航空自衛隊にも導入されているF-35A。F-2戦闘機などと比べると、ずいぶんと特徴的な「体形」です。そこには、従来機とは発想から異なる「納得の理由」が反映されていました。

意外と小さかった? 実物大F-35A

 東京ビッグサイト(東京都江東区)で2016年10月12日(水)から4日間にわたり開催された「2016年国際航空宇宙展」において、航空自衛隊の次期主力戦闘機ロッキード・マーティンF-35A「ライトニングII」の、実物大モックアップ(模型)が展示されました。

 あくまでも模型ではありますが、機体の下に潜れるなど自由に見学可能だったこと、またコックピットに搭乗できたことなど、実機では無いがゆえかえって間近でF-35Aを体感できる機会とあって、連日、多くの見学者を集めました。


体形が「ずんぐり」している戦闘機F-35A「ライトニングII」(写真出典:アメリカ空軍)。

 SNSなどにおける反応を見ると、「意外と小さい」という印象を抱いた人が少なくないようです。それもそのはずで、F-35Aは現在、航空自衛隊が配備する戦闘機のなかでは最小であるF-2とほぼ同等の、全長15.4m、全幅10.7mしかありません。

 F-35Aは寸法の上では小さく、とてもずんぐりむっくりした、悪くいえばメタボ(メタボリックシンドローム)のような見た目で、実際にも非常に重い戦闘機です。その最大離陸重量はおよそ31トン。これは、全長19m以上と遥かに巨大な空自戦闘機F-15Jにも匹敵します。

 それゆえに一見すると「カッコイイ戦闘機」とは無縁な、野暮ったい姿に思えるかもしれませんが、ところがこの見た目にこそ、「F-35Aのすごさ」が秘められているのです。

 通常、戦闘機は小さければ小さいほど有利です。空気抵抗を最小限に抑えられますし、機体構造も軽くできます。ところが、小さいとどうしても装備品を機体の外に搭載せねばならず、実際、空自のF-2などはミサイルや爆弾、追加の燃料タンク、前方監視赤外線センサー(FLIR)など多くの装備を外付けしています。

 しかし、F-35Aは大容積の機体のなかに、これらをすべて収容できます。ミサイルや爆弾は胴体下のウェポンベイ(兵器庫)内部に格納、また機内燃料タンクの容量は、F-2の機内タンクと外部燃料タンク2本分にほぼ匹敵。前方監視赤外線センサーは機首部に標準搭載されるほか、あらゆる方向を自動監視する「全球覆域状況認識センサー(EO-DAS)」など、F-2には存在しない多くの高性能な装備も詰め込んでいます。


F-35Aモックアップのウェポンベイ内部。左から「JDAM GPS誘導爆弾」、「AIM-120空対空ミサイル」がふたつ、右端が「JSOW GPS巡航ミサイル」(関 賢太郎撮影)。

 加えて、エンジンを1基しか搭載しないにもかかわらず、そのパワーはエンジン2基を搭載するF-15にほぼ匹敵。大重量を支えるに十分といえます。戦闘機を構成する部品のなかで最も大きいエンジンを1基で済ませているのですから、単純にエンジンまる1基ぶんの容積や重量を、そのほかの搭載物にあてることを可能にしています。

 現代の空中戦は、高度なレーダー・センサーや妨害装置、ネットワークシステムといった電子機器や、それらを制御するコンピューター同士の戦いです。さらに、機体の外側を「綺麗(クリーン)」に保てるF-35はレーダー反射をも低減でき、優れたステルス性も獲得しています。

F-35は戦闘機だけど「戦闘機」じゃない?

 F-35は重いぶん、機動性などに劣るのではないかという指摘もあります。確かにそれは、一部事実かもしれません。しかしほかの戦闘機も、装備品を外部搭載してしまえば重くなります。そして外部搭載すればするほど、F-35以上に空気抵抗が増えてしまうことを考えれば、それほど大きな弱点とはいえないでしょう。

 F-35は、卓越したセンサーで敵を先に発見し、ステルス性を生かして自らは発見されることなく、遠くからミサイルを射撃することを基本とします。いわば、新しい世代の「情報共有ネットワークを礎とする航空戦」における、「兵装投射・センサー端末」であり、“既存の戦闘機とは全く別種の兵器”です。


F-35Aモックアップのコックピット。実機の射出座席は、先ごろ生還実績のべ7500人を突破したマーチン・ベイカー社製(関 賢太郎撮影)。

 パイロットもこれまでの戦闘機とは異なり、単に「戦士」としての資質だけではなく、“F-35というシステム”を使いこなす「オペレーター」としての能力も要求されるようになりました。

 ロッキード・マーティン社はこれについて、従来の常識を根底から覆す「ゲームチェンジャー」と表現しています。実際、アメリカ空軍のF-35Aは、既存の戦闘機とのある演習において、1度も発見されることなく一方的に27機を撃墜するという、無敵の戦果をあげています。

 F-35の見た目は、「カッコイイ戦闘機」とは無縁であるかもしれません。しかしそれは、もはや従来の価値観では測りえない、新しい世代の設計思想を反映した「新しい価値観による美しさ」を持っているからだといえます。

【写真】F-16戦闘機と比べずんぐりなF-35


奥がF-35で、手前が1974年に初飛行し、現在もアメリカを始め各国で使用されているF-16戦闘機。空自のF-2もF-16が原型機(写真出典:アメリカ空軍)。