今年も東京競馬開催のフィナーレを飾るGIジャパンカップ(芝2400m)の季節がやってきた。日本調教馬は国外のGIも含めて5頭のGIウイナーを擁し、ほかにも勢いに乗るGI未勝利馬たちがここで初タイトルを奪取せんと、今年も意気盛んだ。

 しかし、その顔ぶれをよく見ると、東京競馬場のGIを勝ったことがあるのは、ワンアンドオンリー1頭のみ(2014年の日本ダービーに勝利)。そのワンアンドオンリーも3歳時のGII神戸新聞杯(阪神・芝2400m)を勝利して以来、勝ち星どころか連対からも遠ざかっている近況だ。人気が見込まれるキタサンブラックも3歳時の日本ダービーは14着と惨敗。無類の安定感を誇るこの馬だけに、このコース条件だけは決定的に向かないのではないかと勘ぐりたくなる。

 そこで改めて注目したいのが、3頭の外国招待勢。凱旋門賞2着、ブリーダーズカップターフ優勝のハイランドリール(牡4歳・アイルランド)の来日こそ見送られたが、ヨーロッパから少数精鋭が送り込まれてきた。

 フランスから出走のイラプト(牡4歳)は、昨年に続いての参戦。昨年のこのレースでは勝ったショウナンパンドラから0秒3差の6着に敗れたが、直線に入ってからの仕掛けがワンテンポ遅れてからの巻き返しだっただけに、レースの流れにしっかり乗り切れていれば、もっと際どい結果に持ち込めていたようにも見える。

 昨年は凱旋門賞5着からの転戦だったが、今年はカナダに遠征し、10月16日のGIカナディアン国際(ウッドバイン・芝2400m)を制して、ここに臨んでくる。当初のプランでは、そのまま北米に残って11月5日のブリーダーズCターフ(サンタアニタパーク・芝2400m)に出走する選択肢も用意していたが、レース後の回復とレース間隔を考慮して、ジャパンカップに照準を合わせた。一旦フランスに戻ってからの日本への再遠征というスケジュールは一見過酷に見える。しかし、カナダでのレース2日後には自国に戻されており、その決断と対応の早さからも本気度の高さがうかがい知れる。日本への出発直前の11月12日にシャンティイ競馬場のオールウェザーコースで追い切られての来日は、昨年とほぼ同様だ。

 また、昨年は10月1週目である凱旋門賞からのレース間隔が、この馬にとっては微妙に長かったようだ。それを今年は2週間詰めることができたのは、状態のコントロールという点でもプラスに作用していると、帯同するアントニー・ダヴィ調教助手は語る。

 そして、何より一番の脅威は今回手綱を取るピエール・シャルル・ブドー騎手だ。日本では一昨年に短期免許で来日し、体重調整に失敗して、ブーツを履かずに騎乗するという珍事でインパクトを残したが、昨年は初のフランスリーディングを獲得。さらに今年はフランス年間最多勝記録更新というおまけつきで再度首位になり、今、フランスで最も脂の乗っているジョッキーとして戻ってきた。イラプトとのコンビはデビュー戦で1着となったとき以来2度目。凱旋門賞でも人気薄のシルジャンズサガを4着に導いたことからも、昨年の0秒3差を詰めてくる可能性は大いにある。ダヴィ助手はこう言って不敵な笑みを見せる。

「今年の日本馬には、こちらが臆するようなスターが不在。4歳になってパワーアップしたこの馬なら、とても楽しみです」

 もう1頭、昨年に引き続いての参戦となるのがドイツのナイトフラワー(牝4歳)だ。昨年のジャパンCでは11着だったが、着差は0秒5と悲観するような内容ではなかった。帯同するパトリック・ギブソン調教助手は次のように敗因を振り返る。

「大外枠でとにかく流れに乗れませんでした。枠順さえよければ、もっと違った結果が出ていたはず、と陣営では見解が一致しました」

 ジャパンCから帰国後、休養を経て今年5月に戦線に復帰。そこから徐々に調子を上げてGI2戦で相次いで2着となった後、9月25日のGIオイロパ賞(ケルン・芝2400m)を連覇し、昨年と同じローテーションでジャパンCへの参戦となった。


 まず昨年と比較して目についたのが、馬体の充実ぶりだ。11月23日早朝の東京競馬場での調教に姿を見せたナイトフラワーは、牝馬特有の体の線を残しつつ、よりパンプアップしてグラマラスになっており、並んで現れたイキートス(牡4歳)の方がむしろ牝馬にすら見えるほどの逞しさを備えていた。実際に馬体重も、昨年のレース時は468kgだったのが、11月22日の計量で485kgと17kgも増えている。もちろん太めなどではない。

「確かに去年よりも大きく、そして力強くなりました。その分、馬にも自信がついたようにも思えます」(ギブソン助手)

 ナイトフラワーはこれが引退レース。母国ドイツで繁殖入りが決まっているだけに、大きな手土産を手にしたいはずだ。

 もう1頭ドイツから初来日のイキートスは、そのナイトフラワーと同じレースで2度勝利を収めている。11月22日の計量で416kgと小柄な牡馬だが、ソニア・ファーガソン調教助手はこう語る。

「ドイツでは馬体重を量る習慣はありませんが、このぐらいでベストです。この馬の場合、420kgを超えるようだと逆によくない」

 実際、この馬体で9月以降にGIを3戦し、1着、5着、4着と安定した成績を残している。今週に入って例年より冷え込みがきつい東京の気候も、出発時のドイツの気温は3度だったとのことで大きなダメージはなく、むしろ大歓迎のようだ。

「できれば良馬場希望。3走前に勝ったGIバーデン大賞(9月4日/バーデンバーデン・芝2400m)は良馬場発表でしたが実際はものすごくのめる馬場で、それを克服したあたりに今の充実ぶりを感じ取ることができます」(ファーガソン助手)

 ここ数年、「その他大勢」の扱いを受けてきた外国勢だが、小粒に思える今年こそ一撃に警戒が必要だ。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu