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長時間労働やサービス残業が問題視される中、ドイツの労働環境をめぐるツイート「ドイツ『仕事は仕事、生活は生活』の理念」が話題になった。

ツイートの内容は、今年5月に公開された映画「マイケル・ムーアの世界侵略のススメ」のドイツに関する部分を紹介したものだ。映画では、多くの企業で終業後の社員にメールを送らない規則を採用していることや、メルセデス社では、自宅にいる部下にメールができないシステムになっていることを紹介している。

これに対して、ネットでは、「ここまで規制にせにゃいかんのかって思ったけど日本の現状見れば納得」「前に働いていた企業では、長期休暇に毎日メールを送り、安全を確認する悪習があった」など、様々な反応が寄せられていた。

過去にはフランスで、雇用主や従業員が、勤務時間外に電子メールなどのデジタルコミュニケーションを制限する方法について協議し、やり方を定める「つながらない権利」が議論になったこともあった。

日本でも自主的な規制というのはありえる話だが、終業後の従業員に上司が接触したり、返事を求めたりすることを法律で規制することはできるのか。規制するとしたら、どのような点が問題になるのか。白川秀之弁護士に聞いた。

●「労働基準法の趣旨には合致している」

「日本でも、労務を提供する時間は労働契約で決められています。契約上の時間が終了した後、つまり終業後に仕事に関して接触をしたり、返事を求めたりしても、労働者はそれに応えるべき義務はありません。

労働契約上で緊急時の対応をする事が合意されている場合には、命令に応じるべきと言えますが、その場合にはその時間に見合った賃金の支払いをしなければなりませんし、法定労働時間を超える場合には三六協定の締結や割増賃金の支払いが必要になります」

では、新たに法律で禁止することも妥当と言えるのか。

「本来、終業時間後に業務上の指示等を出すことは例外である以上、法律を改正して、ドイツのように終業時間後の連絡を取ることを禁止することは労働基準法の趣旨に合致するものだと思います。

このような法律が制定された場合、きちんと取り締まりをすることが重要になってきますので、労働基準監督署の役割が重要だと思います。ただ、終業時間後のメールであるかどうかはメール記録等から明らかだと思いますので違反認定は容易だと思います」

ただ、抜け道のようなものが出てくる可能性もあるのではないか。

「この制度はあくまで終業後のものを対象とするものなので、就業時間内とすれば問題はないことになります。現在は、電通事件に代表されるように、会社内で際限なく残業をしてしまっています。まずは、残業時間を減らすことも対策にしなければならないでしょう」

白川弁護士はこのように話していた。

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
白川 秀之(しらかわ・ひでゆき)弁護士
2004年、弁護士登録。労働事件が専門だが、一般民事事件も幅広く扱っている。日本労働弁護団常任幹事、東海労働弁護団事務局長、愛知県弁護士会刑事弁護委員会委員。所属事務所:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所名:弁護士法人名古屋北法律事務所
事務所URL:http://www.kita-houritsu.com/