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TBSドラマ「砂の塔〜知りすぎた隣人」は、タワーマンションを舞台に繰り広げられる女性同士のヒエラルキーが「リアルで怖い。鬱になりそう」などと話題を呼んでいます。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんは、ドラマで「差別」の対象となっているタワーマンションの下層階は、高層階に比べて価格も安いのに共用部分をフル活用できるので、ドラマのようなゴタゴタがなければむしろ快適と評しています。

実質的な価値とステータスは違う、タワーマンションは砂の塔?

こんにちは! 廣田信子です。

前回の「高層階ほどバカを見る。タワーマンション『課税』に黄昏れて」では、国が、タワーマンションの固定資産税の評価額を上層階に行くほど高くすることを検討中というニュースに対して、土地と建物という共有財産の税金を、共有持分割合と違う割合で課税することは整合性がとれないから、共有持分割合も見直されることになるのだろうけど、そもそも、上階に行くほど高くなるという価格はどういう価値に対してつけられているんだろう、建物の価値なの?土地の価値なの?ステータスとか、節税効果とか、直接の不動産評価と違うところが、価格を引き上げていたんじゃないのかな?で、2018年から実施するとなると、専有部分が同じなら、同じ共有持分で、税金も同額払っているこれまでの多くのタワーマンションと、高さで違いがつくタワーマンションが混在すると市場の評価はどうなるのか…という話をしました。

タワーマンションの階層による格差の問題は常に言われていて、下層階にもそれなりの価値を感じてもらえるようディベロッパーもいろいろ努力をしてきたと思います。超高層マンションに暮らす価値を味わってもらえるよう最上階近くに、ラウンジやテラスをつくっているところも多いです。いくつかのタワーマンションに伺いましたが、静かで、眺めのいい、居心地のいいラウンジは快適で、別に、自分の部屋が高層階になくてもいいじゃない〜と思わせてくれました。

スポーツジム、プール、エステ、レストラン等の利用は、もちろん、部屋が何階にあるか、買った時の価格がどうだったか、なんてことにまったく関係なく利用できます。で、タワーマンションは周りに広い空地あるので、下の方の階でも、バルコニーからの景色に圧迫感はありません。しかも、災害時にエレベーターが止まっても、階段で、余裕で避難できますし、普段の外出も楽です。価格が手ごろな下の階を買って、タワーマンションの共用施設をフルで利用するって、すごくお得じゃないかな…と常々思っていました。

実際に、そういう理由で下の階を購入している方特に高齢の方、結構いらっしゃいます。もし、これで、税金まで安くなるなら、タワーマンションの下の階、超おすすめだと思いますが、なかなかそうはいかないのでしょうね。

それって、子育てが終わって、もうあまりこだわるものもない年代だから言えるのよ〜と言われちゃいそうなドラマが今評判です。タワーマンションのヒエラルキーを描いたテレビドラマ「砂の塔〜知り過ぎた隣人」が、子育て世代の人たちに「怖すぎる」と話題になっています。

すみません、私、予告編しか見ていませんが、想像つきます。子育て中は、ママ友間での、こういう面倒な世界と関わらなくちゃならないので、たいへんなんです。子育て中は、そこから逃げられませんから。でも、これ、子育て世代の特徴で、ある意味、結構古典的なテーマで、昔からあることです。何かでヒエラルキーをつくって安心したいっていう心理はなんか、いつになっても変わらないんだな…と。昔の団地でもよく聞いたし、社宅なんかもっとすごい葛藤があり、よくドラマにもなっていますよね。タワーマンションの場合、何で、差別感を持つか、優越感を持つかという分かりやすい記号が、「何階に住むか」ということだというのが、ちょっと今風だということです。

でもね〜、こんなに価値観が多様化したようでも、まだ、若い人たちが、こんな多様性のないヒエラルキーに縛られているって、ほんとうかな〜。まあ、ドラマだから、大げさな部分はあっても、こんなに話題になるのは、「あるある」なんでしょうね。

でも、みんな幸せじゃなさそう。何のために、マンション買ったのかわからない。「高層階ほどバカを見る。タワーマンション『課税』に黄昏れて」も書いたように、高層階の部屋の購入に払う高額なお金は、ステータス、優越感、もっというと、お金があることにのみ価値を見出す人たちを惹きつける舞台回し…。

超高層マンションの高層階の価値って、眺望とかじゃなく、ものすごく、ふわっとした、ほんと「砂の塔」みたいなものなのでは…と思えます。実態がないから、何かでステータスを失うと、あっという間に崩れ落ちるような…。

でも、何階であろうが、タワーマンションを購入して家族で暮らせるってことだけで、すごく幸せなことだと思います。こんな格差社会にあって…。そのことに気づいている人が、ほんとうに幸せな人で、その幸せは、不動産市場に何があっても崩れ落ちないもののはずです。人を幸せにするのが「住まい」の究極の目的ですから。

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『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』

マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

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出典元:まぐまぐニュース!