韓国がWBC1次ラウンドで敗退した。戦前の予想でノーマークだったイスラエルに敗れたこともあり、日本では「よもやの敗戦」として受け止められた。

 だが、戦力が整わなかったことは明らかだった。メジャー組は抑えの呉昇桓(オ・スンファン/カージナルス)のみで、秋信守(チュ・シンス/レンジャーズ)、姜正浩(カン・ジョンホ/パイレーツ)、金賢洙(キム・ヒョンス/オリオールズ)といったメジャー野手組は、誰ひとりとして代表入りしなかった。もともと投手力が弱く、彼らの打力に頼りたかったが叶わなかった。


1勝2敗でWBC1次リーグ敗退が決まった韓国。写真中央が金寅植監督 そんなチーム事情もあり、韓国では大会前から「今回は苦戦するぞ」という空気が流れていた。

 だからといって韓国のマスコミが許すはずもなく、今はさかんに敗因の分析と戦犯捜しで盛り上がっている。自国開催での1次ラウンド敗退は、マスコミやファンにとっても、この上なく屈辱的なことに変わりはない。

 今回の敗戦を考えていると、ひとつ気になることがあった。それは「選手が豊かになった」ということだ。

 近年、韓国のプロ野球は人気が高まり、選手の待遇も良くなった。FA移籍のときなどは、残留するにしても移籍するにしても莫大な金額を提示される。ちなみに、韓国プロ野球選手の今季の平均年俸は1億3883万ウォン(約1400万円)で、主軸クラスだと4億ウォン(約4000万円)〜5億ウォン(約5000万円)というのも珍しくなくなった。

 これならわざわざ日本に来て、外国人扱いとしてプレーすることもない。韓国でケガなくプレーしていれば、苦労知らずの生活が送れる。意識するかどうかは別として、そうした安定志向の選手は明らかに増えた。それと同時にWBCのような国際大会に「無理をしてでも頑張ろう」という気持ちは薄れていった。

 韓国代表の金寅植(キム・インシク)監督は、そうした若い選手たちにいつもこう訴えていた。

「恵まれた生活を送れるのは、野球ができるため。その野球ができるのは、国が安泰だから。そんなありがたみを少しでも理解しようとするのなら、国のために国際大会で汗を流せ」

 だがその言葉も、今の若い選手たちには浸透しなかった。いわば韓国の選手は「失うものを持ってしまったアスリート」というわけだ。

 事実、筆者の親しい韓国球界の関係者からも「今の選手たちは勘違いしている。”バブル”という言葉があるが、今の選手たちはまさにバブル世代。”必死さ”はもう韓国の代名詞ではない」という指摘があった。

 ただ、それだけで今回の敗退を語ることはできない。たとえば、韓国は一昨年に開催された『プレミア12』で優勝したが、そのときと今回のメンバーを照らし合わせても、著しい戦力ダウンというわけではない。

 長く韓国のプロ野球を見てきたが、面白くないと感じるようになったのはいつからだろうか。かつては、粗っぽさのなかにも激しさ、ひたむきさがあった。勝っても負けても、見る者にアピールするものがあった。しかし、今はそれが希薄になっている気がしてならない。ひと言でいえば、”韓国らしい魅力”が薄れてしまった。それは選手たちの「豊かさ」だけのせいではないと思う。

 結論から言えば、「韓国野球が向かう方向を見失ってしまった」からだろう。2008年の北京五輪の優勝、2009年のWBC準優勝。この頃が韓国野球のピークだった。

 当時の韓国野球には「スピード」と「パワー」という明確なふたつの柱が存在していた。それは国際大会を戦う上でも強力な武器となっていた。だから、世界の頂点にも立てたのだ。

 ところがそれ以降、そうした韓国野球のカラーは時代とともにぼやけてしまった。世代交代がうまくいかず、ポテンシャルの高い選手も育ってこなかった。たとえ才能ある選手がいたとしても、前述したように好待遇が戦うモチベーションを鈍化させるという悪循環に陥ってしまった。

 それも結局のところ、一度ピークを見た者が次の目標に向かう際、その方向を見失ってしまった――そう思えてならない。要するに、国内野球の隆盛が代表チームを衰退させるという皮肉な結果を招いてしまった。

 敗戦の中から、その国の野球の背景も透けて見える。それも国際大会の残酷さであり、だからこそ面白くもあるのだ。

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