そもそも部位が複雑化しているため、注文の仕方がよくわからない!

希少部位、赤身肉、塊肉、熟成肉。次々とブームを生み出す焼き肉業界はここ数年、空前の焼き肉バブルと言えます。人気焼き肉店に至っては、数カ月待ち予約も当たり前のようになっておきており、予約困難店の予約=プラチナチケットと表現しても過言ではありません。

私は平均して週2回のペースで東京都内のさまざまな焼き肉店を訪店しています。予約困難店を含め、100店舗以上を訪店しており、その動向について独自研究しています。「焼き肉店の部位メニューが細分化された理由」でも指摘したように、ブームの発端となる部位の細分化が進む一方、焼く前の注文の仕方も難しくなってきていると思えてなりません。


間違って同じような部位ばかりを注文してしまう!?

実は以前、訪れた焼き肉店で、隣の席のお客さんが注文するところに遭遇しました。さまざまな部位を楽しむ意味合いで、「いろんな食感の部位を試したいので、シンシン、亀の甲、トモサンカク」を注文されていました。名前からすると、珍しいので違う部位を注文されたと思うかもしれませんが、実は3つの部位とも後ろ足の付け根、内モモより下の内側にある球状の部位であるシンタマの部位です。つまり、いろんな食感どころか、同じような部位ばかりを注文されていたのです。

「そもそも部位が複雑化しているので、注文の仕方がよくわからない」という周囲の声を多く耳にします。そこで、今回は焼く前の今さら聞けない注文の作法を解説しましょう。注文の作法については、『神戸びいどろ』を展開するイデアコーポレーションの山本雅幸営業本部長のインタビューをベースにしました。


最初にタン塩の意味


「とりあえず、タン塩で」

まずは、ファーストオーダーの鬼定番は、タン塩です。焼き肉店に行って最初にタン塩を頼む人は多いでしょう。そもそもこれに意味はあるのでしょうか。

焼肉革命(角川新書)」によれば、タン塩は40年前、叙々苑の1号店、六本木本店からスタートしました。食肉業者の提案から生まれたメニューがタン塩で、顧客であるホステスの提案で誕生したのが、タン塩をレモンで食する方法です。

同書によれば「何か新しいメニューを」というタン塩のメニュー開発なので、特にファーストオーダーを意識した位置付けではなかったようです。ただし、タン塩は、味がタンパクで食感を楽しめる部位なので、味の濃い肉やタレ肉の後に食べると、確実に味の印象が薄れます。だから最初に塩でオーダーするには理にかなっている部位と言えます。


ファーストオーダーは鬼定番のタン塩で

ファーストオーダーは鬼定番のタン塩で、決定しましょう。タンは食感としては非常に楽しいのですが、実は肉の味としては、それほど主張してこないので、レモン塩でさっぱり食べてスタートするのは、これから焼肉を楽しむ準備として、最適でしょう。



タン塩の後は、何を選ぶ?

問題はここからです。サシの入ったお肉を選ぶのか、赤身を選ぶのか、またそれ以外を選ぶのか? タン塩の次に選ぶ部位によって、おのずと注文するルートが変わってきます。そう考えると、ある程度注文のルートは、パターン化されてきます。部位を大きく、5つにわけ、オーダーする順番をご提案しましょう。

「注文の作法と前提」

1. 大きくは以下に分類します。
.織
▲ルビ
ロース
だ嵜
ゥ曠襯皀

2. 同じ部位でも塩とタレは分類します。

3. 今回は5つに分類した詳細の部位として「タン」と「ホルモン」は単体、「カルビ」は三角バラ、カイノミ、「ロース」は座布団、クラシタ、「赤身」はイチボ、トモサンカクで設定します。

4. 味の薄い塩肉 → 味の濃いタレ肉の流れを基本とします。

注文のセオリーからすると、まずは味の薄い塩味からです。単純ですが、タレ味を最初に注文すると、次に塩味を注文した時に、味が薄く感じるので、印象が薄れるからです。次に考慮すべきは、肉の脂質になります。脂質の多い順 → 少ない順と、脂質の少ない順 → 多い順への注文の展開が食感と味のなじみやすさになります。


お肉の違いと脂の違いを楽しみたい!



店としては、食べるなら最初は脂物からを想定しているそう

つまり、カルビ系 → ロース系 → 赤身肉系あるいは、赤身肉系 → ロース系 → カルビ系の順番です。ただ、脂質の少ない順 → 多い順への注文で食べると、量にもよりますが、最後に脂が厳しくなります。

塩タンの次には、三角バラから食べて、お肉の違いと脂の違いを楽しんで欲しいものです。カルビ系→ロース系→赤身肉系の塩味から始めるパターンをオーソドックス、反対に赤身肉系→ロース系→カルビ系の塩味から始めるパターンをオーソドックスと反意のヘテロドックスとします。

イデアコーポレーションの山本雅幸営業本部長はこう解説します。

「お店の意見としては、名物の階段盛りに関しては階段の高い位置から、脂質の多い順 → 資質の少ない順番に部位を楽しんで頂けるよう並べています。食べるなら最初は脂物からを想定しております。

ただ、お客さんを見ていると、三角バラ → イチボ → ザブトン → クリミ → ミスジと、脂→ 赤身 → 脂 → 赤身と脂の多い部位、少ない部位を交互に食べられるお客さんを見かけます。こういう交互に食べ比べられるお客さんは通だと思いますね。

肉の違い、脂の甘さ、食感の違いを味わうには、交互に食べる方が味の違いがわかりやすく、食感の違いを楽しみながら食べられます。やっぱり、楽しみながら食べるのが通だと思います。三角バラの次に赤身を入れる方が、脂と違いと食感は感じやすい。

オーダーでも同様ですが、このような流れを意識してオーダーするほうが通だと思います。肉を単に焼いて食べるより、違いを楽しむことに面白みをもって食べてくれるとうれしいです」

次にタレで、カルビ系 → ロース系 → 赤身肉系。あるいは、赤身肉系 →ロース系、カルビ系。あとはホルモンをどこに注文を入れていくかを考えます。ホルモンミックスをオーダーすると、胃のセンマイ、ミノ、ギアラ、ハチノスが含まれているケースは多い。

同じ胃でも資質、食感はバラバラで楽しむことができる。塩物の最後に塩ホルモンを、タレ肉の最後にタレホルモンというパターンもありますし、塩肉とタレ肉を終えてから、まとめてホルモンミックスというパターンもあります。


「ファーストオーダーへの新提案」

ファーストオーダーはタン塩をオーダーされる方が多いです。私もその一人です。今は牛枝肉が高騰しており、タンそのものも需要が高く、高騰しています。一方で、部位の再定義がされ、部位の種類が豊富になってきています。『焼肉革命』によれば、タン塩がメニュー開発された40年前にもファーストオーダーにするべく、理論的な意味はなかったようです。


違いを楽しみながら食べられる順番とは



必ずしも高騰するタンでなくてもいい。鮮度の高いハツもオススメ

そう考えると、何もスターターはタン塩にこだわらずにさっぱりと頂ける部位であればいい。「焼き肉なんざぁ、好きにオーダーして食わしてくれよ」というもっともなご意見もあると思いますが、一方でおいしく違いを楽しみながら食べられる順番はあるべきです。

焼き肉とは、肉本来の味を塩やタレで楽しむものではありますが、一方で食感の違いを楽しむものでもあります。そう考えるとファーストオーダーは、必ずしも高騰するタンでなくてもいいわけです。私は最近、鮮度の高いハツがあれば、ファーストオーダーするようにしています。

鮮度の高いハツを見分ける方法は、切り口が緩んでいない、エッジが効いているハツです。ハツはホルモンに分類されますが、塩やレモンに合い、食感も独特なので、変化のあるファーストオーダーとしても適している部位です。固定化されたファーストオーダーへの風穴を十分に開けられる存在だと思います。


類似する焼き肉屋と寿司屋のオーダーセオリー

意外に思うかもしれませんが、焼き肉のオーダーは、すし屋ですしをオーダーするセオリーと似ています。味の薄いネタから、味の濃いネタへ。味の濃いネタを食べてしまうとその後のネタの味がわからなくなるからで、白身魚のヒラメやタイから注文をスタートする人も多いです。

また、コハダのような酢締めのネタもファーストオーダーにするケースもあります。コハダは一般的に板前さんの力量を見る意味合いもあると言われていますが、酸味のあるネタからさっぱり始めたいという、寿司好きのセオリーなのかもしれません。この辺りは、レモンで食べるタン塩と考え方は似ています。

お肉を塩で食べる場合も、味の薄い部位から、味の濃い部位へ。そこからタレ味のお肉を食べるのがいいでしょう。たまたまかもしれませんが、焼肉バブルの現状、もともと名店で修業をした人がのれん分けして、展開する店が増加してきています。部位の注文セオリーも似ていますが、このあたりののれん分けの状況も寿司と焼肉店は類似しています。

牛枝肉の目利き、タレの作り方、肉の切り方、肉の焼き方でおいしさが変わる焼肉も今や、職人技と言えるからだと分析しています。職人のなせる技から考えると、焼き肉と寿司がオーダーのセオリーとして類似してきてもまったく違和感はありません。そう考えると焼き肉も細分化して部位が豊富となっている今、食文化としての位置づけも、すしに近い存在になってくるのかもしれません。


著者
小関 尚紀:リーマン作家/MBA

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