厳選!新馬情報局(2017年版)
■第34回:ヴェリタブル

 GIの勲章を持つ名牝が、繁殖牝馬となって名馬を送り出す。それは、競馬というスポーツだからこそ味わえる"傑作ドラマ"と言えるだろう。一方で、現役時代に輝かしい成績を収められなかった牝馬が、母となってから活躍馬を次々に出すことがある。これもまた、競馬界における"奇跡のドラマ"であり、競馬ならではの醍醐味と言えるのではないだろうか。

 そうした"奇跡"の生みの親の代表格と言えるのが、繁殖牝馬のトキオリアリティーだ。彼女は、1996年から1998年まで競走馬として過ごしたが、キャリア通算3勝の成績にとどまり、重賞レースに出走することもなく、条件クラスのまま現役生活を終えた。

 しかし、引退後のトキオリアリティーは、日本トップクラスの繁殖牝馬となったのである。それは、これまでに生んだ産駒の経歴を見れば、一目瞭然だろう。

 例えば、2008年に生んだリアルインパクト(牡/父ディープインパクト)は、3歳春の時点でGI安田記念(東京・芝1600m)に挑戦。強豪古馬たちを一蹴し、GIタイトルを手にした。さらに、7歳時には海外GIのジョージライダーS(オーストラリア・芝1500m)を勝利。他にも、GII阪神C(阪神・芝1400m)を連覇するなど、マイル、短距離路線で息の長い活躍を見せた。

 2002年に生んだアイルラヴァゲイン(牡/父エルコンドルパサー)は、GIIIオーシャンS(中山・芝1200m)を制して重賞ウイナーの仲間入り。それ以外にも、GIレースで2度3着になるなど、常に重賞戦線で勝ち負けを演じたトップクラスの1頭だった。

 2011年生まれで、今が"旬"のネオリアリズム(牡6歳/父ネオユニヴァース)も、トキオリアリティーの息子。同馬は昨年のGII札幌記念(札幌・芝2000m)を快勝し、GIマイルCS(京都・芝1600m)でも3着と好走した。今年も重賞戦線での奮闘が大いに期待されている。

 これらの活躍馬を見て気づくのは、いろいろな種牡馬との配合から生まれていること。それはまさに、トキオリアリティーの母としての力を示していると言えるだろう。

 そのトキオリアリティーの新たな産駒が、デビューを控えた3歳馬の中にいる。ヴェリタブル(牝3歳/父ダノンシャンティ)である。

 同馬が所属するのは、美浦トレセン(茨城県)の堀宣行厩舎。リアルインパクトやネオリアリズムを管理してきた厩舎である。そのスタッフは、ヴェリタブルについてどんな感触を抱いているのだろうか。関東競馬専門紙のトラックマンが語る。

「年が明けてゲート試験に合格したばかりで、今のところは『まだ体にユルさが残っている』というジャッジでした。ただ、『その点が解消されてくれば、よくなってくるかもしれない』と話していましたね」

 調教がそれほど進んでいないこともあって、トラックマンによれば「現状ではまだ目を引く動きは見せていない」とのこと。とはいえ、この血統だけにまだ良化の可能性は十分あるだろう。

 では、今後のデビューに向けて、陣営はどんなプランを描いているのだろうか。先述のトラックマンが伝える。

「厩舎としては、とにかく無理せず、じっくりと育てていく方針のようですね。実際、ゲート試験のあとは放牧に出されました。あくまでも馬の成長に合わせて準備を進めていって、『これからどこまでよくなってくれるか』といった待ちの状態。ただ、ネオリアリズムなどもデビューは2月と遅かったですし、焦らずやることで吉と出るケースもあるのではないでしょうか」

 活躍馬を多数出している母の子だけに、大事に育てられた結果、ヴェリタブルも兄たちと同様の才能をいずれ見せてくれるはずである。そして、母トキオリアリティーの名声を一層高めてくれるに違いない。

河合力●文 text by Kawai Chikara