■2017年3歳クラシック
Sportivaオリジナル番付(牝馬編:第1弾)


 秋のGIシリーズは早くも冬を迎えて終盤戦。今週は、2歳女王決定戦となるGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月11日/阪神・芝1600m)が開催される。いよいよ来春のクラシックを目指す若駒たちの、熾烈な争いが本格化していくこととなる。

 そこで今年も、その争いに挑む若駒たち、まずは2歳牝馬の『Sportivaオリジナル番付(※)』を発表していきたい。
※『Sportivaオリジナル番付』とは、デイリー馬三郎の吉田順一記者、日刊スポーツの木南友輔記者、独特なデータを駆使するパソコン競馬ライターの市丸博司氏、フリーライターの土屋真光氏、Sportiva編集部競馬班の5者それぞれが、来春のクラシックを目指す2歳牝馬の、現時点における実力・能力を分析しランキング付け。さらに、そのランキングの1位を5点、2位を4点、3位を3点、4位を2点、5位を1点として、総合ポイントを集計したもの。注:あくまでも来春のクラシックの有力馬を占うもので、阪神JFの予想ではありません。

 今年の2歳戦線、とりわけ牝馬は「豊作」と言われている。これまで行なわれた2歳重賞を振り返っても、新潟2歳S(8月28日/新潟・芝1600m)のヴゼットジョリー(父ローエングリン)、小倉2歳S(9月4日/小倉・芝1200m)のレーヌミノル(父ダイワメジャー)、さらにデイリー杯2歳S(11月12日/京都・芝1600m)のジューヌエコール(父クロフネ)と、牡馬相手に牝馬が勝ち名乗り。その他、オープンや条件クラスの牡馬混合戦でも、牝馬が勝利を飾っているレースが数多く見られる。

 また、牝馬限定の重賞でも、アルテミスS(10月29日/東京・芝1600m)ではリスグラシュー(父ハーツクライ)が、ファンタジーS(11月5日/京都・芝1400m)ではミスエルテ(父フランケル)が、評判どおりの強さを見せて快勝。来年のクラシックに向けて、逸材がゴロゴロいるといった状況だ。

 そんなハイレベルな2歳牝馬にあって、1位となったのはミスエルテ。父は近年の欧州最強馬の1頭で、その初年度産駒から"大物"が出てきた印象だ。デビュー2連勝を飾って、それぞれのレースで出色のパフォーマンスを披露。2歳のGI戦では牝馬同士の戦いではなく、牡馬混合の朝日杯フューチュリティS(12月18日/阪神・芝1600m)へと向かうほどの"器"だ。

●市丸博司氏(パソコン競馬ライター)
「馬なりで後続を2馬身突き離した新馬戦、後方から軽めに追われただけで、1頭だけ次元の違う脚を見せて突き抜けたファンタジーSと、デビュー2戦を見て、ケタ違いの印象を受けました。この馬なら、牡馬相手でもかなりやれると思いますが、実際に牡馬相手にどんな競馬を見せるかで、この世代の牝馬、牡馬それぞれのレベルがある程度わかってくるのではないでしょうか。そして、その結果によって、来春のクラシックがますます楽しみになると思います」

●吉田順一氏(デイリー馬三郎)
「パドックでは終始2人引きで、チャカチャカする仕草を見せて、フランケル産駒らしい勝ち気な面があります。また、デビュー戦から6kg減のファンタジーSでは、腹回りやトモを寂しく見せ、テンションも少し高くなっていました。それでも、一気にトップギアまで上げる鋭い反応と、搭載エンジンの違いを感じさせる爆発力を披露して完勝。危うい気性を踏まえても、その高い能力は魅力です。底知れぬポテンシャルを評価すれば、当然の1位です」

●土屋真光氏(フリーライター)
「スタートで出遅れて、『やらかした!?』と思ったファンタジーSが、そこから余裕すら感じさせる切れ味を発揮して差し切り勝ち。"怪物"フランケルの遺伝子が強く伝わっている印象を受けました。そもそもフランケル自身、3歳までは折り合いに苦労していながら、それを凌駕する能力の持ち主でした。ミスエルテも同様の成長曲線を描くと考えれば、当然期待は高まります」

 2位は、同じくフランケル産駒のソウルスターリング。重賞勝ちこそないものの、ここまで2戦2勝。母も欧州GI戦線で活躍したスタセリタで、血統的な奥行きも感じさせる。

●木南友輔氏(日刊スポーツ)
「春の時点では、社台ファームの吉田照哉代表も『お母さんが長いところで結果を出してきた馬だから、(活躍するのは)秋以降』と話していました。それが、夏の札幌から好発進。ボンギュッボンとグラマラスな馬体で、これからどう進化していくのか、非常に楽しみです。英国中心に好スタートを切ったフランケル産駒は、今や世界中の2歳戦線で好結果を出しています。3歳になってからも注目したい馬です」

●吉田氏
「アイビーS(10月22日/東京・芝1800m)で、関西牡馬の有力どころであるペルシアンナイト(牡2歳)を一蹴。力があることは間違いありません。同じフランケル産駒のミスエルテより、20kgほど馬体は大きいのですが、そのシルエットからは同様の風格を感じます。薄手に見えながら、付くべきところに筋肉が付いていて、気合いを前面に出すタイプ。やや破折(はせつ)気味の脚元は、フランケル産駒の特徴で気にすることはないでしょう。1800m戦を難なくこなし、馬体や走法から見ても、距離の融通性はミスエルテよりもありそうです」

 3位は、好メンバーがそろったアルテミスSを制したリスグラシュー。ディープインパクト産駒の評判馬フローレスマジックとの一騎打ちは見応えがあった。

●木南氏
「この2歳世代で好調なハーツクライ産駒。そのなかでも、筆頭と言えるのはこの馬。2戦目のレコード勝ちは、後続をぶっちぎる圧巻の走りでした。アルテミスSも、期待馬フローレスマジックを退け、見事な勝利でした。姉たちのレースぶりから、血統的には短いところが主戦場。今後、どう変わっていけるかが、(クラシックでも活躍できるかどうかの)ポイントになりそうです」

●市丸氏
「新馬で敗れたのがもったいなかったですが、続く2戦目は完勝。アルテミスSでは、良血フローレスマジックと2頭が抜けた存在であることを強烈に印象づけ、しかも勝ち切ったのが素晴らしい。阪神JFをあっさり勝つようだと、クラシック制覇も見えてきます」

 4位に入ったのは、500万条件の百日草特別(11月6日/東京・芝2000m)を勝ったアドマイヤミヤビ(父ハーツクライ)。百日草特別で2着に退けたカデナ(牡2歳)がその後、GIIIラジオNIKKEI杯京都2歳S(11月26日/京都・芝2000m)を快勝し、一段と評価が高まった。

●吉田氏
「馬格のあるハーツクライ産駒ですが、重苦しさはなく、前後のバランスがいい。しかも、走ることに前向きな馬。それでいて、レースに行くと、オンとオフの切り替えができるタイプで、馬込みでも我慢が利いて、仕掛けからのギアチェンジがスムーズです。この時期の牝馬が、牡馬相手に2000mの特別競走を勝つのは、『重賞レベル』と言っても過言ではありません。百日草特別では来年のオークスが楽しみになるパフォーマンスを見せてくれました。1600m戦の未勝利を勝った内容もよく、マイル戦の桜花賞でも上位の力量が示せると見ています」

 5位は、アルテミスS2着のフローレスマジック。全姉が2014年のエリザベス女王杯を制したラキシス、全兄が重賞2勝で、現在もマイル戦で活躍するサトノアラジン(牡5歳)という超良血馬だ。残念ながら、2歳GIへの出走は見送られたが、来春のクラシックに向けて万全を期したものと見られる。

●木南氏
「兄姉にいるのがラキシス、サトノアラジンなどと、血統的には奥手のタイプ。阪神JFを見送ったのは、完調ではない中でアルテミスSを好走し、その反動が出たのではないかと思います。現時点では線の細さを感じますが、柔軟性に富んだフットワークは兄姉らと同じ。管理するのは、牧場との連携を密に取って、大事に馬を育てる木村哲也厩舎。その手腕に期待しています」

 意外にも、牡馬混合の重賞勝ち馬であるヴゼットジョリー、レーヌミノル、ジューヌエコールはランク外となったが、それぞれに高い評価を推す声もあがっている。

●土屋氏
「父ローエングリンや、その代表産駒であるロゴタイプは、どちらかと言えば、平均ペースの中、早めに抜け出して押し切るタイプですが、ヴゼットジョリーは、スパッとギアを切り替えられ、なおかつ最後まで切れる脚を使えるタイプ。新潟2歳Sのレース自体があまり高く評価されていないようですが、この馬自身のパフォーマンスは秀逸だったと思います」

●市丸氏
「レーヌミノルは、小倉2歳Sが強すぎました。6馬身差の圧勝は、逆に距離不安をうかがわせるレース結果になってしまったと思います。そのうえ、距離が伸びた京王杯2歳S(11月5日/東京・芝1400m)で、牡馬相手とはいえ、2着に敗れてしまったことが、一層印象を悪くしてしまいました。しかし、この馬の先行力はこの世代ではかなりのもの。先頭で4角を回っていけば、マイル戦でも相当粘れるのではないでしょうか」

●吉田氏
「ジューヌエコールは、クロフネ産駒らしいパワーを感じさせる490kgの馬体。デイリー杯2歳Sで良馬場の瞬発力勝負に対応したことで、単なるパワータイプではないことを証明しました。(母父)アグネスタキオンの肌にクロフネというのは、ロマンを感じさせる同期配合。このニックスで柔らかいつなぎの子が出たのは、結構レアかもしれません。精神面がドシッとしており、使うごとに馬体も締まって、競馬の幅が出てきました。それこそ、センスのよさがなせるわざ。おかげで、爆発力では上位陣にやや見劣る印象はあっても、持ち味のスピード持続力を駆使して3連勝。その結果には、納得です」

 期待の膨らむ実力馬がズラリとそろう2歳牝馬。来春のクラシックを占ううえでも、まずは2歳女王決定戦の行方を注視したい。

text by Sportiva