米軍が開発を進めている艦載兵器「レールガン」。大電流により発生する磁場の相互作用で弾を超高速で撃ち出す。防衛省も開発を検討しているとされる

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大型空母の君臨、ステルス戦闘機の衝撃、原子力潜水艦の脅威、最新型戦車の破壊力、そして超ハイテクな無人兵器へ――。

過去50年間、世界情勢の潮流を反映しながら常に進化してきた軍事兵器。前編記事ではその歴史を再検証したが、では、今後50年の進化はどのようなものになるだろうか?

「陸・海・空軍の兵器に関しては、90年代の湾岸戦争後、一貫して続いていた『安く、早く、高精度に』という傾向に拍車がかかるでしょう。ただ、今後はこの従来の3軍にプラスして宇宙、そしてサイバー空間も“戦場”となる。もちろん、新兵器もそれに対応したものが必要になります」(軍事アナリスト・嶋田久典氏)

こうした流れのなかで具体的に見えてきているのが、人類を滅ぼしかねない核兵器に代わる新たな“抑止力”の誕生だという。

「核兵器は使うこと自体がタブー。それよりも戦略的効果と確実な破壊力が期待でき、かつ使用へのハードルが低い兵器が実用化されるでしょう。有力なのは艦艇搭載型のレールガンで、秒速5〜8キロの超高速度で砲弾を撃ち出し、数百km先の目標を砲撃することも可能。10年から20年先には実戦投入されるかもしれません。

また、レーザーやマイクロ波を応用した指向性エネルギー兵器も注目です。これは人工衛星に設置された反射鏡を利用すれば、地球上のあらゆる目標への攻撃が可能になる画期的な武器で、30年から50年以内には実用化される可能性があります」(軍事評論家・古是三春[ふるぜ・みつはる]氏)

こうした兵器は弾道ミサイルや軍事衛星をも高精度で破壊できるため、現在の軍事戦略を大きく転換させるかもしれない。

「また、電子機器のみを破壊して指揮通信や武器管制機能をマヒさせたり、人間を殺さずとも、その能力を痛みや眩惑で一時的に奪うような“非致死性兵器”という分野も研究されています」(古是氏)

ところで、これらの新ジャンルの兵器は、必ずしも人間の兵士が使うとは限らない。カギを握るのが、AI(人工知能)を搭載した無人兵器だ。

味方の人命が何より大事なら、ロボットに戦わせればいい―。こうした発想から、すでに空軍ではドローン(無人機)が偵察任務から敵の重要人物の暗殺まで受け持っているが、今後は監視・追尾任務を行なう無人艦艇や無人戦車なども視野に入ってくる。

空→海→陸と、技術的難度が低いほうから無人化は進むでしょう。最後のステージはやはり陸の兵士。“相棒”として人間についてくることはできても、戦場の緊迫感といった“空気”を読むことができない限り、ロボットを歩兵と完全に置き換えることは難しいからです。逆に言えば、そういったプログラムやアルゴリズムの技術が備われば、戦場の完全無人化は現実味を帯びてきます。

いずれにしても、すべての無人化・自律化というのは、AIも含めた開発に莫大な費用がかかります。これは先の『安く、早く、高精度に』という昨今の潮流とは矛盾する。おそらく実現は早くて20年から30年後ではないでしょうか」(前出・嶋田氏)

果たして50年後、戦場に生身の人間はいるだろうか。

(取材・文/世良光弘&本誌軍事班 写真/米国防総省)