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スティーブン・スピルバーグ監督が放つ冒険ファンタジー『BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント』(9月17日公開)を引っさげて来日したマーク・ライランスにインタビュー。スピルバーグ監督の前作『ブリッジ・オブ・スパイ』(2015年)で第88回アカデミー賞助演男優賞に輝いた彼は、今回も同監督から熱烈なラブコールを受け、身長7mの優しい巨人BFG役を好演した。

本作は『チャーリーとチョコレート工場』のロアルド・ダールの児童書の映画化作品。孤独な少女ソフィーがある日、巨人のBFGと遭遇する。ソフィーは彼の住む「巨人の国」へと連れていかれ、そこで巨人と心を通わせていく。スピルバーグ監督作でいえば、『E.T.』(1985年)の系統を行く心躍るファンタジーに仕上がった。

インタビュー部屋に現れたマークは穏やかな笑みを浮かべ、優しく握手をしてくれた。いかにも知的な英国紳士という印象で、一つ一つの質問に丁寧に答えてくれた。

――スピルバーグ監督からは『太陽の帝国』(1987年)の時にオファーを受けながらも断ったそうですが、どんなやりとりがあったのでしょうか?

実は、スピルバーグ監督からオファーされた時、以前から僕が仕事をしたかったお芝居の演出家の方からも「1年間一緒にやりませんか?」と声をかけられたんです。その時に僕はどうしようかと悩みました。その場で監督に相談したら「断ってもいいよ。ただし4時間以内に教えてね」と言われたんです。

――その時にお芝居の方を選ばれたのはなぜですか?

両方やりたいと思ったので、迷った挙げ句に易経という中国の古代の占いを頼りました。占うと「お芝居を選ぶと、その後には良き仲間たちが待っている」という結果が出たんです。それで「ああ、僕が役者になったのはこのためか」と納得しました。若い頃に感じた、そういう仲間の一員になりたいと思いが、役者になった理由の一つだったので。

それでスピルバーグ監督にお断りの連絡を入れたのですが、実はその舞台の1日目のリハーサルで妻(クレア・ヴァン・カンペン)に出会い、26年間結婚生活が続いていますから、ああ、そういうことだったのかなと。彼は「もしもあの時『うん』と言ってくれていたら、今日までたくさんの作品を一緒に作れていたのに」と言ってくれるけど、僕自身は当時、役者として、スピルバーグ監督に要求されるすごいレベルまで行き着いていなかったと思っています。

――今回、巨人役を演じてみて一番大変だった点を教えてください。

やっぱりサイズの違いを表すという撮影でしょうね。ソフィー役のルビー(・バーンヒル)としっかりと通じ合っているのか、毎回確かめながら撮影をしていました。ルビーの視点を考えて僕はセットの上から見下ろして撮影していたし、僕よりも体が大きい巨人が来た時は、かがんでニーパットをつけて撮っていました。その撮影方法はかなりチャレンジングでした。

――モーションキャプチャの撮影はいかがでしたか?

着ている服はダサいから、そういう時にスカーレット・ヨハンソンなどが現場に遊びに来なくてよかったなと(笑)。あれは見られたくないですから。でもそれ以外は開放感がありました。自由に動けたし、気を遣うべき照明もないし、カメラも小さくて見えないし。やはり演技をするうえで、僕たちはその瞬間を自由に動きたいわけです。モーションキャプチャだといろんなしがらみを感じることなく、その瞬間に起きた流れに身をまかせることができます。ただインスピレーションを追っていけばいいという自由度がありました。

――ソフィー役のルビー・バーンヒルを見る優しい笑顔が印象的でした。

特に計画してこういうふうに笑おうとしたわけではなく、ソフィーを見て湧き出る内面からの笑顔でした。僕は小さい犬、ジャックラッセルテリアを飼っているんですが、あの小さなサイズで僕を笑わせてくれるんです。ある意味、BFGにとってのソフィーは、小さなペットみたいなところがあったのかもしれない。それと同時に自分の娘たちの幼い頃を思い出しました。

――BFGが大好きな緑のソーダ「プップクプー」を飲んだ後のシーンに大爆笑しました。飲めばゲップではなく「プリプリプー」というオナラを発射し、体が浮くのがなんともおかしかったです。

あのシーンは、ワイヤーロープをつけ、オナラが出るタイミングで引っ張り上げられて宙づりになるんです。これなら核燃料はいらないですよね(笑)。うまく「プップクプー」を使って電力を起こすことができれば環境にもいいから、何か名案を考えるべきですよね。それがBFGからの大切なメッセージです。

――スピルバーグ監督と仕事をしてみて、どういうところがすごいと思いましたか?

「観客のことをどのくらい思っているのか?」ということだと思います。例えばポール・トーマス・アンダーソン監督やギャスパー・ノエ監督なども素晴らしいフィルムメーカーだと思いますが、彼らは「観客が俺のところへ来い」というタイプの作家ではないかと。すごくオリジナリティに富んだ映画を作り、彼らの世界へ観客が行く感じです。抽象的な芸術と呼べる作品であることが多い。

でも、スピルバーグ監督は自分の好きな物語を見つけると、みんなに幅広く観てもらいたいと思うんです。そのためには物語の真実を、よりたくさんの人が理解できるようにと考えなければいけないし、なおかつ物語の価値感を下げたくはない。今回脚本を手がけたメリッサ・マシスンとスピルバーグは、ロアルド・ダールの原作に非常に忠実であろうと努力しました。

英国人なら誰でもよく知っている「BFG」ですが、アメリカや日本ではそこまで知られていないそうです。でも、そういう観客にもわかるような懐の深い映画に仕上がったと思います。

――本作の後もスピルバーグ作品に出演される予定はありますか?

この後、『Ready Player One』ともう1本、スティーブン・スピルバーク監督が、エドガルド・モルターラというユダヤ人の男の子が誘拐された事件を描くその次の作品にも出演する予定です。たぶんスピルバーグは、僕が遊び心をもって楽しもうとするところや、自分の演技をコントロールしようとしないところを好んでいるんだと思います。また、僕は彼に演出されることも大好きだし、何よりも馬が合うんです。

■プロフィール
マーク・ライランス
1960年1月18日生まれ、イギリス出身。王立演劇学校で演劇を学び、1980年にグラスゴーの劇場でプロデビュー。舞台を中心にキャリアを重ね、自ら芸術監督を務めたりもする。『ブリッジ・オブ・スパイ』(15)でソ連の老スパイ役を演じ、第88回アカデミー賞助演男優賞を受賞。実在の政治家に扮したテレビシリーズ「ウルフ・ホール」(15)も高く評価された。この後も『Ready Player One』などスピルバーグ監督作が待機中

(山崎伸子)