■ダービージョッキー
◆大西直宏が読む「3連単のヒモ穴」

 先週は3歳「牝馬三冠」の最終戦、秋華賞が行なわれました。続いて今週は、3歳牡馬クラシック三冠の最終戦、菊花賞(10月23日/京都・芝3000m)が開催されます。

 いろいろなところで触れられていますが、今年は春の二冠、皐月賞(4月17日/中山・芝2000m)と日本ダービー(5月29日/東京・芝2400m)は、それぞれ着順は違っても、上位入線5頭がまったく同じで、しかも上位3頭の顔ぶれも一緒という、非常に稀(まれ)な結果となりました。そのうえで、日本ダービーでは3着までと4着以下とでは決定的な差があったと思います。それだけ、上位3頭が抜けた存在だったと言えるでしょう。

 その春の勢力図は、秋になっても大きな変化はないと思います。「3強」の一角であるマカヒキ(牡3歳)は、凱旋門賞こそ敗れましたが、前哨戦のニエル賞は快勝しています。

 そして"国内組"の2頭、ディーマジェスティ(牡3歳)はセントライト記念(9月18日/中山・芝2200m)で、ラジオNIKKEI賞(7月3日/福島・芝1800m)の勝ち馬ゼーヴィント(牡3歳)を相手に横綱競馬で快勝。サトノダイヤモンド(牡3歳)は神戸新聞杯(9月25日/阪神・芝2400m)で、夏の上がり馬を相手に勝利を挙げました。それも、ともに余裕残しの競馬で。

 こうなってくると、菊花賞はやはりこの2頭が中心になると思います。ディープインパクト産駒が芝の長距離戦で勝っていないなどと一部で言われていますが、今年はそんなジンクスも関係なく、ディープ産駒のディーマジェスティ、サトノダイヤモンドのどちらかが勝つのではないでしょうか。

 では、この2頭のどちらが上なのか?

 この結論を出すのは、なかなか難しいところです。ともにディープ産駒ながら、ややタイプが異なり、道中の流れや位置取りによって、結果が変わってきそうだからです。

 ディーマジェスティは、いかにもディープの子らしい、圧倒的な瞬発力が武器。その決め手が生きる流れになれば、目標がはっきりしているだけに、有利になるでしょう。

 一方、サトノダイヤモンドは、ディーマジェスティほど切れる決め手はないものの、長くいい脚が使えます。長距離戦らしいジリジリと脚を使うような、持久力勝負の競馬になれば、たとえ目標にされても押し切れるでしょう。

 とにかく、他馬の動きなども関係してくるため、よく展開を読んだほうがいいですね。この原稿を書いている段階では、まだそこまで読めていませんが、何となく今度勝つのは、サトノダイヤモンドのような気がしています。

 昔から、皐月賞は「最も速い馬」、日本ダービーは「最も運のある馬」、そして菊花賞は「最も強い馬」が「勝つ」と言われています。速い馬はディーマジェスティ、運のある馬はマカヒキといった印象で、強い馬というイメージがあるのはサトノダイヤモンド。最後の一冠は、同馬が手にするのではないでしょうか。

 強い馬が強い競馬をして勝つ。とすると、馬券的には大きな配当は望めませんが、これも競馬の醍醐味だと思います。競馬はギャンブルでもあるので、馬券で「大きく儲けたい」という気持ちは誰もが持っているでしょうが、強い馬に賭けて、強い競馬で勝ってくれれば、たとえ配当は大きくなくても、大儲けしたときと同じぐらいの喜びを得られると思いますよ。

 さて、「2強」に続く"第3の存在"はかなりの混戦です。トライアルを見る限りでは、神戸新聞杯2着のミッキーロケット(牡3歳)、3着のレッドエルディスト(牡3歳)らが、その候補となりそうです。特にレッドエルディストは、まだ仕上がり途上で、明らかに叩き台というレースぶりでした。本番で変わってくる要素は、多分にあると思います。

 ただ、未知な魅力という点から、僕はトライアル組ではない路線から参戦するウムブルフ(牡3歳)が気になります。この馬を今回の「ヒモ穴馬」に取り上げたいと思います。

 聞けば、もともとデビュー当時から期待が高かった素質馬だったそうですが、春先はまだ、気性的な面も、肉体的な面も、若さばかりが目立って、順調にクラシックロードに乗ることができませんでした。しかし、日本ダービーが開催された週の前日の土曜日、ダービーと同じ舞台(東京・芝2400m)で行なわれた500万条件を完勝。そこでダービーに出走できなかった鬱憤を晴らすと、およそ3カ月間の休みを挟んで臨んだ8月の1000万条件(札幌・芝2600m)も、2着に5馬身差をつける圧勝劇を演じました。

 その1000万条件のレースは、相手に恵まれた感があり、また馬場が悪かったこともあって、勝ち時計も際立ったものではありませんでした。そういう意味では、なかなか高い評価はしづらいのですが、タフな馬場での長距離戦で、終(しま)いまで脚が上がらずに伸び切ったことは、十分に評価していいと思っています。完全にひと皮むけた印象でしたね。

 今回は、そのレース以来のぶっつけです。これがまた、食指を動かされるところです。何と言っても、同馬を管理するのは堀宣行厩舎ですからね。休み明けでも、狙ったレースにはきっちり仕上げてきます。馬券的にも面白い存在だと思います。

 この馬も「2強」と同じくディープ産駒。「2強」を脅(おびや)かすまでに至るかどうかはわかりませんが、注目したい1頭です。