クルマのエンジンオイルの交換時期は、車種によって「〇年ごと」や「〇万km」など、メーカーから指定されています。しかし、その前に警告灯が付くこともあります。その原因は何でしょうか。

警告灯、ついてからでは遅すぎる

 クルマのエンジンオイルは、ガソリンスタンドで給油をした際に、「オイル交換、いかがですか」などとすすめられた際か、ディーラーから「オイル交換のお知らせ」のはがきが届くといったとき以外、あまり意識しないかもしれません。ですが、クルマにとってはとても大切なものです。

キャップに描かれたエンジンオイルを意味するシンボルマークは、国際規格で定められたもの(写真出典:norgal/123RF)。

 エンジン内部の部品は、主に金属でできています。それらが動くときに摩耗しないよう、エンジンオイルはあいだに入ってスムーズに動かす役割をします。また、熱が上がりすぎないようにするための冷却作用や、動力となる爆発のパワーが逃れるのを防ぐ働きもあります。そうして働いているあいだに出るスス、ゴミ、水分などが混ざることでオイルは汚れていくのですが、その水分が直接金属について錆びるのを防ぐ役割もしています。

 そのエンジンオイルに不具合が生じた場合、警告灯が知らせてくれるわけですが、これが点灯するのは、オイルレベルが下がっている場合と、油圧が下がっている場合が考えられます。

「オイルレベル」とはオイルの量を知らせるものなので、調べてみて足りなければ補充するだけのお話ですが、問題は「油圧」の方です。原因としては、油路のつまりによる油圧低下か、ポンプなど部品が故障したケースのどちらかが考えられます。いずれにせよオイルの警告灯が点灯した時点で、自走はおすすめできない状態です。エンジンが焼き付き、走行中いきなり動かなくなることもあるからです。

オイルの劣化、乗っても乗らなくても止まらない?

「エンジンオイルは、人間でいう血液のようなものです」と、ガレーヂ伊太利屋(東京都港区)のメカニック、加藤さんはいいます。

「油路のつまりとは、血管が動脈硬化を起こしているようなものです。部品の故障も、内臓疾患みたいなもので、オイルの汚れによって機械が摩耗するのが原因です」

 いずれにせよ、基本的にきれいなエンジンオイルを使用していないと、なんらかのトラブルに見舞われる可能性は避けられないようです。

 とはいえ、クルマを使えば使うほどエンジンオイルは汚れていきます。では、めったに運転しなければ、オイル交換はしなくていいのでしょうか。

 エンジンオイルなどを手掛け「WAKO’S」のブランド名で知られる和光ケミカル(神奈川県小田原市)の技術部課長、和田さんは「クルマを動かさないあいだも、空気中の湿気により、オイルは水分を含んでいってしまいます。エンジンの熱が入らなければ、その水分は蒸発することができません」といいます。クルマをまったく動かさないことも、実はクルマにとっては良くないことのようです。

 さらに、「クルマにとって一番きついのは、『チョイ乗り』」とも。エンジンオイルなどクルマのエンジンやオイルが温まりきる前にほんのちょっと近場まで乗るだけ、といった乗り方が、実はクルマにとって大変な負担になるというのです。前述の加藤さんも、クルマの部品は金属類やゴムなどでできていることに改めて触れ、「それらが温まらないまま走行するのは、部品の亀裂や故障の原因になります。寝起きの体で全力疾走したらケガをするようなものですね。それを繰り返すと、エンジンにダメージを与えることになります」といいます。

日本で「シビア・コンディション」は珍しくない?

 クルマのカタログには、よく「オイル交換は『シビア・コンディション』での使用の場合、規定よりも短い期間で行うように」と書かれています。「シビア・コンディション」という言葉を聞くと、毎日何百kmも走るような使い方をイメージするかもしれません。ところが前述の和田さんが言うように、「チョイ乗り」こそ実は本当の「シビア・コンディション」なのです。

「(ストップ&ゴーの多い運転など)日本のクルマがシビア・コンディション下で使われている割合は、決して少なくないと思いますよ」(和光ケミカル 和田さん)

 クルマのオイルコンディションをなるべく長持ちさせるには、オイルの種類も重要です。車種に合わせて最適な粘度は違いますし、寒冷地にはそれに合わせた粘度のものを使用します。また、車種によっても、オイルの汚れ方は違います。

「ガソリン車とディーゼル車だと、ディーゼルの方がススも出るので汚れやすいですね。ハイブリッド車も、モーターばかり使っているとエンジンの方には熱が入らないため、(前述のような)あまり走行しないクルマと同じ状態になります。また、軽自動車はオイルパン(タンク)も小さいため、オイル量が少ないぶん、働く時間が多いのです。そうするとオイル自体を冷却させるのが難しいため、条件は厳しくなります」(和光ケミカル 和田さん)

 突然の警告灯に驚かされることなどないように、愛車の種類と乗り方、両方を考えて、オイル交換の時期を見極めることが大切なようです。

【写真】国際規格準拠の警告灯

左からエンジン、バッテリー、オイルの警告灯。このカタチや色は、国際規格(ISO)をもとに日本工業規格(JIS)で定められており、どのクルマも同じ(画像出典:pabkov/123RF)。