■厳選!2歳馬情報局(2016年版)第28回:サトノクロニクル

 競馬界最高峰の舞台となるGI日本ダービー(東京・芝2400m)。この祭典では、過去に数々の物語が生まれている。

 その中のひとつに、「2着となった兄の借りを、弟が返す」という感動的なストーリーがある。

 実際に実現したのは、三冠馬ナリタブライアンである。1993年の日本ダービー、兄ビワハヤヒデは惜しくも2着に敗れて涙を飲んだが、その翌年のダービーで、ナリタブライアンは2着に5馬身差をつける圧勝劇を披露。まさに歴史に刻まれる豪快な勝利を飾って、兄の雪辱を果たした。

 今年の2歳馬の中でも、その物語の再現を狙う馬がいる。栗東トレセン(滋賀県)の池江泰寿厩舎に所属するサトノクロニクル(牡2歳/父ハーツクライ)である。

 兄は、2015年のダービーで2着となったサトノラーゼン(牡4歳/父ディープインパクト)。2歳夏にデビューしたあと、トントン拍子の出世とはいかなかったものの、3歳春に500万下特別、GII京都新聞杯(京都・芝2200m)と連勝を決めて、見事ダービーへと駒を進める。が、本番ではドゥラメンテの豪脚に屈して2着に終わった。

 弟のサトノクロニクルは、この兄が届かなかったダービー制覇を目指してデビューすることとなる。もちろん、競馬に携わる誰もが夢見る舞台ゆえ、それを達成することは決して簡単なことではない。しかし、陣営からはその快挙を期待させるほど、高い評価が漏れてきているという。関西競馬専門紙のトラックマンがその様子を伝える。

「サトノクロニクルに対する池江厩舎の評価は、かなり高くて、間違いなく走ってくる1頭でしょうね。初めて長めから追い切った調教でも、水準以上の時計を出して、足取りもしっかりしていました。デビュー戦においても、ただ勝つことに終始するのではなく、課題を与えて臨むのではないでしょうか。それだけ、高いレベルのようです」

 今やトップ厩舎として数々の活躍馬を輩出している池江厩舎。そのスタッフたちが力を込めているとなれば、注目せずにはいられない。

 兄サトノラーゼンも管理している同厩舎。兄弟の比較ではどのように見ているのだろうか。先述のトラックマンが続ける。

「ラーゼンは3歳春になってようやく成績が上向いてきましたが、クロニクルに関しては『最初から動ける』とのこと。現段階では『兄より完成度が高い』と言っています。さらに、兄はジワジワと伸びるタイプでしたが、『弟はいかにもキレそう』と、スタッフからは歯切れのいいコメントがどんどん出てきます。カイ食いもよく、いたって順調。能力をきちんと出せれば、デビュー戦は確実に突破できるのではないでしょうか」

 注目のデビュー戦の予定は、12月18日(日)の2歳新馬(阪神・芝1800m)。鞍上は川田将雅騎手が務めるという。

 年の暮れが迫る中、続々とデビューしている素質馬。その中でも、サトノクロニクルはクラシックの最有力候補に名乗りを上げることができるのか。兄が果たせなかった大いなる夢実現へ向けて、初陣から圧巻の走りを見せてくれることを期待したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara