秋競馬のハイライトを彩るGIジャパンカップ(11月27日/東京・芝2400m)。有力3歳馬、さらには海外招待馬3頭を交えた国際競走は、能力比較の難しい一戦だ。

 おそらく実績面から有力視されるのは、GI馬4頭だろう。昨年のGI菊花賞(2015年10月25日/京都・芝3000m)と今年のGI天皇賞・春(5月1日/京都・芝3200m)を制したキタサンブラック(牡4歳)に、昨年のGI有馬記念(2015年12月27日/中山・芝2500m)の覇者ゴールドアクター(牡5歳)、海外GIのドバイターフ(3月26日/UAE・芝1800m)を勝ったリアルスティール(牡4歳)、そして今年のGI皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)を快勝したディーマジェスティ(牡3歳)だ。

 ほかに、近年「出世レース」となっているG競▲襯璽鵐船鷆ο孫馭奸11月6日/東京・芝2500m)の勝ち馬シュヴァルグラン(牡4歳)あたりも、上位人気に加わってきそうだ。

 5頭それぞれが違う臨戦過程をたどっており、その優劣を見極めるのさえ難解なレースとなっている。そこで、ジャパンCの歴史を手がかりにして、その結末を占っていきたい。

 過去10年の勝ち馬だけを見ると、極めて「波乱の少ない」レースであることがわかる。6番人気以下の伏兵が勝利したのは、2008年に9番人気で制したスクリーンヒーローのみ。各馬が調子を上げる秋シーズンの真っ只中にあって、ごまかしの利かない東京・芝2400mという舞台で行なわれるため、有力馬が実力どおりの力を発揮して、番狂わせが起こりにくいのだろう。

 そうした状況のなか、過去10年の3着馬にまで広げて見ると、3歳馬が奮闘していることに目がいく。例えば、2010年はブエナビスタが降着(2着)したものの、1着ローズキングダム、3着ヴィクトワールピサと、2頭の3歳馬が馬券に絡んだ。

 さらに2012年には、3歳牝馬のジェンティルドンナが、"怪物"オルフェーヴルを下している。また、高配当を演出した3歳馬も多く、6番人気で3着に入った2009年のレッドディザイア、7番人気で2着となった2013年のデニムアンドルビーらが、そのいい例だ。

 10年間の総数で見れば、もちろん上位を占めるのは古馬のほうが多い。だが、3歳馬の参戦はそもそも少なく、ここで古馬と初めて対戦するケースがほとんど。そのなかで、これだけの成績を残しているのなら、まずは3歳馬に狙いを定めてみるのは悪くない。

 勝ち馬として期待するなら、ディーマジェスティだ。

 秋初戦のGIIセントライト記念(9月18日/中山・芝2200m)を快勝し、GI菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)では、1番人気サトノダイヤモンドとともに「2強」の一角を担った。しかしながら、レースではサトノダイヤモンドの後塵を拝したうえ、4着に敗退した。

 冒頭で有力馬に挙げてはいるものの、その菊花賞の結果から今回は人気が落ちそう。古馬との対戦も初で、1番人気に推された日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)や、2番人気だった菊花賞ほど支持されることはないだろう。そういう意味では、狙い目だ。

 菊花賞では、初の長距離輸送の影響が少なからずあったはず。その一戦だけで見限るのは禁物だ。それに今回は、初重賞制覇となったGIII共同通信杯(2月14日/東京・芝1800m)や、コンマ1秒差の3着と奮闘した日本ダービーなど、安定した走りを見せている東京が舞台。過去にここで勲章を得た3歳勢と同様、皐月賞馬が改めて底力を発揮してもおかしくない。

「3歳馬」という観点で、さらなる穴馬を狙ってみるのも面白い。

 先述した例から言えば、3歳牝馬が好成績を収めているため、ビッシュ(牝3歳)という狙いもあるが、GI秋華賞(10月16日/京都・芝2000m)で10着と大敗しているのがマイナス材料。過去、上位に来た3歳牝馬は、秋華賞を勝っているか、勝ち馬と差のない上位に来ていることから、ここでは同馬の推奨は見送りたい。

 代わりに期待したいのは、レインボーライン(牡3歳)。前走の菊花賞でも、9番人気ながら2着と好走し、波乱を演出した。

 遡(さかのぼ)れば、前々走のGII札幌記念(8月21日/札幌・芝2000m)でも、古馬との初対戦だったにも関わらず、3着と健闘している。そのときの1着馬が、先日のGIマイルCS(11月20日/京都・芝1600m)で3着となったネオリアリズムで、2着がGI天皇賞・秋(10月30日/東京・芝2000m)でGI5勝目(海外を含む)を挙げたモーリスだった。

 そうした実績から、今回も"大仕事"を果たす可能性は十分にある。しかも鞍上を務めるのは、好調ルメール騎手。一発の期待がますます膨らむ。

 さて、改めて過去10年の勝ち馬の臨戦過程を見てみると、天皇賞・秋から挑んできている馬が強いのがわかる。過去10年で6勝もしているのだ。

 興味深いのは、そのすべての馬が天皇賞・秋で敗れて、ジャパンCで巻き返しを果たしていることだ。なかでも、2014年のエピファネイアや、2007年のアドマイヤムーンは、天皇賞・秋で6着に沈みながら、ジャパンCで戴冠し"雪辱"に成功している。

 つまり、天皇賞・秋で人気を裏切ったとしても、ジャパンCでの巻き返しが期待できるということ。穴馬のポイントは、そこにある。

 食指が動くのは、ルージュバック(牝4歳)だ。

 今年は重賞を連勝するなど、一時期の不振から完全に脱した感があったが、天皇賞・秋では3番人気ながら7着に屈した。だが、同レースでは直線で他馬に囲まれて末脚を存分に発揮できなかった。上昇の余地は、大いにある。

 実際、東京では過去に3勝をマーク。スムーズにレースができれば、巻き返しがあっても不思議ではない。同じ舞台のオークスでも際どい2着となって、距離延長も不問だ。

 また、先述したとおり、ジャパンCで牝馬が好成績を収めていることも、ルージュバックにとって、心強いデータとなる。連戦の疲れがやや気になるものの、波乱を起こす下地はできている。この大舞台で悲願のGI制覇なるのか、注目したい。

 今年で36回目を迎えるジャパンC。3歳馬、古馬、外国馬が入り混じっての激戦を制し、国内最高賞金3億円を手にするのはどの馬か。およそ2分半のハイレベルな争いから目が離せない。

河合力●文 text by Kawai Chikara