写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●なぜ新商品攻勢で攻めの姿勢を打ち出せるのか
日本マクドナルドによる新メニュー攻勢が止まらない。ここ最近では、過去の人気商品を復活させるキャンペーンを展開し、「テキサスバーガー」などの懐かしいメニューを期間限定で販売。同キャンペーンのラストを飾る復活メニューは「かるびマック」に決まった。ここで疑問なのは、マックが売れ行き好調な新商品をレギュラーメニューに組み込まないこと。実際に売れる商品であれば、常に店頭に置いておけば良さそうなものだが、なぜマックは定番メニューを増やさないのだろうか。

○月1種類以上のハイペースで新商品を投入

2016年の動向を振り返ると、マックが世に問うた新商品の多さに驚かされる。名称を公募した「北のいいとこ牛(ぎゅ)っとバーガー」に始まり、同社が今年発売した新商品はハンバーガーだけで10種類以上。「バーガーラブ」というコンセプトを打ち出した4月以降は、平均すれば月に1種類以上というハイペースで新作をリリースしている。ところが、マックのレギュラーメニューは増えていない。

「(レギュラーメニューは)バランスがいい」。日本マクドナルド・メニューマネジメント部の若菜重昭上席部長によれば、レギュラーメニューの商品力が堅固だからこそ、マックは新メニューという形で次々に新しい挑戦ができるのだという。今年発売した新商品の中には、ビッグマックを更に巨大化させた「グランドビッグマック」のような攻めのメニューも存在する。思い切った新メニューを打ち出せるのも、定番メニューの安定した実力に自信を持っている故なのだろう。

○SNSを活用したプロモーションを実施

新メニューを出し続けるのは、話題を提供することによる集客力の向上が主な目的だ。普段からマックを使っている固定客には、定期的に新メニューを提示することで新鮮な印象を持ってもらえる。大々的なプロモーションが実施できるので、新商品の投入は“マック離れ”の状態にある顧客に訴求する手立てにもなる。

新メニューのプロモーションで見逃せないのは、マックがSNSとの連携を強化している点だ。新メニューの発売に合わせてマックは、SNSで新商品を評価したり、写真を撮ってアップしたりすると、マックカード(マックで使える商品券)をプレゼントするというような施策を実施。こういった施策により、顧客と「よりインタラクティブな」(若菜氏)関係を構築することができているという。

かるびマックでフィナーレを迎えた人気商品復刻キャンペーンでは、復活させる商品を決める際に顧客の声を参考にしたという。顧客の要望に沿って発売した商品群は軒並み好評で、復活商品第2弾の「ベーコンポテトパイ」は材料の供給が間に合わず、数量限定となるほどの人気を博した。顧客の声は新商品を考えるうえで重要な判断材料になっているようだ。SNS経由で固定ファンを増やし、顧客との対話を促進しているマックは、今後の新メニュー展開にも顧客の要望を反映しやすい状況を整えつつあるといえるだろう。

それでは、マックの新メニュー戦略は今後、どうなっていくのだろうか。

●マック復活の真価が問われるのはこれから
○今期決算は“マック復活”で着地?

マックの2016年12月期は、多くの新商品にも支えられる形で好調に推移している。期初の通期業績予想では33億円の黒字を見通していた営業損益も、第3四半期決算を発表したタイミングで50億円の黒字に上方修正した。今期決算は“マック復活”を印象付けるような結果で着地しそうだ。

人気商品復活キャンペーンの終了で落ち着くかと思われた新メニュー攻勢も、若菜氏が「お楽しみに」と話していたところを見ると、まだまだ手を緩める気はない様子。同氏は今期中にも何らかの新商品を用意しているような口ぶりだった。

○真価を問われる来期のマック

新メニューでの集客には成功したマックだが、気になるのは今後も同様のペースで新作を投入し続けられるかどうかだ。今回のキャンペーンを見ても明らかなように、マックは復活・再販を仕掛けられる過去の資産を大量に持っているが、そろそろ何か新しい、驚くような新商品を見たいような気もする。

新規参入の外資系バーガーチェーンも含め、様々なメニューが出回るようになった日本のハンバーガー市場であるだけに、この市場を開拓したマックが次に何を仕掛けるかには注目したくもなる。売れる新商品を定期的に投入し続けるのか、あるいはメニュー以外の部分で何か新しい施策が飛び出すのか。来期はマック復活の真価が問われそうだ。

(藤田真吾)