今年8月末に北朝鮮北東部の中朝国境地帯を襲った台風10号(ライオンロック)の影響によって、国境監視設備のほとんどが破壊された。北朝鮮当局は脱北行為を未然に防ぐため国境警備を強化しているが、多数が国境を越え中国側の脱北者収容施設が満杯になる事態が起きているという。

対北朝鮮情報筋によると、咸鏡北道(ハムギョンブクト)の会寧(フェリョン)と茂山(ムサン)では、すでに100人以上が国境を越えて中国に入った。また、ブローカーに脱北の手伝いを頼んでいる人も100人以上に達する。

穏城(オンソン)や慶源(キョンウォン)など、国境沿いの他の被災地を含めると、脱北者の数はさらに増える可能性がある。

これを裏付けるように、韓国の公共放送KBSは、中国側の脱北者収容所が満杯になっていると伝えた。

咸鏡北道の穏城と豆満江を挟んで向かい合う中国吉林省延辺朝鮮族自治州の図們市郊外にある脱北者収容所は、水害以降に脱北し中国公安当局に逮捕された人で溢れかえっているという。

脱北者支援団体の関係者によると、9月29日と30日の2日間で6人の脱北者が逮捕、収監された。

中国人のトラックドライバーによると、北朝鮮と中国両国の国境に張られていた鉄条網がすべて流されたため、いつにもまして脱北が容易になっているとのことだ。ブローカーは1800元(約2万8000円)で脱北を請け負っている。

中国公安当局に逮捕された脱北者は、中朝両国間での書類のやり取りを経てから北朝鮮に強制送還されていたが、今では北朝鮮の保衛部(秘密警察)の関係者が中国にやってきて、連行していると前述の情報筋が証言した。収容所に収監された脱北者が多すぎて、手に負えないため、手続きを簡素化したものと見られる。

北朝鮮当局は、被災者の住宅建設より、国境警備や金日成氏の銅像の再建に力を入れており、被災者への配給も不足している。さらにコメ価格が上昇しているため、食糧難を乗り切り、冬を越す資金を稼ぐために脱北する人が増えるものと見られる。