思えば出走できる程度のものだったそうだが、管理する矢作芳人調教師は「苦渋の決断ですが、おそらく人気にもなる馬、完璧でなければ使うことができない。勇気ある撤退」として、出走を取りやめるに至った。

 ここまではネガティブな話題となってしまったが、それを除けば、日本から遠征した各陣営は、順調に本番に向けて調整を消化している。

 メインとなるドバイWCには、フェブラリーSを制してGIウィナーの仲間入りを果たしたゴールドドリーム(牡4歳)、前述アポロケンタッキー、Jpn1JBCクラシックの勝ち馬アウォーディー(牡7歳)、その半弟で昨年のGII UAEダービーを勝ったラニ(牡4歳)と、過去最大となる4頭の日本調教馬が出走する。


昨年はこの地で、UAEダービーを制したラニ 今季で3シーズン目となるメイダン競馬場のダートコース。まだまだレース数のサンプルが少ないが、ダートの質は日本のものよりは北米に近く、実際に過去2回のドバイWCでは一昨年が2、3着馬、昨年は1、3着馬が北米調教馬だった。

 加えて、今シーズンに入って、ダートコースに例年よりもローラーを掛けて密度を濃くし、よりスピードとパワーを求める馬場にシフトされたとのこと。それは北米調教馬にとって追い風で、日本調教馬にとってはより厳しさを増したように映る。しかし、昨年ラニがUAEダービーを制したように、実際にはふたを開けてみないとわからないのが競馬だ。

 そのラニと半兄のアウォーディーが水曜日朝に併せる形で追い切られた。アウォーディーを先に行かせる形でラニが追走。アウォーディーにとっては抜け出したところで気を抜かせないために、ラニにはレースに向けて気合を注入するという狙いでの追い切りだった。両馬を管理する松永幹夫調教師も「ラニは昨年と臨戦過程が違いますが、昨年同様の状態にあります。アウォーディーも馬場にフィットするか心配でしたが、それもクリアしてくれました」と納得の表情を見せた。

 また、ゴールドドリームも同じく水曜日に最終追い切りを実施。平田修調教師は、レース間隔が詰まることで入れ込むことを憂慮していたが、そういった素振りは見せず、きっちりと走りに集中しており、どうやら杞憂に終わりそうだ。


 連覇を狙うポストポンド(牡6歳)、昨年の凱旋門賞2着のハイランドリール(牡5歳)などが出走し、最も激戦とされるシーマクラシックに出走するサウンズオブアース(牡6歳)も同じく水曜日、ダートコースで追い切りが行なわれた。こちらも日本で強い調教を行ない、ドバイ到着後は調整程度という調教プランだったが、この日はゴール前だけ気合をつけてのもの。「少し馬がリラックスしていたようだったので、最後にしっかりとやってレース向きの状態に調整しました」と藤岡健一調教師。もともと涼しい時期を得意としているだけに、目下のドバイの気候はこの馬にとって一番の追い風となりそうだ。一昨年の有馬記念2着、昨年のジャパンC2着のように、勝ち切れない一方で、相手なりに結果を出してきた。今回も強敵に臆することなく、一矢報いることを期待したい。

 ドバイターフには、日本からはヴィブロスのみが出走することになる。初の牡馬に混じってのGIが海外レースとハードルは高いが、「海外遠征は時期尚早で、早くて今年の秋かと思っていたのが、冬の間にこちらの思っていた以上の成長を見せて、これはいけると確信しての出走です」と友道康夫調教師は自信をのぞかせる。芝コースで長めに追い切られた様子に、「日本である程度作ってきましたが、これで(スイッチも入って)競馬モードに入ったと思います」と満足そうに続けた。ドバイターフは傑出馬不在で混戦模様。現時点では穴馬の一頭としか目されていないが、食い込む余地は十分にありそうだ。

 ゴールデンシャヒーンに出走するディオスコリダー(牡3歳)は、日本調教馬の中で一番最初にダートコースで追い切られた。まだまだ3歳で、古馬に混ざってのレースはそれだけで苦戦が予想されるが、「この1ヶ月で環境にも慣れ、一度こちらでレースに使ったことで上積みもあります。3歳馬の伸びしろに期待したい」と高橋義忠調教師は意気盛んだ。


 UAEダービーにはエピカリス(牡3歳)とアディラート(牡3歳)の2頭が出走し、昨年のラニの再現を狙う。特にエピカリスはデビュー以来ここまで4戦無敗。国内のダート同世代では屈指の存在だ。ともに水曜日にダートコースで追い切られて臨戦態勢。2頭ともに結果次第ではケンタッキーダービーへの転戦も選択肢として上がるだけに、俄然力が入るところだろう。

 第1レースに行なわれるゴドルフィンマイルにはフェブラリーS3着のカフジテイク(牡5歳)が日本調教馬の先陣を切って出走する。福永祐一騎手を背に水曜日に追い切られたが、鞍上の合図に鋭く反応をして、力強い走りを見せた。「直線が長いのはこの馬に合うはず。ダートに関してはものすごくフィットするかもしれないので、追い込みと決め付けずにレースに臨みたい」と福永騎手は意気込む。コーナーワークがやや不得手なこの馬にとっては大回りのメイダンは願ってもない舞台。当日はこの馬向けにカスタマイズされたスパイク蹄鉄でレースに向かう。

 昨年も2勝したように、ここ数年、日本調教馬の活躍が目立つドバイワールドカップデー。今年も砂漠の地に日の丸が高々と昇るだろうか。