3歳「牝馬三冠」の最終決戦となるGI秋華賞(10月16日/京都・芝2000m)。V候補筆頭だったシンハライトが直前に回避したことで、一気に混戦模様となってきた。

 主力となるのは、GIオークス(5月22日/東京・芝2400m)で僅差の3着と好走し、秋華賞トライアルのGIII紫苑S(9月10日/中山・芝2000m)を快勝したビッシュだろう。ただ、GI勝利はなく、シンハライトほどの揺るぎない存在とは言い難い。

 実績で言えば、一冠目のGI桜花賞(4月10日/阪神・芝1600m)を勝ったジュエラーが抜けている。しかし、桜花賞のあとに骨折した同馬は、復帰戦となった前哨戦のGIIローズS(9月18日/阪神・芝1800m)で11着と大敗。人気にはなるだろうが、不安は拭えない。

 こうなってくると、波乱の気配を感じる人も多いのではないだろうか。

 そもそも、秋華賞と言えば「荒れるGI」というイメージが強い。小回りの京都・芝2000mということもあって、"まぎれ"が生じやすいコースということもある。実際に2008年には、11番人気のブラックエンブレムが優勝し、2着に8番人気ムードインディゴ、3着に16番人気プロヴィナージュが入って、3連単は1098万2020円という超高配当が飛び出している。

 だが、秋華賞は本当に「荒れるGI」なのか。

 過去10年の秋華賞の傾向を見てみると、決してそうではないことがわかる。2008年こそ大荒れとなったが、それ以外の年は、むしろ「堅いGI」と言っていいほどの決着で収まっている。

 過去10年の勝ち馬は、2008年のブラックエンブレムを除いてすべて3番人気以上。また、上位3着までのうち、2頭以上が1〜3番人気だった年は、10回中7回を数える。つまり、傾向としては、上位の人気馬が確実にくるレースと言える。

 もちろん、人気以上のパフォーマンスを示して、3着以内に飛び込んだ馬もいる。ただその場合も、ほとんどは4〜8番人気の馬たちで、大穴が飛び込んでくることは稀(まれ)だ。そうなると、秋華賞は「荒れないGI」と考えたほうがいいのかもしれない。

 とはいえ、"穴党"の出番がまったくないわけではない。1〜3番人気の2頭に、やや人気の落ちる4〜8番人気の伏兵馬を1頭絡めるなどして、馬単や3連単で少しでも"オイシイ"配当を狙う手はある。

 そこで、過去の傾向から、人気薄でも3着以内に飛び込んできそうな"ダークホース"を、ここでは探ってみたい。

 その観点からいくと、秋華賞で明らかなトレンドとなっているのは、「夏の上がり馬」である。

 例えば、2014年のタガノエトワール。同馬は9月に未勝利を勝ち上がったばかりだったが、次走のローズSで2着と激走すると、その勢いのまま、秋華賞でも4番人気で3着に入った。

 2011年のキョウワジャンヌは、夏場に500万下、1000万下と条件戦を連勝したあと、ローズSでも3着と奮闘。前哨戦で力を示すと、秋華賞本番ではさらに強さを発揮して、7番人気で2着入線を果たした。これと同じようなパターンで、2007年のレインダンスも7番人気ながら2着と好走している。

 要するに、秋華賞でまず注目すべきは、夏に下級条件を勝ってトライアルで3着以内に入った馬だ。

 今年、そのパターンに当てはまるのは、紫苑Sで2着に入ったヴィブロスのみ。例年であれば、最も狙い目の"伏兵馬"だが、有力馬が次々に戦列を離れた今回は、同馬が3番人気以内になる可能性が高い。できれば、それよりも人気薄を狙いたいところ。

 そこで浮上するのは、ミエノサクシードだ。トライアルには出走していないものの、「上がり馬」として魅力的な1頭である。

 今年1月にデビューしたミエノサクシード。未勝利を卒業するまでに5戦を要し、その後も500万下条件をなかなか勝ち切れずにいた。しかし、9月に入ってから激変し、500万下、1000万下と連勝を飾る。しかも、2戦とも上がりは33秒台をマークし、強烈な切れ味で同世代のライバルや古馬たちを一蹴した。

 トライアルで同世代の一線級と戦っていない点が懸念されるが、それでも「上がり馬」が良績を収めている秋華賞。狙ってみる価値は、十分にある。

 また、違う視点からも伏兵が浮上した。昨年の秋華賞は1番人気のミッキークイーンが制したが、2着には5番人気のクイーンズリングが、3着には8番人気のマキシマムドパリが入って、中波乱となった。

 人気薄の2頭は、どちらも春の重賞で好走していた面々。クイーンズリングはGIIフィリーズレビュー(阪神・芝1400m)の覇者で、マキシマムドパリはGIIフローラS(東京・芝2000m)で3着に入線していた。「上がり馬」とは違うタイプで3着に食い込みそうな馬をピックアップするなら、このような実績の持ち主だろう。

 面白いのは、パールコードだ。

 同馬は、今春のフローラSで2着と好走している。その後は4カ月半にわたって休養に入ったが、復帰戦となった紫苑Sでは、5着とまずまずの走りを披露した。叩き2戦目の今回は、ある程度人気するかもしれないが、先述した秋華賞の3着以内の候補としては適しているだろう。

 イメージとは異なり、これまであまり荒れていない秋華賞。今年も上位人気の馬がその実力を見せつけるのか。それとも、2008年のような大波乱が起こるのか。本命不在で風雲急を告げる、3歳牝馬"最後の女王決戦"から目が離せない。

河合力●文 text by Kawai Chikara