10月30日に行なわれるGI天皇賞・秋(東京・芝2000m)。「秋の盾」と呼ばれる一戦は、スピード豊かなスターが集う豪華なレースとなった。

 中心となるのは、以下の4頭だろう。

 これまでにマイルGIを4勝し、今回2000m戦でのタイトル獲得を狙うモーリス(牡5歳)、昨年の3歳牝馬路線で奮闘し、ここにきて牡馬相手に重賞連勝中のルージュバック(牝4歳)、そして海外GI2勝の快速馬エイシンヒカリ(牡5歳)に、1800〜2000m戦ではトップクラスの力を見せるアンビシャス(牡4歳)という面々だ。

 ただ、モーリスは2000m以上のレースでは勝ち星がなく、ルージュバックとアンビシャスはGIタイトルを手にしていない。エイシンヒカリも昨年の同レースでは先手を取れずに9着と惨敗。好メンバーがそろったとはいえ、人気馬それぞれが不安を抱えていることは否めない。

 ということは、人気薄の伏兵馬が戴冠する可能性は大いにある。

 そこで、過去10年の天皇賞・秋を振り返ってみると、上位よりやや人気の低い馬たちがかなりの確率で頂点に立っている。1番人気が4勝している一方で、5番人気の馬が4勝もしているのだ。他にも、4番人気が1勝、7番人気が1勝と、馬券の「ヒモ候補」たちのほうが健闘している。

 ならば、馬券的な妙味を考えても、狙い目は5〜7番人気の馬たちだ。今年のメンバーで言えば、ステファノス(牡5歳)、リアルスティール(牡4歳)、ラブリーデイ(牡6歳)あたりが該当するのではないか。

 勝ち馬を考えるとすれば、ここからさらにその候補を絞りたい。判断材料になるのは、過去10年の勝ち馬の「臨戦過程」だ。

 最も多いのは、GII毎日王冠(東京・芝1800m)をステップに臨んできた馬。それが、6頭もいる。続いて、GI宝塚記念(阪神・芝2200m)からの直行組が2頭いて、GII札幌記念(札幌・芝2000m)とGII京都大賞典(京都・芝2400m)経由がそれぞれ1頭ずつとなっている。

 毎日王冠組が圧倒的に多いのは明らかだ。しかも毎日王冠経由は、そこで敗れていながら、相手レベルが上がる本番で金星をつかんでいるケースが多い。2012年に毎日王冠9着から巻き返したエイシンフラッシュはその典型だろう。他では、2014年のスピルバーグ(毎日王冠3着)や、2013年のジャスタウェイ(毎日王冠2着)、2008年のウオッカ(毎日王冠2着)などがいる。

 そのうち、スピルバーグとジャスタウェイは、天皇賞・秋が初のGI制覇。それまで、一戦級相手に勝利したことがなかった馬たちだ。彼らは夏の間に成長を遂げ、ちょうど毎日王冠から天皇賞・秋にかけて、大きな変貌を遂げたのだろう。

 天皇賞・秋が初の戴冠と言うなら、2011年のトーセンジョーダンや、2009年のカンパニーなどもそうだ。偶然とはいえ、これはこれで興味深いデータである。

 そうした点を考慮すると、面白いのはステファノスだ。

 昨年の天皇賞・秋でも、10番人気ながら2着に飛び込んできたステファノス。その後も健闘止まりで、GIの勲章はまだ得られていないが、無事に夏場を過ごして急成長の兆しが見え隠れする。

 期待された前走の毎日王冠は5着も、直線で前が詰まって、残り100mまでほとんど追えない不運なレースだった。進路が開いてからは勢いよく伸びており、決して悲観するような内容ではなかった。

 5歳秋という競走馬としての充実期を迎え、馬の状態については、陣営も自信を持っている。スピルバーグやジャスタウェイのように、毎日王冠の敗戦を糧にして、初のGI勝利を飾ってもおかしくない。

 ただし、このステファノスは5番人気前後の馬。より高い配当を目指す、穴党の競馬ファンとしては物足りないかもしれない。

 そこで注目したいのは、サトノノブレス(牡6歳)だ。

 2013年のGI菊花賞(京都・芝3000m)の2着馬で、これまで重賞4勝を挙げているが、菊花賞以外のGIではことごとく馬群に沈んでいる。だが、6歳となった今年、GII、GIIIでは惨敗することがなくなって、明らかにパフォーマンスはワンランク上がっている。

 例えば、春先のGIII中日新聞杯(3月12日/中京・芝2000m)では、最重量の58kgを背負いながら横綱相撲で快勝。夏前のGIII鳴尾記念(6月4日/阪神・芝2000m)では、1分57秒6のコースレコードを記録して勝利した。さらに、前走のGIIオールカマー(9月25日/中山・芝2200m)でも、昨年のGI有馬記念(中山・芝2500m)を制したゴールドアクターとクビ差の接戦を演じた。

 前述のジャスタウェイやトーセンジョーダンなど、GIで足りなかった馬が重賞戦線で安定した結果を出し始めて、天皇賞・秋でGI初勝利を飾った馬は多い。6歳のベテランではあるが、2009年には8歳にして変貌を遂げたカンパニーが勝利したケースもある。食指が動く馬が多く、人気の盲点となれば、買いだ。

 秋の古馬「三冠」の第1弾となる伝統の一戦。今年も、この舞台で初のGIタイトルを獲得する馬が誕生するのか。それとも、実績のある馬が再び栄冠に輝くのか。秋深まる東京競馬場で行なわれる、熾烈な争いに注目したい。

河合力●文 text by Kawai Chikara