1人BBQ、1人遊園地など、1人行動をこよなく愛するライター朝井麻由美が、玩具やデジタルグッズを使ったぼっちライフを追求していく連載です。

人見知りにとって、美容院での会話問題はいつだって頭を悩ませるトピックスのひとつだ。「お仕事は何をされているんですか? 」、「今日とかはお休みですか? 」、「お休みの日とかはどんなことをされますか? 」、こちらの気も知らずに、美容師のヤツらは悪気なく聞いてくる。何だそれくらい、と思う人もいるかもしれない。だが、私はどこの馬の骨とも知らない人相手にいちいち自分のプロフィールについて語りたくない。おぬし、なぜ拙者の仕事や休みについて探ってくるのだ、おのれ何奴…という気持ちになるのだ。

「お仕事は何をされているんですか? 」に対して、「いやー、いろいろ……」と適当に濁してきたのだが、先日事件が起こった。以前こちらのサイトで書いた一人花見の記事が拡散されすぎた結果、なんと美容師の目に入っていたのだ。その日、髪を切り終えてブローをされている間、おもむろに美容師は切り出した。

「そういえば……、お花見されてましたよね?」

(……! )

「1人で」

(………! )

「Facebookで記事がシェアされてきて、この人見たことある! って思ったんですよ! 」

(やめたげて……)

常々仕事について聞かれないように細心の注意を払っていたというのに、そういうレベルの話ではなかった。以来、なんとなく美容院に足が向いていない。髪は伸びっぱなしになっている。美容院で話しかけられるのが嫌なら、もうこうするしかないだろう。話しかけてくる人もいない、その代わり切ってくれる人もいない、切るのも私、切られるのも私、そんな「1人美容院」をやろう。

用意したのは、散髪用のマントと、各種ハサミ類。

「ジャンボ散髪マント」(コジット製)

「ジャンボ散髪マント」(コジット製)

左が「マイビューティーツール ヘアカッティングキット【ハサミ 前髪カット】」(ETUDE HOUS製)、中央が「ツーウェイ・ダイヤルヘアカッター クシ付き オレンジ MB-306」グリーンベル製、右が「クレアクリップ」(コモライフ製)

もちろん私に美容師の心得はない。したがって、今回の大きな目的は髪を切ることそのものというよりも、“髪を切っている間に話しかけられることのない心地よいシチュエーション”を味わうことである。

まずはマントをかぶる。そして髪を固定するための道具を装着する。

このクリップのような道具で髪の毛を挟み、それに沿ってカットすれば、まっすぐ切れるらしい。しかし、そもそもこの道具を真っ直ぐ装着すること自体が難しいうえに、普段すべての髪を完全にまっすぐ切ってもらっているかというと、おそらくそうではないため、さっそく路頭に迷うことになる。

結構つけづらい

結構つけづらい

ジャキ、ジャキ……、と申し訳程度にハサミを入れる。それでも結構切れている感触はあり、楽しい。自分の髪型がおかしなものになってしまう不安よりも、ジャキジャキとした感覚や、美容院に行かずに自分で勝手に切ってしまっている背徳感が上回り、思っていた以上に気分が高揚する。

次は、特殊なすきバサミに持ち替えてみた。これはブラシに刃物がくっついているような作りになっていて、これを使って髪をとかすだけで、“すく”ことができるらしい。

だんだん大胆な気持ちになってきた。よく見えないけど後ろ髪も切ってしまおう。

もくもくとハサミを動かす。その間、話しかけてくる人は誰もいない。仕事のことも、休みの日のことも聞かれない。快適だ。しかも、髪をジャキジャキ切る爽快感と、髪を切られる開放感の両方を同時に味わえる。

お片付け

お片付け

マントにたまった髪をそのままゴミ箱へ

マントにたまった髪をそのままゴミ箱へ

切り終わって左右の髪の長さをチェックしたところ、大きな違いもなさそうだった。1人美容院、案外いけるのではなかろうか。

そう思って翌日、改めて鏡を見てみたところ、右側の髪のほうが若干長かった。右利きなので、どうしても左側のほうがたくさん切れてしまったのだろう。だが、それから1週間たてども、誰も左右の長さの違いを指摘する人はいなかった。右側のほうが髪の伸びるスピードが早い人なんだな、くらいにとらえられているのだろうか。

近いうちに美容院に行こうと思う。「……これ、自分で切りました?」、美容師はきっとこう言ってくる。無駄な会話のタネを増やしてしまっただけかもしれない。美容師に問われたら、なんて答えようか。

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※なお、「クレアクリップ」は現在生産終了しており、一部の店舗で取り扱いが残るのみ


>> 美容院で話しかけられるのが苦手だから、1人美容院をやってみた の元記事はこちら