一般的な自動車のナンバープレートでは、4桁の数字のとなりにひらがなが1文字記載されていますが、ここで決して見られないひらがなが数文字あります。なぜ、一部のひらがなは使用されていないのでしょうか。その理由を探りました。

アルファベットが使われることも

 自動車に取り付けられているナンバープレート。一部の特殊な車両をのぞき、その一般的な記載内容は上段左から順に、登録を行った運輸支局などの場所を示す地名、自動車の用途や大きさなどをしめす3ケタまでの数字、下段左に移って1文字のひらがな、そして右に「一連指定番号」と呼称される4ケタの数字です。

 このひらがなの部分、実はいくつか“使われていないひらがな”があります。


ナンバープレートが「わ」の自動車は「貸渡(レンタカー用)」(2014年8月、恵 知仁撮影)。

 そこに記載されるひらがなは、その文字ごとに意味する内容が決められており、「自家用」「事業用」「貸渡(レンタカー用)」「駐留軍人・軍属私用等」という形に大別され、それぞれに42字のひらがなが割り当てられています。「駐留軍人・軍属私用等」にはアルファベットも使用され、具体的には以下の通りです(軽自動車は異なる)。

・自家用
さすせそ たちつてと なにぬねの はひふほ まみむめも やゆ らりるろ

・事業用
あいうえ かきくけこ を

・貸渡(レンタカー用)
わ れ

・駐留軍人・軍属私用等
E H K M T Y よ

 現行のひらがなは46字で、ナンバープレートに使用されているひらがなは42字。よって、使われていないものが4つあることになります(軽自動車も同様の4文字が使われていない)。

 それは「お」「し」「へ」「ん」。なぜ、これら4字は使用されていないのでしょうか。

「お」「し」「へ」「ん」はなぜNG?

 自動車のナンバープレートにひらがなの記載が加えられたのは、1955(昭和30)年のことです。このとき、それぞれの文字が持つ意味も割り当てられました。そして同時に「お」「し」「へ」「ん」の4字が不採用になっています。

 その理由について国土交通省自動車局に問い合わせたところ、「当時の正確な記録は残されていない」そうですが、「視認性を重視したほか、利用者が悪いことを連想する文字を排除したのではないか」とのこと。局内では、「お」は「あ」と誤認されやすい、「し」は「死」を連想する、「へ」は「屁」を連想する、「ん」は発音しづらいためではないか、といわれているそうです。

 ちなみに、ナンバープレートのひらがなは、各地方の運輸支局または自動車検査登録事務所でナンバーが払い出される際、用途ごとにあいうえお順で自動的に割り振られています。

 1999(平成11)年から、全国でナンバープレートに「希望番号制」が導入され、その4桁の番号(一連指定番号)を選べるようになりました。同様に、ひらがなも選べるようにならないのでしょうか。

「かつて利用者のニーズから『一連指定番号』を選べるようになりましたが、同様のニーズがあれば、ひらがなも自分で選べるようになるかもしれません」(国土交通省自動車局)

 ナンバープレートでは「希望番号制」が導入されてから、しばしば「語呂合わせ」を見かけるようになりました。もし「希望ひらがな制」が実現したら、それがさらに充実することでしょう。

【写真】昭和20年代のナンバープレート


1951年に「道路運送車両法」による自動車の登録制度の確立した当時のナンバープレート(画像出典:国土交通省)。