WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 男子ゴルフの国(地域)別対抗戦となるワールドカップ(11月24日〜27日/オーストラリア・メルボルン、キングストンヒースGC)が今年、3年ぶりに開催される。

 日本からは、松山英樹(24歳)と石川遼(24歳)がタッグを組んで出場することが決まった。日本のスポーツ界にとってはうれしいニュースであり、日本の3度目のW杯制覇に期待が膨らむ。

 28カ国(地域)、計56人の代表選手が参加する今大会。出場選手は8月1日時点の世界ランキング上位者から決まっていき、同時点で日本人最高位の18位だった松山英樹がまずは日本代表として出場権を獲得。同時に、自らのパートナー(もうひとりの代表選手)を選ぶ権利を得た。そこで、松山が「一緒に戦いたい」と白羽の矢を立てたのが、ともにPGAツアーを戦う石川だった。

 松山は「(パートナーを石川に)決めたのは、だいぶ前です」と言う。W杯開催時期は日本ツアーの終盤戦。大事な時期だけに、日本ツアーを主戦場としている選手ではスケジュール的に難しい面もあったのだろうが、松山は「そういうこともあるけど、やっぱり(石川)遼と出たい」と、きっぱり語った。

 周知のとおり、石川は今年2月に腰痛によって戦線離脱。7月に日本ツアーの日本プロ選手権・日清カップヌードル杯(7月7日〜10日/北海道・北海道クラシックGC)で復帰したものの(予選落ち)、実戦からはおよそ5カ月も遠ざかっていて、かなりの不安要素を抱えていた。それでも松山は、ジュニア時代から一緒に世界の舞台で戦ってきた石川に対して全幅の信頼を置いていた。松山が言う。

「(石川は)普通にやれば、実力のある選手。ケガで(実戦から)離れていたけど、うまく戻ってきてくれれば、(相棒として)一番心強い存在かなと思う」

 一方、石川もそんな松山の期待に何としても応えたいという思いが強い。「当初、自分のゴルフがどうなるかわからない部分があったけど、(松山)英樹と組んでW杯に出たいという強い気持ちがあった」と、熟慮の末に出場を決めた。それからは、入念かつ急ピッチで調整を進めてきた。

 そして、復帰2戦目となった日本ツアー、RIZAP KBCオーガスタ(8月25〜28日、福岡県・芥屋GC)では、初日から首位に立って完全優勝。続くフジサンケイクラシック(9月1日〜4日/山梨県・富士桜CC)でも優勝争いに加わって、復活を存分にアピール。W杯での活躍を期待されるプレーを見せつけている。

 W杯と同じ週には、石川の所属先(カシオ計算機)が主催する日本ツアー、カシオワールドオープン(高知県・Kochi黒潮CC)が開催されるが、その欠場も決めた。

「(所属先が)理解していただいて、僕たちふたりを快く送り出してくれた」(石川)

 さて、松山と石川が出場するW杯について改めて振り返ってみると、第1回大会が行なわれたのは、1953年。当時は「カナダカップ」と呼ばれ、カナダ・モントリオールのビーコンスフィールドCCで開催された。初代チャンピオンに輝いたのは、アルゼンチン。ロベルト・デ・ビセンゾとアントニオ・セルダのペアだった。

 日本人にとって思い出深いのは、1957年に埼玉県・霞ヶ関CCで行なわれた第5回大会だろう。中村寅吉と小野光一のふたりが、世界のトップ選手を相手にして見事な優勝を飾った。その後、日本にゴルフブームが巻き起こったのは、有名な話である。

 1960年代に入ると、アーノルド・パーマー、サム・スニード、ジャック・ニクラウスらが出場したアメリカが、大会5連覇を達成。アメリカが"ゴルフ大国"であることを世界へ猛烈にアピールした。

 2000年代に入ってからは、世界ゴルフ選手権シリーズ(WGC)のひとつとなって、大会が刷新。個人戦がなくなり、フォアサムとフォアボールで4日間を戦う競技方式に変わった。アルゼンチンのブエノスアイレスCCで開催された2000年大会、アメリカのタイガー・ウッズとデビッド・デュバル組が優勝したときは大きな話題となった。

 翌2001年大会は、日本で開催された。静岡県・太平洋クラブ御殿場で行なわれ、最終日の最終18番ホールでアメリカのタイガー・ウッズがチップイン。南アフリカとデンマーク、そしてニュージーランドとのプレーオフに持ち込む激闘を演じて、大いに盛り上がった(最終的には南アフリカのアーニー・エルスとレティーフ・グーセン組が優勝)。その分、記憶に残っている人も多いのではないだろうか。

 そして、何と言っても忘れられないのが、2002年のメキシコ大会だ。日本の丸山茂樹と伊澤利光が3日目に「58」、最終日に「66」という好スコアをマーク。猛追するアメリカを制して、世界の頂点に立ったのだ。私も現地で取材していて、日本の2度目のW杯制覇に胸を熱くしたことは、昨日のことのように覚えている。

 その後、2005年には女子のワールドカップが始まって、宮里藍と北田瑠衣ペアがその第1回大会を制した。そんなことを考えると、もしかすると日本はW杯という舞台が得意なのかもしれない。しかも今回は、松山と石川という日本の若きエースたちが出場する。いやがうえにも、期待が膨らむ。

 前述したとおり、今大会は個人のストローク戦ではなく、ふたりでひとつのボールを交互に打つフォアサム、それぞれがプレーしてふたりのベストスコアを採用するフォアボールで争われる。だからこそ、チームとして息の合ったプレーをすることが何より重要となる。

 前回の2013年大会で優勝したのは、地元オーストラリアのジェイソン・デイ(28歳)とアダム・スコット(36歳)。再び地元で開催される今回も、狙うは優勝、W杯2連覇である。

 強豪アメリカは、リッキー・ファウラー(27歳)と全米プロ選手権の覇者ジミー・ウォーカー(37歳)が参戦。イギリスは、マスターズ王者のダニー・ウィレット(28歳)とリー・ウエストウッド(43歳)のコンビで挑む。その他の国も、世界ランキング上位のそうそうたる面々が顔をそろえる。

 だが、松山と石川も負けてはいない。特に松山は、覇権奪取へ並々ならぬ意欲を持っているという。石川が語る。

「英樹は『(W杯に出場する)メンバーはいいけれども、本当に優勝だけを目指してやっていこう』と言っていた。『絶対に優勝したい』と。『だから、遼もあと3カ月でしっかり仕上げてくれ』って。当初、そのモチベーションの高さには、マジかよって思ったほど。その思いに自分も応えたい」

 今年は、リオデジャネイロ五輪で112年ぶりにゴルフ競技が復活し、例年にない盛り上がりを見せたゴルフ界。今度はW杯で、世界のトップ選手が国の名誉をかけて戦う姿が見られる。まさに世界のゴルフファンが注目する、今年最後の熱い戦いの舞台となる。

 はたして松山と石川は、熾烈な争いを制して、日本に3度目の優勝をもたらすことができるのか。その戦いぶりから目が離せない。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN