■2016クリスマス決戦、有馬記念(5)

 年の瀬の風物詩となるGI有馬記念(12月25日/中山・芝2500m)。今年も1年のフィナーレを飾るにふさわしいメンバーがそろった。

 GI菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)を制したサトノダイヤモンド(牡3歳)が3歳世代の代表として挑めば、前走でGIジャパンカップ(11月27日/東京・芝2400m)を快勝し、GI3勝目を挙げたキタサンブラック(牡4歳)が古馬勢の真打ちとしてそれを迎え撃つ。さらに、昨年の覇者ゴールドアクター(牡5歳)や、悲願のタイトル奪取を狙うサウンズオブアース(牡5歳)などの豪華な顔ぶれが、現役最強馬の座をかけて熾烈な争いを繰り広げることとなる。

 もちろん、ここに挙げた人気馬同士のハイレベルな激闘は大きな見どころのひとつだ。だが一方で、やはり年末だからこそ、"お宝馬券"をゲットしたい気持ちもある。実際、有馬記念では過去に大きな波乱が何度となく起きている。ならば、その歴史をひも解いて、幸運を呼ぶ穴馬を探してみるのも面白い。

 そこで、過去10年の有馬記念を参考に、ファンをあっと驚かせる馬を探してみたい。

「波乱」という視点で過去10年を見るなら、まず目がいくのは、2007年と2015年だ。2007年は9番人気のマツリダゴッホが勝利し、2015年は8番人気のゴールドアクターが優勝して、いずれも高配当を演出した(※)。
※2007年、マツリダゴッホの単勝は5230円、2着ダイワスカーレット(5番人気)との馬連は2万2190円という高配当となった。さらに、3着には6番人気のダイワメジャーが入って3連単の配当は80万880円もついた。また、2015年のゴールドアクターの単勝は1700円。2着サウンズオブアース(5番人気)との馬連は6840円で、3着キタサンブラック(4番人気)を絡めた3連単は12万5870円という高配当となった。

 では、この2頭の共通点は何なのか。ひとつ言えるのは、コース適性の高さだ。

 有馬記念の舞台となる中山競馬場は、小回りで最後に急坂が待ち受ける日本屈指の難コース。しかも、2500mはスタート直後が3、4コーナーを含めたコーナーになっていて、よりテクニカルな形態と言える。その前提を考慮すれば、2頭のコース適性が本番でもものを言ったことは想像に難くない。

 実際、マツリダゴッホは有馬記念までに中山で4勝を挙げ、ゴールドアクターも勝利経験があった。また、同じく小回りとなる札幌や函館においても、前者は2勝、後者は3勝していた。

 2頭ともその時点ですでに重賞を勝っており、ある程度の力があったのは確か。そのうえで、このコース適性が生きたのだろう。穴馬を狙うなら、ポイントとなるのはここだ。

 今年、その候補として浮上するのは、ヤマカツエース(牡4歳)とマリアライト(牝5歳)である。

 ヤマカツエースは今年だけで重賞2勝を挙げて、マリアライトにいたっては上半期のグランプリ、GI宝塚記念(6月26日/阪神・芝2200m)で牡馬一線級を退けてGI2勝目を飾っている。どちらも、十分な実力の持ち主だ。

 そして、カギとなる"コース適性"が2頭とも抜群。ヤマカツエースは重賞通算4勝のうち、ふたつが中山でのもので、マリアライトもこれまでに中山で2勝している。なお、マリアライトは昨年の有馬記念にも出走し、大外16番枠からのスタートとなったが、コンマ1秒差の4着と健闘。舞台との相性がいいからこその結果だろう。

 にもかかわらず、ヤマカツエースはGIでの好走実績がなく、マリアライトは直近のレースぶりが芳しくないため、人気落ちは必至。「穴馬」として、絶好の狙い目となる。特殊なコースで人気馬が苦戦するようなら、コース攻略に長けた2頭が大金星を挙げてもおかしくない。

 一方、別の観点からも穴馬候補を探してみたい。

 ここ最近の有馬記念を振り返ってみると、道中のペースが極端になるケースが多い。超スローペースになるか、タフなハイペースになるか、どちらかに偏っている。

 極端なペースになれば、当然波乱が起こる要因となる。

 例えば、2011年は6着までが上がり33秒台をマークする超スローとなり、2着に7番人気のエイシンフラッシュ、3着に9番人気のトゥザグローリーが飛び込んできた。いずれも、切れ味に秀でたタイプだった。

 また、ダイワスカーレットが逃げ切った2008年は、1000m通過が1分を切るハイペースとなった。その結果、勝ち馬を追いかけた有力馬たちは最後に脚色が鈍って失速。最後方に待機していた最低14番人気のアドマイヤモナークが2着に突っ込んできた。

 今年も、そうした極端なペースになる可能性は高い。キタサンブラックがハナを切れば、ジャパンカップ同様、ゆったりとした流れになるかもしれないし、マルターズアポジー(牡4歳)やサムソンズプライド(牡6歳)といった伏兵が大逃げを打てば、タフなレースに変貌するかもしれない。

 ということは、過去のレースと同じく、伏兵が台頭する可能性は大いにある。ならば、狙うはスローでの切れ味勝負と、ハイペースでの後方待機策の両方に対応できる馬だ。

 今年のメンバーで候補を挙げるなら、ミッキークイーン(牝4歳)とデニムアンドルビー(牝6歳)だろう。どちらも、上がり33秒台をコンスタントにマークする切れ者であり、後方から追い込むタイプと言える。

 双方のうち、今回はミッキークイーンに狙いを絞りたい。

 今年はまだ勝ち星がないが、いずれも2、3着としっかり優勝争いに加わっている。そもそも春の敗戦は、1600m戦という決して得意ではない舞台でのもの。前走のGIエリザベス女王杯(3着。11月13日/京都・芝2200m)にしても、6カ月の休み明けだった。それを踏まえれば、むしろよく走っており、今回がやっと、彼女が結果を出せるベストな条件がそろったと言える。

 もともと2015年の牝馬二冠(オークス、秋華賞)を達成した世代の"女王"。前述のダイワスカーレットや、2014年の勝ち馬ジェンティルドンナも、3歳時に牝馬三冠で活躍した馬で、そうした実績を持つ牝馬たちが有馬記念で躍動することは少なくない。

 今年の戦績から、今回はおそらく上位人気にはならないだろう。そうした気楽な立場となって、ミッキークイーンらしい切れ味が炸裂。久しぶりの美酒を味わっても不思議ではない。

 近年、混合GIで牝馬が優勝するケースが増えている日本競馬界。人間の世界でも「女の時代」と言われる中、競馬界もその傾向がますます強くなっている。

 加えて、有馬記念は世相を映すレースとも言われる。思えば、今年のリオデジャネイロ五輪では、女性アスリートの活躍が目立ち、彼女たちが多くメダルを獲得し、人々に感動を与えた。そうした世の中の流れを踏んで、有馬記念でも優秀な牝馬たちが強豪牡馬を一蹴し、感動的なフィナーレを飾ってくれるかもしれない。

 今年のクリスマスは、美しく、強い牝馬たちからの、懐温まるプレゼントを期待したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara