日本ダービー馬マカヒキ不在の菊花賞。皐月賞馬ディーマジェスティ(牡3歳/美浦・二ノ宮敬宇厩舎)と、日本ダービーでハナ差2着のサトノダイヤモンド(牡3歳/栗東・池江泰寿厩舎)が、それぞれ前哨戦をきっちり勝利して、ここに臨んでくる。

 筆者はディーマジェスティ中心の見解だ。ディープインパクト産駒はこれまで、菊花賞は未勝利。2着に2013年のサトノノブレス、2015年のリアルスティール、3着に2011年のトーセンラーがいるが、勝利には至っていない。

 菊花賞だけでなく、長距離戦はどちらかというと苦手としており、3000m以上のレースでは40戦以上して未勝利のまま。ディープインパクト産駒にとって、菊花賞は"鬼門"のレースとも言える。

 しかし、ディーマジェスティはそんなジンクスを破る期待をかけられる魅力的な馬だ。この春、皐月賞を制し、ディープインパクト産駒として初めて同レースを勝利。すでに父のジンクスのひとつを破っている。

 ディーマジェスティがこれまでのディープインパクト産駒と違うのは、その血統構成にある。ディープインパクト産駒として母の父にブライアンズタイムを持つ馬としても初めて重賞、そしてGIを勝った馬であり、さらに言うと、ブライアンズタイムの父ロベルトを血統に持つディープインパクト産駒として、初めてJRA GI(海外ではビューティパーラーが仏1000ギニーを勝利)を勝った馬でもあるのだ。血統の面からも、皐月賞を勝ったことからも、今までのディープインパクト産駒と同様に考える必要はないだろう。

 むしろディーマジェスティの血統は菊花賞向きだ。母の父であるブライアンズタイム産駒は1994年ナリタブライアン、1995年マヤノトップガンと2頭が勝利している。また、ディーマジェスティ同様に母の父ブライアンズタイムの馬としても2009年の勝ち馬スリーロールス(父ダンスインザダーク)がいるほか、2012年天皇賞・春の勝ち馬ビートブラック(父ミスキャスト)もおり、長距離GIには実績のある種牡馬である。

 祖母の父サドラーズウェルズも長距離戦には強い種牡馬だ。欧州では数々の名馬を出し、1992年から2004年にかけて13年連続で英愛リーディングサイアーに輝いた大種牡馬である。国内ではサドラーズウェルズを祖母の父に持つ馬は2013年の菊花賞をエピファネイアが勝利している。エピファネイアは父シンボリクリスエス(父の父ロベルト)、母の父スペシャルウィーク(父サンデーサイレンス)という配合なので、父と母の父を逆にすればディーマジェスティと共通点の多い配合馬とも言える。

 ディーマジェスティの牝系は、英ダービー馬のジェネラス、凱旋門賞を連覇したトレヴ、"鉄の女"と言われたトリプティク、ダートGI馬フリオーソと、世界的にも活躍馬が続出している名門ファミリーだ。

 上記のように、ディーマジェスティの血統を見ると、皐月賞よりむしろ菊花賞のほうが合っているのではないかと思えるほど。日本ダービーは状態が万全ではなかった面もあったようだが、成長力が期待できる血統でもあり、この秋はさらなるパワーアップが見込める。クラシック2冠制覇を期待したい。

平出貴昭(サラブレッド血統センター)●文 text by Hiraide Takaaki