◆ダービージョッキー
大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 今週は東京のクラシックディスタンスを舞台にして、国内最高賞金(1着3億円)のレースであるジャパンカップ(11月27日/東京・芝2400m)が行なわれます。

 1981年に行なわれた第1回では、僕は当時まだデビュー2年目の減量騎手でした。にもかかわらず、騎乗チャンスをいただき、非常に貴重な経験をさせてもらいました(※ゴールドスペンサーに騎乗し、日本馬最先着の5着)。

 そのときは、外国馬と日本馬との間に大きな実力差を感じたものですが、近年のジャパンCは逆に、日本馬が上位を独占するレースが続いています。日本馬のレベルアップと同時に、本当に強い外国馬の参戦が減ってきたこともその理由だと思いますが、今年もその流れに変わりはなさそうですね。

 一方で、ジャパンCと言えば、秋の東京を締めくくる大一番にして、天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)、有馬記念(12月25日/中山・芝2500m)とともに、いわゆる秋の「古馬三冠」を構成するレースのひとつです。そのため、例年は天皇賞・秋からこのレースに臨む馬が中心となるのですが、今年は少し様子が違います。

 今年のメンバーで前走が天皇賞・秋だったのは、たったの2頭。勝ち馬のモーリスはさすがに2400mの距離が長いと見て香港に向かい、3着ステファノス、4着アンビシャスらも同様に、距離延長を考慮してジャパンC出走を見送ったようです。

 代わって人気を集めそうなのが、キタサンブラック(牡4歳)とゴールドアクター(牡5歳)です。前者は京都大賞典(10月10日/京都・芝2400m)から、後者はオールカマー(9月25日/中山・芝2200m)からジャパンCに直行してきました。

 これら2頭は、天皇賞・秋の2000m戦は「距離が短い」という判断だったのでしょうが、一流馬は秋の「古馬三冠」を戦うもの、という習慣は今や崩れつつあるのでしょうね。

 そうした状況にあっても、今回まず注目したいのは、王道路線となる天皇賞・秋から参戦してくるリアルスティール(牡4歳)です。正統派のローテーションにも好感が持てます。

 天皇賞・秋では7番人気と評価を落としていましたが、これは毎日王冠(10月9日/東京・芝1800m)を体調が整わず回避したという情報が、必要以上に悪い印象をファンに与えてしまっただけでしょう。結果的には2着と好走して、力があることを改めて証明しました。

 もともともクラシック戦線で主役の一翼を担い、この春にはドバイの地でGI制覇を飾った実力馬です。あれくらいは走れて当然、という見方もできますね。

 今回は、鞍上がミルコ・デムーロ騎手からライアン・ムーア騎手に替わります。これは、さらにプラス材料と言えるのではないでしょうか。なにしろ、ムーア騎手とのコンビでドバイターフ(3月26日/芝1800m)を快勝。念願のGIタイトルを手にしたわけですからね。

 安田記念(11着。6月5日/東京・芝1600m)では、気負って抑えが利かなくなってしまったように、我の強い馬。日本人騎手より、ガッチリと馬を抑え込める外国人騎手、特にムーア騎手のようなタイプが一番合うと思います。

 ムーア騎手と言えば、天皇賞・秋でも距離不安が囁かれたモーリスを完璧にコントロールし、直線では完璧に弾けさせました。今度は、そのとき2着だったリアルスティールをうまくエスコート。やや長いと思われている2400mの距離も克服させてくれるのではないでしょうか。人気になると思いますが、勝ち負けが期待できる有力な1頭です。

 今年の4歳世代は、このリアルスティールの他にも、前述のキタサンブラック、シュヴァルグラン(牡4歳)、そしてルージュバック(牝4歳)と有力馬がそろっていますが、それよりも気になるのは、今年の皐月賞馬ディーマジェスティ(牡3歳)。菊花賞4着からの巻き返しに注意が必要です。

 3歳牡馬三冠の最終戦となる菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)では、初めての関西圏でのレースや距離など、初モノづくしの競馬に戸惑った印象があります。しかし今回は、慣れた関東圏のレースで、この馬の決め手が生かされる東京が舞台です。

 ジャパンCと同じ条件で行なわれた日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)では3着でしたが、ゴール前で寄られて、外に出すロスがありました。あれがなければ、もっと際どい結果になっていたと思います。

 ダービー馬マカヒキは年内休養、菊花賞馬サトノダイヤモンドは有馬記念に向かうことが発表されています。ここでは、ディーマジェスティに3歳牡馬代表として、いい走りを見せてもらいたいですね。

 さて、今回の「ヒモ穴馬」には、5歳世代のサウンズオブアース(牡5歳)を取り上げたいと思います。

 僕がこの馬を評価しているのは、自在性があって、大崩れしないところ。その反面、確かに決め手を欠いて、どうしても勝ち切れない面があります。そこは課題となりますが、ここでも2、3着に飛び込んでくるだけの力は持っていると思います。

 昨年と同様、2400m前後の距離がベストと判断して、京都大賞典をステップにしてジャパンCに挑んできました。その京都大賞典ではいつもと比べて今ひとつのデキだったようですが、それでも僅差の4着。やはり強い馬です。上積みは、昨年以上に期待できそうです。

 鞍上は、ミルコ・デムーロ騎手。前述したとおり、天皇賞・秋ではリアルスティールを2着に導いて、さらに今年はすでにGI4勝を挙げています。まさに"GI請負人"と言える活躍で、大舞台での勝負強さが際立っています。

 昨年は同じコンビで5着にとどまりましたが、今年は鞍上の勢いも手伝って、もうひと押しがあってもいいのでは? と思っています。人気馬に割って入る奮闘を期待したいですね。

大西直宏●解説 analysis by Onishi Naohiro