下半期の「マイル王」を決めるGIマイルCS(11月20日/京都・芝1600m)。絶対王者モーリスの不在により、戦前から大混戦ムードとなっている。

 その中で有力馬として挙げられるのは、前走のGIIスワンS(10月29日/京都・芝1400m)で鮮やかな差し切りを決めたサトノアラジン(牡5歳)、2014年の皐月賞馬であり、前走のGIII富士S(10月22日/東京・芝1600m)で2着と好走したイスラボニータ(牡5歳)、その富士Sの勝ち馬で、現在3連勝中のヤングマンパワー(牡4歳)、そしてGIスプリンターズS(10月2日/中山・芝1200m)で2着に入ったミッキーアイル(牡5歳)あたりか。

 もちろん、これ以外の馬にもチャンスは十分あり、「勝ち馬」を探すには骨の折れるレースとなりそうだ。

 そんな混戦ムードだからこそ、伏兵の台頭、あるいは大波乱があっても不思議ではない。ならば、マイルCSの過去の歴史を参考に、「波乱の使者」となりそうな馬をピックアップしてみたい。

 近年のマイルCSは「本命不在」と言われることが多く、荒れやすいイメージを持っている人もいるかもしれないが、過去10年の勝ち馬を見ると、大波乱が何度も起きているわけではない。6番人気以下で優勝したのは、2014年のダノンシャーク(8番人気)と、2010年のエーシンフォワード(13番人気)のみである(※ダノンシャークは今年も出走)。

 そして今回のメンバーを見渡したとき、2014年のダノンシャークと極めて似ている馬がいる。フィエロ(牡7歳)である。

 まずは、2014年のダノンシャークから振り返ってみたい。同馬は前年(2013年)のマイルCSでも、3着とトップ争いを演じていた馬だった。2014年前半は白星こそ得られなかったものの、春のGI安田記念(東京・芝1600m)で4着に入るなど、それなりの成績は残していた。

 ではなぜ、マイルCSで評価を落としたのか。

 大きかったのは、直前の富士Sで1番人気ながら7着に敗れたことだ。しばらく白星がないことも相まって「衰え」のイメージがつき、本番では8番人気まで評価を落としたのだった。

 しかし、結果は多くの難敵を蹴散らして快勝。念願のGI初制覇を飾って、改めて力があることを証明した。

 今年のフィエロの臨戦過程は、まさにそれと重なる。

 昨年のマイルCSでは、2年連続の2着と奮闘。マイル路線ではトップクラスの実力馬であることを再度示した。さらに今年も、いまだ勝ち星はないものの、春の安田記念では勝ち馬からコンマ2秒差の3着に入っている。

 それが、前走のスワンSでは、1番人気に推されながら、9着と馬群に沈んだ。この結果、人気落ちは必至。上位グループよりも、ワンランク下の評価まで下がりそうなのだが、ダノンシャークの例からすれば、巻き返してもおかしくない。

 同年の安田記念で好走している馬は、たとえ前哨戦でつまずいても、評価を下げるのは禁物。フィエロの一発を期待するのは悪くない。

 過去10年の結果を見ると、他にも着目したい傾向がある。それは「牝馬の好走」だ。

 2008年に勝利したブルーメンブラットを筆頭に、2006年に2着となったダンスインザムード、2009年、2011年と3着に入った外国馬のサプレザ、2012年に3着となったドナウブルーと、馬券圏内に5度絡んでいる。さらに遡(さかのぼ)れば、上位に食い込んだ牝馬は何頭もいる。

 ブルーメンブラットとドナウブルーは、GIII府中牝馬S(東京・芝1800m)をステップに挑んできた。前者は1着、後者は3着に入って、マイルCSに挑戦して結果を出した。牝馬限定戦とはいえ、府中牝馬Sで上位に入っていれば、通用する力があると考えてもいいだろう。

 加えてこの2頭は、それまでに牡馬混合のGIでバリバリ好走してきたわけではない。そう考えると、マイルCSは他と比べて牝馬が活躍しやすいGIと見ることもできる。

 そこで、今回注目したいのが、マジックタイム(牝5歳)だ。4月のGIIIダービー卿CT(4月3日/中山・芝1600m)で初重賞制覇を飾って、前走の府中牝馬S(10月15日)では2着と優勝争いを演じている。

 このときの勝ち馬は、先週のエリザベス女王杯を制したクイーンズリング。それだけレベルの高い一戦だったと言え、マジックタイムが牡馬を相手にしても健闘する可能性は十分にあるだろう。

 さて、ここまでに挙げたフィエロとマジックタイムは、おそらく「中穴」と言ったところ。より「大穴」を狙いたい人には、スノードラゴン(牡8歳)を推奨したい。

 同馬は、2014年のGIスプリンターズS(新潟・芝1200m)の勝ち馬。得意とする1200mから距離を伸ばして、今回の舞台に臨んでくる。トップクラスでのマイル実績はなく、人気は上がらないだろう。

 ただ、マイルCSではスプリンターの好走例も多い。先述した2010年の覇者エーシンフォワードは、同年春のGI高松宮記念(中京・芝1200m)で3着と好走。唯一の重賞勝ちも1400m戦だった。また、2007年の3着馬スズカフェニックス、2008年の3着馬ファイングレインは、ともにその年の高松宮記念を制していた馬。スプリント戦が主戦場であっても、力さえあれば、通用するのだ。

 舞台となる京都競馬場は、芝が軽く、最後の直線に坂もないため、スピード豊かな馬に向くのかもしれない。ということは、スノードラゴンの距離延長策がハマってもおかしくない。

 勝ち星からは遠ざかっているが、前走のスプリンターズS(10月2日)では、勝ち馬からコンマ1秒差の5着に入っている。同馬の巻き返しを期待し、大波乱を狙った馬券で勝負するのも一興だ。

 群雄割拠のマイルCS。初のGIタイトルを目指す馬や、復活を期す古豪など、それぞれの思惑が交錯する熱いレースになりそうだ。はたしてどんな結末が待っているのか、まもなく訪れる発走の瞬間を楽しみにしたい。

河合力●文 text by Kawai Chikara