【戸塚啓コラム】負けを恐れたハリルホジッチ監督。退屈な一戦に思う采配への疑問
熱心に応援した方には申し訳ないが、僕には退屈だった。10月11日にメルボルンで行われたオーストラリア対日本戦が、である。
試合当日のメルボルンは、細い糸で身体を刺されるような寒さに見舞われていた。暖かさが睡魔を呼び寄せるような気候ではなかったのだが、どうにも身体が前のめりにならなかった。
酒井宏樹が累積警告で出場停止となり、長友祐都もケガでチームを離脱していた。岡崎慎司もイラク戦で負傷した。そもそもFW陣は、武藤嘉紀と宇佐美貴史がケガでチームに合流できていない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からすれば、本田圭佑の1トップは窮余の策だったのだろう。
オーストラリアに負けるようなことがあれば、勝点差は「1」から「4」に開く。直接対決では追いつけない数字だ。チームを焦りから遠ざけるために、もっと言えば雑音のボリュームがこれ以上大きくならないために、手堅い試合運びを選んだのかもしれない。
それにしても、慎重過ぎたのではないか。
1対1に追いつかれたあとの戦いが分かりやすい。敵将ポステコグルーが後半37分までに3枚の交代カードを切り、そのすべてが攻撃を活性化する意図だったのに対し、ハリルホジッチ監督は後半37分にようやくひとり目の交代選手を投入した。
しかも、清武弘嗣の投入は小林悠の負傷によるものだった。2枚目のカードは本田圭佑に代わる浅野拓磨だったが、3枚目はセンターバックの丸山祐市である。小林と本田が退いたことで、リスタートの高さを失った手当としての投入だった。
ここから先は結果論である。
浅野の投入をもう少し早くしたり、斎藤学を送り込んだりすることで、相手守備陣にストレスをかけることはできなかったか。守り切るのではなく攻めることで失点のリスクを抑えつつ、2点目を狙うという選択肢はあっただろう。
負けたくない気持ちが先行することを、否定するつもりはない。ただ、オーストラリア戦の日本は、というよりもハリルホジッチ監督は、負けたくない気持ちがあまりにも強過ぎた。言い方を変えれば、負けることを恐れていた。
前半5分の原口元気のゴールシーン以外に、日本は決定機をいくつ作り出したか。前半28分の本田の左足シュートと、後半29分の小林のヘディングシュートだけだ。後半40分には原口のグラウンダーのクロスに浅野が飛び込んだが、フィニッシュには結びついていない。このシーンを含めても、相手守備陣を脅かしたのはわずかに3度である。
スリリングな攻め合いの末の1対1ではなく、息が詰まるような攻防が繰り広げられたわけでもない。オーストラリアは攻撃のキーマンを温存し、1対1に追いついてからようやく攻勢を仕掛けた。日本は試合終了までリスクを抑え、負けないことを最優先した。
熱心に応援した方には重ねて申し訳ないが、僕には退屈な一戦だった。勝ち点1を獲得したことに価値はあるものの、未来につながるゲームだったとは思えないからである。
試合当日のメルボルンは、細い糸で身体を刺されるような寒さに見舞われていた。暖かさが睡魔を呼び寄せるような気候ではなかったのだが、どうにも身体が前のめりにならなかった。
酒井宏樹が累積警告で出場停止となり、長友祐都もケガでチームを離脱していた。岡崎慎司もイラク戦で負傷した。そもそもFW陣は、武藤嘉紀と宇佐美貴史がケガでチームに合流できていない。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督からすれば、本田圭佑の1トップは窮余の策だったのだろう。
それにしても、慎重過ぎたのではないか。
1対1に追いつかれたあとの戦いが分かりやすい。敵将ポステコグルーが後半37分までに3枚の交代カードを切り、そのすべてが攻撃を活性化する意図だったのに対し、ハリルホジッチ監督は後半37分にようやくひとり目の交代選手を投入した。
しかも、清武弘嗣の投入は小林悠の負傷によるものだった。2枚目のカードは本田圭佑に代わる浅野拓磨だったが、3枚目はセンターバックの丸山祐市である。小林と本田が退いたことで、リスタートの高さを失った手当としての投入だった。
ここから先は結果論である。
浅野の投入をもう少し早くしたり、斎藤学を送り込んだりすることで、相手守備陣にストレスをかけることはできなかったか。守り切るのではなく攻めることで失点のリスクを抑えつつ、2点目を狙うという選択肢はあっただろう。
負けたくない気持ちが先行することを、否定するつもりはない。ただ、オーストラリア戦の日本は、というよりもハリルホジッチ監督は、負けたくない気持ちがあまりにも強過ぎた。言い方を変えれば、負けることを恐れていた。
前半5分の原口元気のゴールシーン以外に、日本は決定機をいくつ作り出したか。前半28分の本田の左足シュートと、後半29分の小林のヘディングシュートだけだ。後半40分には原口のグラウンダーのクロスに浅野が飛び込んだが、フィニッシュには結びついていない。このシーンを含めても、相手守備陣を脅かしたのはわずかに3度である。
スリリングな攻め合いの末の1対1ではなく、息が詰まるような攻防が繰り広げられたわけでもない。オーストラリアは攻撃のキーマンを温存し、1対1に追いついてからようやく攻勢を仕掛けた。日本は試合終了までリスクを抑え、負けないことを最優先した。
熱心に応援した方には重ねて申し訳ないが、僕には退屈な一戦だった。勝ち点1を獲得したことに価値はあるものの、未来につながるゲームだったとは思えないからである。
1968年生まれ。'91年から'98年まで『サッカーダイジェスト』編集部に所属。'98年秋よりフリーに。2000年3月より、日本代表の国際Aマッチを連続して取材している