「自分から勝ちにいって、どれだけの競馬ができるか」

 菊花賞に臨むディーマジェスティ(牡3歳)について、レース前に同馬の関係者に話を聞いたとき、そんな言葉が返ってきた――。

 GIは、恵まれて勝てるほど、甘くはない。とはいえ、皐月賞を勝ったディーマジェスティは、リオンディーズが逃げて作り出したハイペースの恩恵を、明らかに受けていた。有力馬の中では、最も「レースの流れが向いた」と言えるだろう。

 続く日本ダービーでは、マカヒキ、サトノダイヤモンドら有力馬に、真っ向勝負を挑んで3着に敗れた。

 そして、迎えた菊花賞、おそらくサトノダイヤモンドと人気を二分するレースにおいて、ダービー同様に真っ向勝負を挑んで、どれだけの競馬ができるか。そこで、ディーマジェスティの真価が問われる――それが、冒頭の関係者の言葉が意図するところだった。

 レース本番。関係者の言葉どおり、ディーマジェスティは1番人気サトノダイヤモンドに対して真っ向勝負を挑んだ。だが、あっさりと跳ね返されて4着に沈んだ。デビュー以来、8戦目で初めて馬券圏内から消えた。

 結局、勝ちにいって勝てない――ディーマジェスティは、その程度の馬なのか。いや、そう思うのはまだ早計なのか。同馬が続いて挑むジャパンカップ(11月27日/東京・芝2400m)で、その評価が改めて下されることになる。

 菊花賞のあと、競馬関係者やファンの声を聞くと、どうやら「その程度」という見方が大勢を占めているようだ。

 はたして、本当にそうだろうか。

 ポイントのひとつは、菊花賞の敗因にある。レース直後は、実力のほか、距離やコースが敗因とされた。だが、どうやら真相は"太め残り"ということらしい。

 前走比プラス6kgは、一見許容範囲だが、関東からの輸送を考えるとやや重め。しかも、馬体重が480kg台になったのは、デビュー以来、初めてのこと。ということは、プラス分は成長ではなく、確かに「太めが残った」と考えられる。

 実際、主戦の蛯名正義騎手も、「今にして思えば、(菊花賞のときは)馬体が立派だったかも......」と語って、その点を一番の敗因に挙げているという。

 もうひとつポイントを挙げれば、菊花賞というレースそのものにある。

 このレースは、2001年のマンハッタンカフェ以来、実に15年もの間、関東馬が勝っていない。まさしく、関東馬にとっては"鬼門"のレースなのだ。

 最大の要因は、やはり「長距離輸送」だろう。皐月賞、ダービーといった春のクラシックは関東で行なわれるため、関西馬はその時点ではもちろん、それよりも早くから長距離輸送を経験している。

 一方で、関東馬の牡馬は、あえて長距離輸送をする必要がない。牡馬クラシック戦線の王道を行く馬は、菊花賞で初めて長距離輸送を経験することになる。つまり、輸送そのものの負担もあるが、関東馬と関西馬との"輸送慣れ"の差が、菊花賞では微妙に結果に影響していると言われる。

 そういう意味では、4着に負けたとはいえ、そう悲観することはない。

 また、ジャパンCというレースに目を向ければ、ディーマジェスティにとって好ましいデータがある。

 過去10年の勝ち馬の中で、前走から連勝を飾った馬は、2頭しかいない。さらに、前走がGIという条件をつければ、2012年に秋華賞を勝って、ジャパンCも制したジェンティルドンナだけである。

 あのディープインパクトをはじめ、ウオッカも、ブエナビスタも、前走で苦杯を舐めながら、ジャパンCでは圧倒的な強さを見せた。ジャパンCの歴史そのものが、実は前走の敗戦からの"巻き返しの歴史"なのだ。

 菊花賞の敗戦から巻き返した例としては、2010年のローズキングダムがいる。ブエナビスタの降着があったにせよ、菊花賞で2着と涙を飲んだあと、ジャパンCで戴冠して雪辱を果たした。

 こうして、あれこれ材料を集めてみると、"鬼門"の菊花賞を太め残りで負けたということは、逆にこのジャパンCにこそ、ディーマジェスティの勝負気配がうかがえる。聞けば、陣営は有馬記念出走を視野には入れておらず、勝負をここ1本に絞っているという。

 ジャパンC当日、馬体重が減っていたら、人気が落ちる分、ここでは"買い"だ。

 ダービーの前、蛯名騎手にインタビューした際、「共同通信杯を勝った時点で、この馬は東京で走ると思った。ゆえに、ダービーが最大目標」と語っていた。東京・芝2400mへの適性については、何ら問題ないだろう。

 今年、ジャパンCの"巻き返しの歴史"に、ディーマジェスティが新たな1ページを刻む。

新山藍朗●文 text by Niiyama Airo