2017年3歳クラシック
■Sportivaオリジナル番付(牡馬編:第1弾)

 今年の中央競馬も、残すところあと2週。先週は、2歳女王の座を争うGI阪神ジュベナイルフィリーズが行なわれ、ソウルスターリング(牝2歳)が人気に応えて完勝。世代最初のGIタイトルを、怪物フランケルの初年度産駒が手にした。

 そして、今週も注目されるのは、フランケル産駒のミスエルテ(牝2歳)。通常なら、2歳の「牡馬チャンピオン決定戦」となるGI朝日杯フューチュリティS(以下、朝日杯FS。12月18日/阪神・芝1600m)に牝馬が果敢に挑んできた。その分、例年以上に注目を集める同レースだが、ここでは先週の2歳牝馬に続いて、来春のクラシックを目指す2歳牡馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表したい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、来春のクラシックを目指す2歳牡馬の、現時点における実力・能力を分析しランキング付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。注:あくまでも来春のクラシックの有力馬を占うもので、朝日杯FSの予想ではありません。

 今年の2歳牡馬は、豊作の牝馬に対して「小粒」と言われている。これまでに9レース行なわれた牡牝混合2歳重賞のうち、3つのレースで牝馬が勝利。重賞勝ち馬も、続けて好走しているのが、ブレスジャーニー(牡2歳/父バトルプラン)ぐらいしかいないからだ。

 そうした状況の中、1位になったのは、そのブレスジャーニー。GIIIサウジアラビアRC(10月8日/東京・芝1600m)と、GIII東京スポーツ杯2歳S(11月19日/東京・芝1800m)を制した世代唯一の重賞2勝馬だ。ただ、父がバトルプラン、母父がタニノギムレットと、どちらかと言えば、地味な血統。その分、実績の割にはやや低いポイントとなった。

●木南友輔氏(日刊スポーツ)
「新馬戦の"鬼脚"で能力の片鱗を見せ、2連勝を飾った重賞はともに完勝でした。馴染みは薄いかもしれませんが、父バトルプランはエンパイアメーカー産駒でスピードのある血筋。母系も、エアグルーヴやアドマイヤグルーヴ、ドゥラメンテでお馴染みの、ダイナカールにつながる文句なしの血統です。体型には緩さを残しており、まだまだ成長力もあると見ています。始動戦がどこになるかわかりませんが、皐月賞までは距離も大丈夫。このまま"人気にならない主役"として、突き進んでほしいですね」

●土屋真光氏(フリーライター)
「超大物との対戦がなく、東スポ杯2歳Sの勝ちタイムも過去と比べて物足りなさを感じますが、きちんとチャンスをモノにしている能力は評価すべき。また、父系はときに説明のつかない大物を出すエンパイアメーカー。父バトルプランも、故障がなければもっと実績を残せた馬。この馬を契機にして、種牡馬としての評価が上がってもおかしくありません。母系も日本の競馬を支えた活力ある血統。地味に見えて、凄い馬になる可能性は十分あります。3歳前半までの、キタサンブラックのようなイメージがありますね」

●本誌競馬班
「重賞2勝の実績を素直に評価します。東スポ杯2歳Sでは、評判馬2頭を蹴散らして快勝。実力の高さを証明しました」

 2位は、デビュー2戦2勝のサトノアーサー(牡2歳/父ディープインパクト)。昨年のセレクトセールで1億9500万円(税別)で取引された良血馬だ。母は海外GIを制したキングスローズ。朝日杯FSへの登録はせず、すでに来春のクラシックに照準を絞っている印象だ。

●吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「新馬戦は先に抜け出したスズカフロンティアを、ゴール直前に執念でとらえて同着V。そこで勝ったことによって、ゆとりのあるローテンションが組めるようになりました。そして、2戦目のシクラメン賞(12月4日/阪神・芝1800m)では、直線で仕掛けられると一気にトップギアに入って、最速上がりの32秒7をマークして圧勝。2カ月ぶりのレースながら、体脂肪の少ない体を作れるのは素質の高さ。前後肢のバランスがいい筋肉質の馬体には好感が持てました。実戦では折り合いのつく前向きさがあって、毎年クラシックを賑わしている池江泰寿厩舎所属となれば、今後の活躍にも期待が持てます」

●木南氏
「道悪の初戦とは、まったく別のレースを見せたシクラメン賞。柔軟性のあるフォームで、最後に見せた32秒台の決め手も素晴らしかったです。母父リダウツチョイスという短距離系に、ディープインパクトという配合。そうした組み合わせは、今年のダービー2着馬で、菊花賞を制したサトノダイヤモンドと一緒。パフォーマンスを見ても距離の心配はありませんし、来春のクラシックが楽しみな1頭と言えるでしょう」

●本誌競馬班
「シクラメン賞の勝ちっぷりが圧巻でした。大物感が漂う走りも魅力」

 3位には、こちらも新馬、500万条件とデビュー2連勝のレイデオロ(牡2歳/父キングカメハメハ)が入った。条件戦とはいえ、皐月賞と同じ中山・芝2000mの舞台で快勝した点が高く評価されたようだ。

●木南氏
「葉牡丹賞(12月3日/中山・芝2000m)は、強敵がいなかったにしても、他馬が止まって見えるような末脚には痺れました。祖母はディープインパクトの姉でデビュー5連勝を飾ったレディブロンド。その血に、同馬も管理していた藤沢和雄調教師は燃えています。これまで手綱を取ってきたルメール騎手がそのまま継続してコンビを組むようなら、同じく藤沢調教師が管理する阪神JFの勝ち馬ソウルスターリングが牡馬クラシックを目指す必要もないでしょう。そのためにも、ポイントとなるのは、府中でも弾けるかどうか」

●市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「葉牡丹賞を勝って2戦2勝。私のタイムフィルター指数(※市丸氏が独自に編み出したデータ指数)では3位タイです。ただ、葉牡丹賞は残り800m辺りから速くなるレース展開で、後方待機がはまった印象もあります。正直、もう一戦見てから、その能力を見定めたいところです」

 4位には、1勝馬のムーヴザワールド(牡2歳/父ディープインパクト)が入った。全姉は、重賞勝ち馬タッチングスピーチという良血。秘めた素質で言えば、上位3頭にも引けを取らない。

●吉田氏
「超ハイレベルの新馬戦では、ソツのない立ち回りと、狭いところをこじ開ける根性を見せて、良血エアウィンザーを競り落として快勝しました。2戦目には、いきなり重賞の東スポ杯2歳Sを選択。その時点で、陣営は相当な手応えをつかんでいたのでしょう。結果は、タイム差なしの3着。2戦目の重賞でそれだけの成績が残せるのも能力があってこそ。もう少し時間が経てば、秘めたポテンシャルをフルに発揮してくれると思います。母父サドラーズウェルズ、父ディープインパクトという配合で、500kgを超す雄大な馬体の持ち主。この馬が世代屈指の能力があることは、ここ2戦のパドックやレースで十分に感じました。あとは、タービーまでにどこまで完成度を上げられるかが勝負。ジェンティルドンナを育てた石坂正厩舎の日迫真吾助手の手腕と、同馬の将来性を買って、私は1位に評価しました」

 5位に入ったのは、GIII京都2歳S(11月26日/京都・芝2000m)を勝ったカデナ(牡2歳/父ディープインパクト)。これまで4戦して2勝、2着2回と安定した成績を残している。

●市丸氏
「不利もあって、2着に敗れた百日草特別(11月6日/東京・芝2000m)までは、それほど突出した能力を示していたわけではありませんでした。しかし、京都2歳Sではスローの流れの中、じっくり後方で待機すると、1頭だけケタ違いの瞬発力を披露しました。京都の軽い馬場が合っているのかもしれませんが、今年のディープインパクト産駒の中では、今のところナンバー1の存在と言えるでしょう。今後は、東京や中山の直線の坂をどう克服していくかが、勝利へのカギとなってきます」

 ベスト5のうち、重賞勝ち馬は2頭にとどまり、将来性を買った評価が今回はランキングに反映されたようだ。また、今回の牡馬ランキングでは評価が大きく割れたこともあって、ランク外でも高評価を得ていた馬が何頭もいる。エアウィンザー(牡2歳/父キングカメハメハ)、ヴァナヘイム(牡2歳/父キングカメハメハ)、ダンビュライト(牡2歳/父ルーラーシップ)らがそうだ。

●吉田氏
「エアウィンザーは、新馬戦では人気を背負って中団から外を回る安全策の競馬。そのため、ルメール騎手騎乗のムーヴザワールドに内から差されてしまいましたが、それはあくまでも展開のアヤ。ムーヴザワールドとの実力差は決して大きくないと思います。ひとつ上の全兄が、今年の牡馬クラシックで善戦してきたエアスピネル。体型や、少し内向気味の走法からマイラー色が強いと判断していましたが、常に距離不安を囁かれながらも掲示板を外していないのは立派。その兄より、エアウィンザーはきれいなフォームで走り、馬体のシルエットから距離の融通がありそうなのは心強い限り。兄に負けず劣らず、いやそれ以上の素質馬かもしれません」

●市丸氏
「1位に評価したカデナが勝った京都2歳Sで2着に入ったヴァナヘイムが、私の指数では2位でした。エアグルーヴの孫で、キングカメハメハ、ディープインパクト、トニービン、ノーザンテーストと、日本の大種牡馬たちが血統表に顔を出す豪華絢爛の血筋。現時点では勝ち味に遅い感じがしますが、今後成長するにつれて、大化けする可能性を秘めています」

●土屋氏
「2戦1勝、2着1回のダンビュライト。消化した2戦はいずれも水を含んだ馬場で、飛びの大きいこの馬にとってはマイナス材料でした。それでいて、ともに好走していますから、良馬場ならどこまで走るのか、非常に楽しみです。父ルーラーシップ同様の成長曲線を描いていってほしいです」

 週末の朝日杯FSでは、今回ランキング入りしなかった馬たちがこぞって参戦。はたして、注目のミスエルテを下し、来春のクラシック候補に名乗りを上げる馬が出てくるのか。レースの行方をじっくりと見守りたい。

text by Sportiva