3歳「牝馬三冠」レースの最終戦となるGI秋華賞(京都・芝2000m)。2008年のこのレースでは、11番人気という低評価だったブラックエンブレムが大金星を挙げて、単勝は2990円の高配当となった。

 秋華賞では「波乱の立役者」になったものの、過去の戦績を振り返れば、彼女はGI馬になってもおかしくない存在だった。3歳春にはGIIIフラワーC(中山・芝1800m)で1番人気に支持されて、見事人気に応えて逃げ切り勝ち。GIオークス(東京・芝2400m)では、勝ち馬にコンマ3秒差の4着と健闘している。実力がありながら、秋華賞では人気の盲点になったと考えられる。

 彼女の秘めた能力は、引退後、さらに発揮されることになる。繁殖牝馬として、優秀な子どもたちを次々に送り出しているのだ。

 2012年生まれのブライトエンブレム(牡4歳/父ネオユニヴァース)は、GIII札幌2歳S(札幌・芝1800m)を快勝。GII弥生賞(中山・芝2000m)で2着、GI皐月賞(中山・芝2000m)でも4着と好走した。

 他にも、2011年生まれのテスタメント(牡5歳/父ディープインパクト)は、これまでに3勝。2013年生まれのアストラエンブレム(牡3歳/父ダイワメジャー)もすでに4勝を挙げ、重賞戦線でも3、4着に入線するなど、トップクラスの力を示している。

 これまでの子どもたちがこれだけ活躍しているだけあって、ブラックエンブレムの4番目の子となる2歳馬にも注目が集まっている。美浦トレセン(茨城県)の小島茂之厩舎に所属するオーロラエンブレム(牝2歳/父ディープインパクト)である。

 実際、彼女は小さい頃から"活躍ファミリー"の1頭として、素質の片鱗を見せていたようだ。同馬の育成を担当したノーザンファーム早来の村上隆博氏は、今春の取材でこう話していた。

「体のバランスがとてもよくて、母のしっかりした骨格を受け継いでいます。フットワークが軽く、走りもきれい。当然、期待しています。普段は落ちついているんですが、調教が始まると気持ちが入ってくるんですよね。その切り替えができるところもいいと思います」

 その後、美浦の小島厩舎に入厩したオーロラエンブレム。同厩舎では母や兄たちすべての面倒を見てきたが、スタッフの同馬に対する評価は、活躍した兄たちと比較しても「ことさら高い」という。関東競馬専門紙のトラックマンが語る。

「あるスタッフは、『馬にまたがってすぐ、モノが違うと思った』と話していましたね。2歳戦ですでに勝利している同厩舎の馬と比べても、『デビュー前のこちらのほうが上』とのこと。背中がよくて、走りっぷりも素晴らしいようです」

 高い期待のなか、同馬は11月5日にデビューする予定だったが、直前の調教で「まだ物足りない」と、小島調教師が判断。デビュー戦は11月の後半へ先送りとなった。

 それでも、「変わらずスタッフの評価は高く、今の状態でも勝ち負けできるくらいの能力のようです」と、先述のトラックマンは言う。むしろ期待が高いからこそ、万全を期したと考えるべきかもしれない。

 重賞戦線でも奮闘している兄たち以上の力を秘めているというオーロラエンブレム。期待されるのは、母と同じくGIの勲章を手にすることだろう。完璧な仕上げで臨むであろう、デビュー戦の走りに注目したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara