東京が「3位」に上昇した理由:世界の都市総合力ランキング2016年

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「世界の都市総合力ランキング」の2016年の結果が発表され、東京がついに3位に上昇した。2020年のオリンピック開催を前に、東京は今後どのように発展していくのだろうか。

一般財団法人森記念財団都市戦略研究所が2008年より調査、発表している「世界の都市総合力ランキング」。その2016年の結果が発表された。2008年から4位をキープしていた東京だったが、今年は昨年3位だったパリを抜き、ついに3位となった。

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世界の都市総合力ランキングとは、地球規模の都市間競争下で、魅力的でクリエイティヴな人々や企業を惹きつける“都市の磁力”こそが「都市の総合力」であるという観点に立ち、世界の主要42都市(16年に2都市追加)の総合力を「経済」「研究・開発」「文化・交流」「居住」「環境」「交通アクセス」という分野ごとに、評価、順位づけしている。

都市研究に関する世界的権威である故・ピーター・ホール卿をはじめとする学識者によるコミッティーを設置し、各界の有識者等の参画と、国際的な専門家によるピアレヴュー(第三者評価)を得たランキングである。

10月18日に行われた「世界の都市総合力ランキング」記者発表では、森記念財団都市戦略研究所所長の竹中平蔵と森記念財団理事の市川宏雄が登壇。市川は2016年の結果を、「東京はいまあらゆる面で上昇傾向にあります。今回のランクアップの要因は、海外からの訪問者の増加と、円安による物価水準や住宅平均賃料の下落、羽田空港の国際化などが挙げられます。さらに経済面では法人税率を下げたのが大きい。『経済』では42都市トップを維持しています」と分析する。

1位に選ばれたロンドンは、2012年、当地でのオリンピック開催を機にニューヨークを抜き1位となり、今年まで5年連続で1位を維持している。2位のニューヨークは「研究・開発」においてはトップを堅持しているが、全体的に大きな変動は見られなかった。パリは15年に起きた同時多発テロの影響もあって海外からの訪問者が減少し、経済面での停滞の兆しがみられる。アジアでは上海がすべての分野においてスコアを上げ、昨年の17位から12位へ大きく躍進した。

なお、今年度は初めてとなる試みとして、各都市の差別化を図るため総合力に加え「都市のイメージ調査」が実施された。人々の意識のなかにある「都市のイメージ」を分析することでそれぞれの都市性を明らかにし、今後の都市イメージブランディング戦略に資することを目的としている。世界41都市に居住する2,132人に対してアンケート調査を実施。対象はロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポール、ソウル、香港、上海の8都市となる。

2016年にはじめて発表された「都市のイメージ調査」。世界最大規模の都市圏人口を抱える東京は、「CROWDED/混雑した」という印象が連想されている一方で、「ORGANIZED/整理されている」というように効率的かつ秩序だった都市としての印象や、「TECHNOLOGY/テクノロジー」や「MODERN/現代的」という先進的なイメージも同時に連想されている。ランドマークについては、「SKYTREE/スカイツリー」や「TOKYO TOWER/東京タワー」という単語が挙げられているものの、それらの単語はほとんど日本人の回答者からしか挙がっていない。東京のイメージは「世界的に認知されているランドマークを有していないものの、先進的かつ効率的な大都市である」といえる。

このイメージ調査で、東京は「CROWDED/混雑した」という回答が最も多く、次いで「TECHNOLOGY/テクノロジー」、「MODERN/現代的な」というイメージがランクインした。東京のランキングの特徴としては、「東京に来たことのある人」と「来たことのない人」の間でイメージが異なるのだという。東京に来たことがない人は「FAR/遠い」「MANGA/漫画」「STRESSFUL/ストレスが多い」というイメージをもち、一方で東京に来たことがある人は「POLITE/礼儀正しい」「SAFE/安全な」「CLEAN/清潔な」というイメージをもっているという。

竹中は「東京の潜在力は非常に強い。2009年の第2回世界の都市総合力ランキング発表のときに、どの指標がよくなれば東京が1位になるのかをシミュレーションしました。当時の課題は3つ。『経済環境の改善』と『規制緩和』と『国際交通インフラの改善』です。しかし、今回の上昇については、そのうちのひとつがドラスティックが改善したわけではなく、ほかの分野が緩やかに上がっていったためのもの。そう意味では、これから上がっていく余地はまだ大いにあると感じています。思い切って改革を進めたら、ランキングは上がるのではないでしょうか」と発言した。

20年の東京オリンピックに向けて、さらなる向上を目指す東京。このランキングを指針に、今後の東京を考えてみるとよいだろう。

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