厳選!2歳馬情報局(2016年版)
第17回:ミスエルテ

 ここ数年の日本競馬において、立て続けに活躍馬を輩出している厩舎がある。栗東トレセン(滋賀県)の池江泰寿厩舎だ。

 2011年の三冠を含めてGI6勝という実績を残したオルフェーヴルを筆頭に、昨年の古馬GIを2勝したラブリーデイ(牡6歳)、昨年の3歳牝馬戦線で二冠を達成したミッキークイーン(牝4歳)など、3歳クラシックや古馬戦線で話題となる馬を毎年送り出している。

 今年も、管理馬のサトノダイヤモンド(牡3歳)が3歳クラシックで活躍。GI日本ダービー(東京・芝2400m)ではハナ差2着と奮闘した。大レースには何かしら有力馬を送り込むほどの、まさに日本競馬界きっての名門厩舎だ。

 そんなトップチームにおいて、来春の牝馬クラシックでの活躍が見込まれている、厩舎期待の2歳馬がいる。ミスエルテ(牝2歳/父フランケル)である。

 数多くの名馬に携わってきた池江調教師が、同馬に惚れ込むのは無理もない。その血統が何より素晴らしい。父はヨーロッパで14戦全勝、うちGI10勝を挙げたフランケル。引退後、種牡馬となった「怪物」の初年度産駒である。

 母のミスエーニョも、現役時代にアメリカのGIデビュータントS(アメリカ・オールウェザー1400m)を制した牝馬。両親が海外GIを制しているミスエルテは、極上の配合で生まれた"世界レベル"の1頭なのだ。

 さらに、幼い頃からその"動き"も圧巻だったという。良血馬らしい素質の片鱗を早々に示していたようで、育成を担当したノーザンファーム早来の岡真治氏は、春の取材でこう絶賛していた。

「フランケルが父というのもすごいですが、この馬の動きも相当なものです。あまり見たことのない動きで、全身がバネのようです。気性も素直で前向きです」

 牧場で順調に育ったミスエルテは、すでに池江厩舎に入厩。年上の馬たちと一緒に調教し、先輩たちを相手にしないほどの動きを披露しているという。おかげで、トップ調教師の期待も日に日に増しているそうだ。その様子を関西競馬専門誌のトラックマンが伝える。

「器はかなりのものという評価で、池江調教師は『ダイヤモンドの原石を磨くように、丁寧に育てたい』と話しています。とにかくスピードがすごくて、『気をつけないと、スピード任せの、飛ばす馬になってしまう。(大きなところを狙えるからこそ)メリハリをつけて走れるように育てたい』とのこと。そうした発言からも、ミスエルテに対する期待の大きさがうかがえます」

 デビュー戦に見据えるのは、9月24日の2歳新馬(阪神・芝1600m)。このレース選択からも、師の意気込みは伝わってくるという。前述のトラックマンが続ける。

「1200mや1400m戦なら、スピードだけであっさり勝てるかもしれませんが、『桜花賞(阪神・芝1600m)を考えて、1600mのデビュー戦を選んだ』とのこと。デビュー前からクラシック目標を明言しており、間違いなくこの厩舎でトップレベルの扱いですね」

 幾多の名馬を見てきたトレーナーが力を込めるミスエルテ。貴重な血統に宿ったスピード能力は、まさに一見の価値がある。まもなく訪れる初戦から、その走りは見逃せない。

河合力●文 text by Kawai Chikara