日本国内における海外競馬の馬券発売第2弾として、11月1日(火)にオーストラリアで行なわれるGI競走メルボルンカップ(フレミントン競馬場・芝32000m)が発売される。オーストラリア最大規模とされるレースで、毎年11月の第1火曜日は、開催地であるヴィクトリア州は祝日となり、オーストラリア全土でも"Stop the Nation(国が止まる日)"と称されるほどだ。日本と真逆の季節で、メルボルンはまさに今、春を迎えようとする時季。春の陽気さと、このメルボルンカップを中心とした"スプリングレーシングカーニバル"の華やかな雰囲気が相まって、メルボルンの市内外全体がお祭り騒ぎのように浮かれている。

 主催であるヴィクトリアレーシングクラブ、さらに統括団体であるレーシングヴィクトリアにとっては、日本における馬券発売は、果たしてどれだけの恩恵をもたらしてくれるのかと、非常に期待が高まっている。何しろ40億円超を売り上げた凱旋門賞のインパクトはあまりにも大きかった。街中のパブなどに併設された小規模の馬券発売施設があり、諸外国の中でも馬券熱の高い方であるオーストラリアにおいても、昨年のメルボルンカップ単体で約2億オーストラリアドル(約160億円)の売り上げなのだから、これだけの数字はあまりにも魅力的だ。凱旋門賞が日本にとって特別なレースであり、また日本における最初の海外馬券発売という特殊な状況であることを考慮しても、期待をするなという方が無理というものである。

 メルボルンカップはオーストラリア最大のレースではあるが、決してオーストラリアにおける"最強馬決定戦"ではない。それは3200mという長丁場であり、ハンデキャップ戦である点が大きい。さらにフルゲートは24頭。加えて、日本の競馬の感覚では考えにくいのが、当たり前のように中10日、中2日などで使ってくる馬がおり、それらが好走するケースも少なくないことだ。それだけに馬券という観点では、世界の大レースの中でも屈指の当てにくさであるとも言える。

 そこで、馬券の検討は大胆に考えたい。

 まず、本稿執筆時点では、1番人気ハートネル(セン6歳※、56kg)、2番人気オーシャノグラファー(セン5歳、52kg)、3番人気ジャメカ(牝4歳、54.5kg)までが現地における単勝10倍以下。これが日本ではどのようなオッズになるかも注目が必要だ。

 ※オーストラリアは8月1日で馬の年齢が1歳加算されるため、北半球産の馬は、本来の年齢より1歳上で表記。本稿もそれに準拠する。

 過去の勝ち馬を見ていくと、ハンデが53.5〜56kg(牝馬は51.5〜54kg)、年齢は4〜6歳、1年以内に重賞勝ち、オーストラリア産馬以外、というのがホットゾーンとなっている。

 これを判断材料にすると、半数以上が勝ち馬の候補から脱落する。2番人気オーシャノグラファー、3番人気のジャメカも脱落の対象となり、残るのはボンダイビーチ(牡5歳、56kg)、エキソスフェリック(牡5歳、56kg)、ハートネル、ギャランテ(セン6歳、54.5kg)、ビューティフルロマンス(牝5歳、52.5kg)の5頭に絞られる。このうちギャランテは、同じ距離で行なわれた今年の豪GIシドニーカップ(ランドウィック競馬場・芝3200m)を勝利したが、当時が51.5kgでメンバーも今回よりもラクだったので、ここは割り引きたい。ハートネルは前々走、GIターンブルステークス(フレミントン競馬場・芝2000m)を57.5kgの斤量で勝利しており、今回の斤量は恵まれたようにも見える。だが一方で、昨年のメルボルンカップでは何もできずに15着に敗れたように、本質的にこの距離を勝ち切るタイプではない。同じようにボンダイビーチも昨年のレースでは52.5kgで16着。今回は凱旋門賞、天皇賞・秋を制した世界的名手ライアン・ムーア騎手を配して必勝態勢だが、前年ついた差をどこまで埋めることができるか。

 これに対して、データ的に好印象なのがエキソスフェリックとビューティフルロマンス。特に前者は今年4月に行なわれた英GIIジョッキークラブステークス(ニューマーケット競馬場・芝2414m)で、前年の英GI英国セントレジャー(ドンカスター競馬場・芝2937m)でボンダイビーチを破ったシンプルヴァースを2着に下しており、8月の英GIインターナショナルステークス(ヨーク競馬場・芝2080m)で、後に凱旋門賞で1番人気となるポストポンド相手に距離不足ながら4馬身半差の5着と健闘している。

 ビューティフルロマンスは昨年の英GI英国チャンピオンズフィリーアンドメアズ(アスコット競馬場・芝2414m)で前述したシンプルヴァースの2馬身3/4差の3着とした後、今年初戦の英GIIミドルトンステークス(ヨーク競馬場・芝2100m)を勝利している。ウェリビー競馬場でも意欲的に毎日長めに追われており、こちらも調整過程から好感が持てる。

 一方、日本勢としては、2006年にはデルタブルース、ポップロックによる歴史的ワンツーフィニッシュを果たしたレース。以来、勝利からは遠ざかっているものの、未だにその鮮やかなワンツー独占の印象が地元でも強く、常に日本からの遠征馬は注目の的となっている。今年はカレンミロティック(父ハーツクライ、せん9歳/平田修厩舎)が日本から出走。今年の天皇賞・春でもキタサンブラックを追い詰めるなど、GIタイトルこそないものの、中長距離の大レースで存在感を放ってきた日本のマラソンランナーがどのようなレースをするか、やはり大きな関心を集めている。

 カレンミロティック自身は一昨年の香港ヴァーズに続いて2度目の海外遠征となる。その香港ヴァーズは現地到着後に体調をやや崩しながらも、当日のレースは最後の直線の攻防に加わって勝ち馬から2馬身3/4差の5着と健闘を見せた。2年前と比較して、今回の輸送は、「最悪のケースも考えていた中で大成功。むしろ欲も出てくるほど」と陣営が語るほどで、到着後の調整も順調に進められている。

「大成功」の恩恵は追い切り本数にも表れており、予定では2本、最悪の場合はレース直前に1本ということも考えられていたが、むしろ体調の良さから前倒しにして1日多く追い切りを行なうことができたそうだ。23日月曜日には検疫馬の調教場であるウェリビー競馬場の芝1600mからの長めの追い切りを行ない、さらに28日金曜日にはレースでも騎乗するトミー・ベリー騎手を背中に、芝1000mをびっしりと追われた。もともとエンジンの掛かりが早いほうではないため、先行した帯同馬のカレングラスジョーをとらえるのに手間取ったが、ゴールではきっちりと併入に持ち込んだ。調教後、ベリー騎手は集まった地元メディアの前で感触をこう語っている。

「宝塚記念でも感じたけど、やはり急にラップを上げるような加速をするタイプではないので、今日の追い切りは見た目どおり動かなかったと思います。けれども、運動量も豊富で、状態も宝塚記念よりかなりいい。この馬の特徴も今日で再確認できたので、レースプランもきちんとイメージできました」

 29日土曜日に行なわれた枠順抽選では、鈴木明子オーナー夫人が18番枠を引き当てた。傾向として良績が内よりの枠に集まるこのレースであるが、平田修調教師は笑顔を見せていた。

「ある程度前にはつけたい馬なので、スタートから最初のコーナーまで1000m近くある分、内で包まれるより、このぐらいの外から内を見ながら出していけるのはむしろ悪くない」

 カレンミロティックにとっては、これまでに例がない9歳馬の勝利を目指すことになる。さらに、この1年で見ても重賞勝利から遠ざかっており、越えるべきハードルは高い。これを乗り越えて、どういった結果を出すかにも注目したい。

土屋真光●文 text by Tsuchiya Masamitsu