年が改まり、クラシック候補も揃ってきた。これからデビューする馬でとんでもない大物が出てくる可能性も残っているが、常識的には現時点で勝ち上がっている馬の中から、クラシック馬が誕生するだろう。そこで今年の春のクラシックを牡牝分けて、血統的観点から注目馬を挙げていこう。

【牡馬戦線】
GI皐月賞(4月16日/中山・芝2000m)
GI日本ダービー(5月28日/東京・芝2400m)

 GI朝日杯フューチュリティS(2016年12月18日/阪神・芝1600m)を勝ち、最優秀2歳馬のタイトルを獲得したサトノアレス(藤沢和雄厩舎)。レースでは後方追走から直線では外を回り、上がり3ハロン34秒1の瞬発力で差し切った。クラシックホース続出のディープインパクト産駒だが、全兄2頭は芝1200〜1800mの特別戦勝ち馬。母の父デインヒルもどちらかというとスピード血統なので、距離が延びるクラシック本番には不安が残る。

 同厩舎のレイデオロ(父キングカメハメハ)はデビューから3連勝でGIIホープフルS(2016年12月25日/中山・芝2000m)を勝利。破壊力抜群の末脚で、スケールの大きさを感じさせた。その前の葉牡丹賞(500万下、2016年12月3日)から中山芝2000mを強い内容で連勝したことから、同条件の皐月賞は最有力候補と言えるだろう。母の父は有馬記念連覇のシンボリクリスエスで、祖母の弟に3冠馬ディープインパクトがいる名牝系。ダービーの舞台も不安はないだろう。

 サトノアーサー(池江泰寿厩舎/父ディープインパクト)は新馬(2016年10月1日/阪神・芝2000m)→シクラメン賞(2016年12月4日/阪神・芝1800m)を連勝。シクラメン賞では上がり3ハロン32秒7という驚異的な末脚を見せて、3馬身半差の圧勝と強烈なインパクトを残した。母はニュージーランド3歳牝馬チャンピオンで、GIニュージーランド1000ギニー(芝1600m)勝ち馬。芝2000mのGIIを含む重賞6勝を挙げている。2000m前後がベストだろうが、2400mも不安のない血統構成だ。

 スワーヴリチャード(庄野靖志厩舎/父ハーツクライ)は2戦目の未勝利(2016年10月2日/阪神・芝2000m)を勝利後、GIII東京スポーツ杯2歳S(2016年11月19日/東京・芝1800m)で出遅れながらも2着。最後は外からブレスジャーニーに差されたが、かなり長い脚を使っていた。兄バンドワゴン(父ホワイトマズル)はGIIIきさらぎ賞2着。父の産駒の牡馬は中長距離タイプに出ることが多く、その走りからも距離が延びてよさそう。ダービーでは有力候補となりそうだ。

 1戦1勝馬だが、取り上げておきたいのが新種牡馬ルーラーシップ産駒のキセキ(角居勝彦厩舎)。デビュー戦(2016年12月11日/阪神・芝1800m)ではスタートで出遅れたが、直線で後続を突き放した末脚は大物感たっぷりだった。フットワークが大きい走りをするので、距離が長く、直線も長いダービーの舞台は合うだろうし、秋のGI菊花賞(京都・芝3000m)でも有力だ。

 先日の寒竹賞(500万下、1月7日/中山・芝2000m)で2着に敗れたが、アーザムブルー(戸田博文厩舎)も注目の1頭。父ディープインパクト×母父ブライアンズタイムは昨年の皐月賞馬ディーマジェスティと同じ組み合わせで、母の姉弟には桜花賞馬ファレノプシス、ダービー馬キズナがいる良血だ。血統的に皐月賞はピッタリで、穴候補として挙げておきたい。

 他では、GIII東京スポーツ杯2歳S3着のムーヴザワールド(石坂正厩舎/父ディープインパクト)が、GIIローズSを勝ったタッチングスピーチの全弟という血統からも今後の成長が大いに期待できる存在だ。2歳重賞を勝っているカデナ(中竹和也厩舎/父ディープインパクト)、ブレスジャーニー(本間忍厩舎/父バトルプラン)も圏内だろう。

★皐月賞注目馬
レイデオロ
サトノアーサー
アーザムブルー

★日本ダービー注目馬
スワーヴリチャード
レイデオロ
サトノアーサー
キセキ


【牝馬戦線】
GI桜花賞(4月9日/阪神・芝1600m)
GIオークス(5月21日/東京・芝2400m)

 2歳チャンピオンに不安ありの牡馬戦線とは対照的に、牝馬は女王ソウルスターリング(藤沢和雄厩舎)が引き続き中心になりそう。GI阪神ジュベナイルフィリーズ(2016年12月11日/阪神・芝1600m)では1000m通過58秒8のハイペースを楽に3〜4番手で追走。直線では難なく抜け出して押し切った。このレースは後方から瞬発力を武器に差して勝つ馬が多い。コースを改修した2006年以降、4コーナーを6番手以内で通過して勝利したのは2006年のウォッカと2015年のメジャーエンブレムのみで、いずれも翌春のGIを制している(ウォッカは日本ダービー、メジャーエンブレムはNHKマイルC)。母はGI仏オークス(芝2100m)など仏米でGI6勝の世界的名牝。父フランケルは8〜10ハロン(約1600〜約2000m)で結果を残したが、その父ガリレオは昨年の凱旋門賞馬ファウンドなど欧州でクラシックディスタンス(約2400m)の名馬を多数送り出す大種牡馬。桜花賞はもちろん、オークスも問題ないだろう。春2冠の最有力候補と見る。

 阪神ジュベナイルフィリーズで2着だったのがリスグラシュー(矢作芳人厩舎)。同レースは大外18番枠からのスタートで大きく出遅れ、道中は外々を回るチグハグな競馬になってしまったが、ゴール前での末脚は見どころがあった。本来は中団より前で競馬をしたいタイプで、ソウルスターリングと枠順、道中のポジションが逆だったら勝っていただろう。母リリサイドはフランスの桜花賞にあたる仏1000ギニーで1位入線(6着に降着)した実力馬。1600mのGIIIアルテミスS(2016年10月29日/東京)を勝っているが、父ハーツクライはオークス馬ヌーヴォレコルトを出していることもあり、オークスでより力を発揮できそうだ。

 ミスエルテ(池江泰寿厩舎/父フランケル)は目の覚めるような豪脚でGIIIファンタジーS(2016年11月5日/京都・芝1400m)を勝利。牡牝混合のGI朝日杯フューチュリティSでも1番人気に推されたが、中団外めを追走も伸びを欠いて4着に終わった。ただ、牡馬相手に大崩れしなかったのは評価できるポイントで、桜花賞で直線一気の末脚がハマれば勝算はある。

 フローレスマジック(木村哲也厩舎)はGIIIアルテミスS2着。スローペースの中、位置取りの差でリスグラシューに及ばなかったが、いかにもマイル向きの瞬発力の持ち主だ。全姉兄にGIエリザベス女王杯のラキシス、GIIスワンSのサトノアラジンがいる良血で、父ディープインパクト×母父ストームキャットの配合は2013年桜花賞馬アユサンと同じ。ハイペースになれば後方から伸びてくるだろう。

 アドマイヤミヤビ(友道康夫厩舎)は百日草特別(500万下、2016年11月6日/東京・芝1800m)でカデナを破った。父はリスグラシューと同じハーツクライで、牝系は三冠馬ディープインパクトと同じ名門。オークス戦線で台頭してくるだろう。

 ヴゼットジョリー(牝3歳、中内田充正厩舎)はGIII新潟2歳S(2016年8月28日/新潟・芝1600m)の勝ち馬。父ローエングリンはGI皐月賞やGI安田記念を勝ったロゴタイプの父だが、本馬は祖母の父が凱旋門賞馬ソーマレズという血統。オークスで本領を発揮しそうだ。

 その他、桜花賞戦線ではGIII小倉2歳S(2016年9月4日/小倉・芝1200m)を勝ったレーヌミノル(本田優厩舎/父ダイワメジャー)、1戦1勝だが昨年のオークス馬シンハライトの半妹というミリッサ(石坂正厩舎/父ダイワメジャー)、オークス戦線ではハーツクライ産駒で寒竹賞を制したホウオウパフューム(奥村武厩舎)などに注目したい。

★桜花賞注目馬
ソウルスターリング
リスグラシュー
ミスエルテ
フローレスマジック

★オークス注目馬
リスグラシュー
ソウルスターリング
アドマイヤミヤビ
ヴゼットジョリー


平出貴昭●文 text by Hiraide Takaaki